↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
敵は魔王より『地の文』だって?~勇者アーサーの不本意な戦い~  作者: 一枝 唯
第11話 『地の文』がネタバレをしない

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
80/93

08 必ず光を取り戻す、と

【ユウオには考えがある。】


 お! くるか、ネタバレ! 読者としては嫌だけどいまは助かる! お前、ユウオは勇者一行とか言ってたじゃんか、そこどうなったのよ?


【彼は、とある考えに同調している。】


 は?


【それはアーサーに敵対するものではない。しかしそれを言うことはできない、という複雑な構造で、ユウオの語彙ではとても説明できなかった。】


 ほんと? 敵対しないの? てか、ユウオに説明やらせようとすんな、お前がやれよ!


【――ユウオは、人々を守る側にいる。それは、あの十日間、彼が真剣に魔物退治をしていたことからも伝わるはずだった。】


 う。

 確かに、いいのかなとは思ってた。魔王のスパイってことは魔物側だろうに、ガンガン魔物倒してていいのかって……外した結果なのかなとも思ったけど……。

 一緒に戦ってたのは、潜り込むためと言うより、何か思想があってってことだったのか?


「アーサー?……『お告げ』かしら」

「あ、ああ、そうなんだ。どうやら、ユウオは敵じゃない、らしい」

「……神が仰るならそうなのね……」


 レナは腑に落ちない顔をしながらも、神女として「お告げ」を受け入れた。神様の言葉じゃないので胸が痛い。間違いないという点では、その通りなんだけど。


「ただ、誰かに同調はしてそうだ。ラクエイなのかシノンなのか……最悪、シュヴァルツってことも考えとく必要はある」

「敵じゃないのに?」

「そこだよな」


 まさかやっぱり、魔王いいヤツ説?

 でも、人間の町を定期的に破壊しといて「実はいいヤツ」は無理だと思うよ、『地の文』。


「幽鬼だ、ということも気にかかるの」

「ん? それはどういう意味で?」

 

 俺の知識はあんまりない。幽鬼、レイスだっけ? 死霊、みたいなイメージあるけど、ユウオは実体だよな。まあそこは設定次第だし。


「私たちが……主には神殿が、と言うことになるのだけれど、存在を把握できている魔族はそう多くない。でもそのなかで、幽鬼というのは上位種族だったはずなのよ。でもそれにしては、罵倒されていたという話や、ラクエイの態度が奇妙に感じて」


