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敵は魔王より『地の文』だって?~勇者アーサーの不本意な戦い~  作者: 一枝 唯
第12話 『地の文』が地の文らしい

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08 認証するもの

「だったら、何なんだ!」


 え、ジャレット?


「アーサーに帰りたいところがあるって言うなら、それがどこでも、俺たちは全力で応援するとも!」


 あ、あの?


「心配すんな、アーサー! 俺はお前を助けるし、こっちのことは任せとけよ」


 下手くそなウインクがきた。めっちゃ顔が歪んでる。


「――ええ。その通りよ。魔王を倒して、それでアーサーの望みが叶うなら、それは私たちの喜びだわ」


 うっ……。

 これはもう選べない。

 ここで「やっぱ残ろうかな……」は無理な感じになってきた!


「葛藤、戸惑い、怖れ……複雑だ。オカにはなかったもの」


 おかには……?

 あ、「オカ」? 浅岡のこと愛称で呼んでんの? え、待って、仲良しなの?


「しかし相変わらず剣の使い方が野蛮」

「え」


 野蛮って言われた? 魔王に?「人間など下等な生物」って類……とはちょっと違いそうなんだが?


「どうしてすぐ抜き、振り回して他者を傷つけようとする。ただ所持しておけ」

「まさか『剣』を知らないのか?」


 これは煽りじゃなくて「もしかして本当に知らないなんてことあります?」という困惑だ。


「それはこちらの台詞だ。硬度の高い素材で作られているのは誰かを殴るためではないのだが」


【魔王は困惑して見えた。】


 いやいや、それこそこっちの台詞でして。


「よいか、勇者よ。それをお前が抜けるのは、お前が〈聖なる勇者〉であるからだが」

「お、おう」

「何故お前が〈聖なる勇者〉であるのかは理解しているか?」


 心配そうに言われた。え?


「い、一応……」


 さっきの『地の文』の語りから何となく……。


【アーサーはこれまで知ることがなかった。彼には「魔王を倒す者」「その志を持つ者」という情報だけが提示されていた。しかし、「伝説、伝承」というのはそうしたものであることが多い。アーサーもそう考え、納得していた。】


 納得してたって言うか、お前があんまり設定してないんだと理解してたよ、『地の文』くん!


「ならばよい。オカが、そしてお前が聖剣の持ち主になれるというのは、そういうことだ」


 いやちゃんと説明して? 転移者ってことだよね?

 あ、駄目、レナが困るから。それでいい。シュヴァルツくん、空気読んで偉い。


「仮に、俺やオカ先ぱ……マーリンさんが抜けたからって何なんだ。剣は剣だろ、武器だ」

「これだから人間は……」


 いままであんまり「上から」っぽさを出してなかったシュヴァルツがため息をついて首を振った。ええ? 急に「魔族は人間より高位の存在」的な態度を……。


「剣は鍵だ。認証するものだ。もともとはそんな大きなものではなかったが、人の子が大きくして、それで互いを殴りはじめた。衝撃的だった」


 ええ……? 認証? 鍵? 装置なの? 例えるならスマホをでかくして鈍器にしはじめたみたいなこと? だとしたら人類、確かに野蛮かも……。


 待って、つい思ったけどそこまで腑に落ちてはいない!


【剣は認証鍵――魔王から明かされたのは思いもよらない事実だった。】


 ほんとだよ! てか確定?『地の文』が事実として描写したら確定だよね……!


「な、なにを認証するって言うんだ」


 「認証」ってこの世界で普通の認識? 書類での認証とかもあるだろうけど、これって生体認証的な話だよね。レナに通じてる? 俺ははらはらしてレナを盗み見た。

 ちょっと眉間にしわが寄ってる。可愛い。何となく理解できるって感じか、それとも理解できてるけど納得できてないか、どっちかだろう。可愛い。最高。


「お前たちは『異なる存在』。この世界の人間と酷似しているが、生き物として別の種族だ。その差を見る」

「いや待って? 勇者が実は人間じゃないみたいな設定?」


 思わず口から出た。間違えた。いまのは『地の文』用だった。


「人間は人間だろう。たとえば世界の果てと逆の果てでは同じ人間でも見た目や体格が異なる。その程度のことだ。ただ、この世界のものとしては有り得ない差があるだけ」


 シュヴァルツは普通に返してきた。果てと果てって、この世界って平面なの? 亀が支えてる系?

 いや、それはいまはどうでもよくて。俺を安心させてくれたの? いいヤツなの? いいヤツにするのは無理だって言ってるのに……!


「その差異を厳密に判定できるようにしたのがオカだ。あれが人の剣に我らの技術である認証を仕込み、自分にしか使えないよう鍵をかけた」

「マーリンさん技術者なの? 魔界の技術盗んだの? てか、いやむしろ魔法? だからマーリンってこと?」


 もういいや。俺は一旦頭のなかで整理するのをやめた。オカさん、チート系勇者だったんか?


「オカは柄の部分に認証を仕込み、鉱石の部分は武器として使えるようにした。そこばかりは擁護できない」

「そこ以外は擁護してたの!? 魔王が勇者を!?」


 もう判んないよ、ちょっと誰か状況整理して!


【ついに魔王と対峙した勇者。しかしなかなか戦いにならないどころか、アーサーの秘密やら前の勇者の秘密やらワーストエンドの秘密やら暴かれ出す忙しい展開。果たしてアーサーの明日はどっちだ!】


 何で古いアニメの予告ふう!? 筆が乗りすぎて浮ついてない!?

 てか、お前もこの混乱にめちゃくちゃ加担してるんだが!!


[第13話「『地の文』が強引にまとめていく」につづく]

剣は鍵? は? 何て?

魔王と戦いそうにない時間は、まだ続く……!?


続きが気になっていただけましたら、リアクション、最新エピソード画面下の【☆☆☆☆☆】評価、ブックマーク等から、応援をよろしくお願いいたします。


第13話「『地の文』が強引にまとめていく」もお楽しみに!

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