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敵は魔王より『地の文』だって?~勇者アーサーの不本意な戦い~  作者: 一枝 唯
第2話 『地の文』がシリアスをぶっ込んでくる

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02 傍迷惑な。

「それにしても、魔王はこれまであなたを本物の〈聖なる勇者〉とは思っていなかったのよね? なのにあれだけ襲撃してきてたの?」


 称号を得てからと言うもの、街道に出れば魔物たちは俺に目印でもついているかのように襲ってきた。……と言っても、俺はそんなもんかと思ってた。フィールドでエンカウントバトルになるのは旧来のRPGとかだと普通だしな。

 でもエレナによると異常だということだ。成程、RPGの主人公たちもこうやって狙われてたのかもしれない、と俺は妙な納得をした。


「そうだなあ、普通なら『城下町に送り込んだ魔物を倒した手練れがいるならさっさと殺しておこう』ってとこだろうし、最初は俺もそういうことだと思ってたんだが、シノンの発言を聞くとな」


【村娘のふりをしていた魔物シノンは、勇者しか抜くことのできない剣をアーサーが抜いたことによって、彼を殺さないと言った。本物なら魔王シュヴァルツの暇つぶしになる、と。】


 魔王……シュヴァルツ……ドイツ語かっこいいもんな、嫌いじゃないけど……よくある名前すぎる……それにアーサーとワーストエンドは英語だよな……エレナはイタリア語とか……?

 まあいいけどさ。だいたい「アーサー」は俺の選択っぽいし。


「もしかしたら害虫駆除みたいなものかしら」

「害虫」

「そう。勇者なんて名乗られてその気になってる連中は面倒だから、街道に出るような魔物に襲わせておく。ただ、それを潜り抜けて聖剣を手にするような人物がいれば本物かもしれないから……」

「遊び相手にする、って?」


 エレナの推測に俺は唇を歪めた。ふざけてる。


「だいたい魔王は何をしたいんだ? 征服とかしようとしてるんだろ? 遊んでる暇あるのか?」


 魔王に勤勉であってほしくはないが、勇者たちを各個撃破するよりやることがあるのでは、とは思った。


「『魔王の目的はこの国の征服』なんて聞いたことないわ」

「え……?」

「目的なんてあるのかしらね。人間への嫌がらせとか?」

「ええ……?」


【そもそも「魔王」とは何か。簡単に言うなら「魔物たちの王」だ。】


 お、解説のターン。俺は『地の文』を待った。これまでの旅路で大まかに聞いたことはあるが、腰を据えた説明はしてもらってない。


【魔物は、異界からやってくるとされている。魔界とも言われるその場所に人間はいないか、いても最下層の奴隷だ。】


 うへぇ、やだねえ。


【魔王シュヴァルツは魔物たちのなかでも最強級の種族で、魔界の暮らしに飽きてこちらへやってきていた。】


 まじで「暇つぶし」が根底にあるのか? 傍迷惑な。


【シュヴァルツにとって人間は、いくら壊しても次々湧いてくる玩具だ。エレナは害虫と言ったが、そこまで不快なものですらない。寄せては返す波と戯れるような、ささやかで少しだけ面白くて、すぐ飽きることが判っているようなもの。】


 変態エロオヤジが浜辺で波と戯れてる様子はシュールギャグでしかないんだが。俺は額を押さえた。


 でも……シノンの品のない発言も、魔王がエロに興奮する変態って訳じゃなくて、ガチで暇してるせいって感じなんだろうか。

 だとしたら、変態オヤジのほうがまだマシな気がしてきた。ある程度は言動が推測できる。……いや、やっぱそれも嫌だな。


【端的に言うなら、シュヴァルツの望みは、楽しむことだ。積み木を崩すように街を壊して、慌てふためく人間たちを見物する。】


 普通に最悪。


「魔王の目的が国や世界の征服じゃなく、シノンの言うように『暇つぶし』なんだとしたら、定石なんかないよな」


 俺は呟くように言った。城を狙う、姫を狙う、勇者を狙う、そこにあれだ、四天王みたいなヤツらを出してくる、そういう「お約束」をしてくれない訳だろ。

 まあ、城下町なんかはもう襲われない方がいいよな。あのときたった一体の魔物でも建物が壊れたり怪我人が出たのに、本気でやられたら被害がとんでもないことになっちまう。


「魔王退治に定石なんかないでしょ」


 エレナは勇者側の話に変えたが、言われてみればそりゃそうだ。魔王に襲われる世界をたくさん知ってる俺の方がおかしい。


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