 少し顔をしかめて、レナは説明してくれた。可愛い。


「あー、それについては、納得できる情報がある」


 俺は頭をかいた。「人間の血を引く」ってのは相当、蔑まれることなんだろう。

 ただ、言いづらい。個人的な事情を俺が勝手に話す訳にはいかないもんな。


「アーサーが理解できているなら、そこはかまわないわ」


 もごもごしてる俺の様子をから察して、レナはすぐそう言ってくれた。女神。


「判らないことは、まだ多いけれど……」


【アーサーたちに真実は判らない。彼らにはまだ情報が開示されていないからだ。】


 しろ。いますぐ。開示を。


 してくれないよな、この流れじゃ。

 俺は諦めて、レナとの話に戻った。


「いまのは、『ラクエイを守った』って取れる。どうやってか、死なせずに魔界に還したか、転送術を同時に作動させた」


 音や臭いがしなかったのはそういうことだろう。


「でもラクエイと組んでるとは思えない。ユウオの助言がなければ、ジャレットも俺も影のことに気づかなかったか、もっと時間がかかった」


 レナを攫われたと思った俺はきっとキレて、ラクエイが姿を見せた瞬間にあいつをぶっ倒してたかもしれない。

 そうしたら、聖剣を消耗させてた訳だ。


「ジャレットを助けたことも作戦じゃないと思う。味方する気はあるんだ。後ろからは撃たれない」

「……だといいけれど」


 レナは懐疑的だ。神が「敵ではない」と言っても、「敵に利した」ことは間違いない。


「敵じゃないが味方でもない。戦力に数えないだけなら、ここにくる前と同じだろ。最悪、戦うことになる場合……」


 俺はちらりとジャレットを見た。ユウオと楽しげに喋ってる。ユウオが喋ってるのかは判らない。


「俺がやる」


 ジャレットにユウオを撃てとは言えない。


「消滅させたくは……ないけどな」


 『地の文』の気持ちも判る。関わった相手には情が湧くよ。


「そうね、そのときは私がやればいいじゃない」


 あっさりと神女様は仰った。


「万一のとき、アーサーは足止めだけして。私がやれば、ジャレットに撃たせず、消滅させず、聖剣を消耗させないことができるでしょ」

「レナ……」


 俺の聖女様……キモくてもいい、心のなかだけにするから……。


「『万一』なんて、ないのがいちばんだけれどね」

「ああ、全くだ」


 俺たちは「しばらく様子を見る」という、無難な落としどころしか見つけられなかった。


【アーサーは、ユウオに頼らない連携を確認し、それとなくジャレットに伝えることを考えた。】


 まあ、そうだな。その提案には従うよ。ユウオがもしシュヴァルツに攻撃しないとしたら、作戦に入れるのはみんなの危険を招くもんな。


 ……いい感じの四人パーティーになったと思ったのになあ。

 俺はため息を堪えて、ふたりのところに戻った。


「レナと『お告げ』の解釈を確認してた」


 密談の理由をそんなふうに伝えた。


「ラクエイのことは念の為に警戒しておこう。ユウオの炎を喰らって無事とは思わないが」


 嫌味にならないように、気をつけて発言した。


「本当にワーストエンドを消耗させたいなら、何かしてくるかも。……でもこの調子だとシュヴァルツも近いはずだから、あとは決戦、かもしれないけどな」


 シノン、ジュイム、ユウオ、ラクエイ。これまでのネームドや、「どこかで使う」ってメモ書きの兄貴も出た。いまさら新キャラもないだろう。

 まあ、『地の文』が「そう言えばこれまだ使ってなかったな、押し込むか」とか思う可能性はあるけど!


「ユウオ、魔王の居場所判るか?」


 無邪気に雄介くんが尋ねてる。

 いや、斜めに見るのはやめよう。むしろ無邪気なときはジャレットで、オタ知識出してくるのが雄介だ。

 気遣い魔人モードはたぶんその混合で、善性とおっさんの経験値がいい感じに作用してるんだと思う。たぶん。知らんけど。


「向こう」


 ユウオは素直に答える。ただ、その指さした方向はどことも取れて、明確な答えとは言えない。


「案内はしてもらえるのかしら」


 レナも変に警戒を出さないよう、自然な調子で尋ねた。こくりとうなずく様子は、何だか無表情なりに可愛らしく見えはじめてるんだよなー。うーん。


 ラクエイのいた部屋を出ると、城内はまた色を失った。見えるとは言え、気分が落ち込むな。色って……光って大事だなあ。


【〈聖なる勇者〉は神の光が届かない屋内に歯噛みした。必ず光を取り戻す、と――。】


 いや別にそんな気持ちはないが? 魔王城の光量は魔物たちの好きにしていいんじゃない? 人の世界まで暗くしますと言われたら抵抗するけどさ。


……そうなんだよな、シュヴァルツってそこまでやってこないんだよな。征服もしない、進軍もしない、ときどき魔物を一体送って襲う、そんで暇してる……何なんだあいつ?


 俺はちっとも漆黒じゃないシュヴァルツの容貌を思い出した。


 死人みたいな肌に、色の薄い目や髪。その姿を思うとぞっとする。顔立ちだけなら2.5次元俳優並みにキラッキラに見えるのに、すげえ不気味なんだよな……。


 俺はふるふると首を振った。これはあれだ、「気持ちで負けてる」ってヤツだ。記憶にあるイメージだけに気圧されるとか最悪だろ、勇者として。


「よし、行こう」


【勇者は簡潔に促した。頼もしい仲間たちと、魔王城の奥地へと進むのだ。】


 一名、スタンスが判らないのもいるけどな。


【〈聖なる勇者〉アーサーが〈漆黒の魔王〉シュヴァルツを倒すときは、間近に迫っていた。】


 ……フラグじゃないよな?


[第12話「『地の文』が地の文らしい」へつづく]


ユウオへの疑惑はあの十日間と違い、アーサーのなかで「そうでなければいい」となっているようです。

魔王城編は続く!


続きが気になっていただけましたら、リアクション、最新エピソード画面下の【☆☆☆☆☆】評価、ブックマーク等から、応援をよろしくお願いいたします。

いつもリアクションくださる方、どうも有難うございます!


第12話「『地の文』が地の文らしい」もお楽しみに!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。