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敵は魔王より『地の文』だって?~勇者アーサーの不本意な戦い~  作者: 一枝 唯
第13話 『地の文』が強引にまとめていく

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02 誤解をしているようだが

「しかし、もし戦いの真似事をするにしても、話がまとまってからだな。気を遣いはするが、加減を誤って瀕死にさせてしまうかもしれぬ故」


 普通なら煽りに見えそうな発言だけど、まじに強者なのは判るからな……数メートル離れてても、迫力ってのか妖力ってのか、やべえもん。口調のおかげで震えがきてないだけで、これ怒鳴られたり脅されたりしたら俺またガクガクしちゃう。


「待てよ。話がまとまるって何だ? 俺にも談合しろってことか?」

「まだ私を倒せるつもりではいないだろう?」


 うっ、そう言われると……「やってみなくちゃ判らねえ!」とか言うのが熱血勇者っぽいけど、アーサーくんあんまりそういうキャラではやってこなかったよな……。


「でも俺は……お前を倒して、帰らないと……異変のことも、あるし……」


 レナの方を見ないようにしながら呟いた。


 異変は『地の文』不在による揺れかもしれないけど、俺がいるせいかもしれない。原因が俺じゃないと判れば……判ればどうする? 戦いをやめて、残るの?

 そんなこと、ぱぱっと決められる訳ないじゃない!?


 俺は好き。レナが好き。ジャレットも好き。ユウオもちょっと好き。でも、お母さんとお父さんが好き。真穂が好き。架凛が好き。仕事は特に好きな訳じゃないけど、そこまで嫌なこともなくて……大変さは勇者業の方が上だけど、充実度で言うなら断然、勇者かな……待って、私ちょっと残ることを検討しはじめちゃってるじゃん!


「誤解をしているようだが、お前が帰るために私を倒す必要はない」

「……は?」

「私を倒さなくても帰れる。鍵を正しく使えばいいだけだ。事実、オカは帰った」

「はあ!?」


 全ての根底をひっくり返す発言がきたが!? まじで言ってるなら、俺がただ帰るかどうかを選ぶだけってことにならん!? オカさん帰ったの!?


【魔王は「人間の誤解」には慣れていた。アーサーが何故魔王を倒すことにこだわるのか、そこに気づいたようだ。】


 おいこら『地の文』!「魔王を倒せば帰れる」って言ってたのはお前だろうが!!

 それに「勇者アーサーの戦い」のあらすじにも「勇者が魔王を倒す物語!」って「!」つきで書いてたろうが!!


「報告を仲間に任せてもよいだろう。お前自身が王に伝え、それから帰るのでもよい。それはあとで決めろ」

「いや、いやいやいやいや」


 おかしいでしょ!

 俺、何のためにこれまで勇者してきたの? 魔王を倒して帰るためだよ!?


「それからお前を中心に起こっていた異変だが」

「え、何? 次は何!?」


 何か怖い! 俺は頭を抱えてしまう。


「お前の帰還点が元の時間と強固に結びついているためだと推測できる。お前が帰れば異変はなくなるが、もし帰らないのであれば鍵はその結びつきを断つこともできるだろう。案ずる必要はない」


 時間!? 何!?

 ……ああ、そうか。さっき「戻った」とき、「転移した」日の夕方のままだったもんな。それが「強固に結びついてる」ってことか。


【アーサーがこちらの世界で日々を送った分、本来ならば元の世界でも時間が過ぎているはずだ。しかし彼は、転移したその日、その時刻に結びつけられている。たとえば、頑丈な鎖によってふたつの球体が一点で繋がっていたとき、片方が動いていけばどちらか、または両方が歪んでいくだろう。そうしたことに似ている。】


 待って、まさか元の世界でも何か起きてないよね!?


【「アーサー」の起点が元の世界にあるため、こちらの世界にだけおかしなことが起きたのだ。】


 それはよく判らないけど! お前が言うならそうなんだろうな……。


 俺は一瞬息を吐き、それからまた改めて頭を抱えた。


「じゃあ何か? 俺がこれまで魔物と戦ったり、レナを危険な目に遭わせたり、ジャレットやユウオを仲間にするか迷ったり、異変をどうやって解決するかとか悩んだのは全部無駄? 完全無意味だったって? 聖剣持ってここにくればよかっただけ?」


 てか、『地の文』が「もう全部消そう」って言い出して元の世界に戻されたとき、わざわざまたこっちにこようとしなくてもよかったってことか? この魔王なら、勇者がいなくなったパーティーを気の毒に思って安全なところに帰してくれそうだもんね!?


 ああ、いや……それでも、あのまま挨拶もなしにお別れは、ないよな。

 戻ってきたのは、よかったよ。


 俺はパニックと冷静を忙しく行き来した。

 頭おかしくなりそう。


「案ずるな。お前の旅は無駄ではない。お前の帰還には私が協力する必要があるからな」

「……まさか、面白いから協力してやる、みたいなことを言ってる?」


 おもしれー男扱いされたのは、その判定してたってこと?


「少し違う」


 違うんかい。


「お前を帰すのであれば私はお前を知っておく必要がある。言動、顔立ち、出自や――名も」


【聖剣〈ワーストエンド〉を抜いたあの日、アーサーが異界人だと知った瞬間から、シュヴァルツは彼を見ていた。】


 ええ……? そういうこともあるかとは思ってたけど、確定されるとちょっと怖……。


【彼が何を告げ、何を選び、何を求め、何を愛するのか。】


 ちょっとエモくしても怖いしキモいって……一方的に見られたり知られてたりしてるのは……。


【シノンもユウオもラクエイも、そのために送られた。アーサーがどう反応するか見るためだ。】


 ええ……まさか悪そうにしてたのは全部演技とか言わないよな。それはさすがに本当に無理。シノンは「エレナ」を死なせるところだったんだぞ。


【もちろん彼ら自身はそこまで知らない。勇者というのは魔王に刃向かう愚かな人間で、魔王がその愚かさを面白がっている、という、彼ら自身が話した通りの認識でいる。】


 人の命を何とも思ってないみたいなのは、素ではあるんだな、よかった。いやよくないけど。


【それらのやり取りがあった上で、シュヴァルツは言っているのだ。アーサーが帰りたいと望むことを知り、その手伝いをしてやると。彼に断る理由はないはずだった。】


 いや待て、思わずうなずきそうになったが、片付いてない問題がある。異変のことだけじゃなくて。


「――それでも。たとえあんたの力で、これ以上俺が何もせずに帰れるんだとしても。『五百年後に復活する』を呑む訳には、いかねえんだよ」


 また「数値」のために被害が出るんだろ。やっぱり、いくら未来の話でも。駄目だよやっぱり。


【そう――その問題を除いては。】


 ……お前忘れてなかった? それ、俺が言ったから付け加えたんじゃない?


「五百年あれば効率もよくなる」

「ああ……え?」


 シュヴァルツが何かそれっぽいことを言ったと思ったけど、え、何? 効率? また効率?


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