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敵は魔王より『地の文』だって?~勇者アーサーの不本意な戦い~  作者: 一枝 唯
第11話 『地の文』がネタバレをしない

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01 ギスってるなー


 『地の文』がユウオの生い立ちを説明してくれたごく短い時間は、無口なユウオが考えをまとめて答えはじめるまでの間となり、俺の沈黙は不自然じゃなかった。


「……勇者が、キザニンゲンを突破したら、連れてこいって」


 ユウオから出てきた言葉を聞いて、俺より早くジャレットが吹き出した。


「気障(きざ)人間! あっはっは、優秀だけど冷酷でみんなにビビられてた兄貴が、気障人間!」

「ジャレットが笑い飛ばすなら俺も遠慮なく言うが……何だ、あいつのあの文語調は。『そこな神女』って、古代人か?」

「あっはっは!」


 俺も言いたかったことを言ってやった。

 殺されかけた男が大笑いしてる。

 ――よかった。


「誰がアーサーを連れてくるようにと言ったの?」


 俺たちの陰口合戦に全く参加せず、レナがユウオに尋ねた。すみません。


「……ケーハクモノ」

「ん? 軽薄?」

「あー」


 繰り返すジャレットに、俺は頭をかいた。心当たりがある。


「ラクエイのことか?」

「それ」


 小鬼の上位種みたいな魔物で、自称精鋭、芝居がかった口調に一人称「おいら」……やっぱあいつか。


「もしかして、ジュイムがラクエイを軽薄者って呼んでる? んで、ラクエイがジュイムを気障人間、と」

「そう」

「ギスってるなー」


 いまどきのコミカル設定ならめっちゃ仲いい魔王軍とかもありそうだけど、『地の文』は昔ながらのヤツが好みだからな……想定内ではある。四天王設定がないのは、むしろ意外なくらい。


「とにかく、行きましょう。ジュイムの呪いはもう効かないとしても、戻ってきたら何を仕掛けてくるか判らない」


 のろのろしてる俺たちにレナがもっともなことを言う。


「そうだな。ラクエイが俺を連れてこいと言うなら、そこに向かってみよう。だいたい、逆らって適当な部屋に行ってみても迷うだけだ」


 案内要らないとか言っちゃったけど、やっぱ要るわ。ただ、ユウオがやってくれそうではある。


【アーサーたちは先ほどの教室じみた部屋を抜け、奥の扉から先に進んだ。その向こうは広い廊下で、燭台に火が灯されているにも関わらず、やはり不思議に暗かった。】


 それでも見える。見づらいということはない。言うなれば高精細でライティングもばっちりのモノクロ映像。変な感じだ。


「右、扉三つ先、左。階段」

「おう、判りやすい」


 皮肉とかじゃないぞ、判りやすいじゃん実際。


「ユウオさ、一緒にいたときはもうちょっと長い文章喋ってたろ? さっきからどうしたんだ?」


 ジャレットが首をひねった。そうなの?


「……教わってた」

「誰に?」

「シノン」

「へえ」


 そこは素直に名前がくるのか。てっきり、何だっけ、いんぽんとか言い出すかと……。


「そういや、ユウオがきた夜にシノンが宿まで侵入してきたっけ。もしかしてあれって、ユウオを心配してたとかかな」

「呑気ね。うっかり招き入れてたらしっかり『食われて』たわよ、あなた」

「うぐっ」


 レナの淡々とした言いように俺は胸を押さえた。


「言っておくが、俺はあんなの……興味ないんだからな!」


 うう、女子に興味を持ちはじめた男子中学生が照れ隠しに言ってるみたいになった! ちがう、本当に違うんですレナさん……。俺はすがるように彼女を見たが、神女様は少し首を振ってただ前方を見た。

 うう。本当に興味ないだけなのに、何で彼女いない系中高生男子転移勇者みたいなムーブに……。


「それにしても城内が静かだな……いつもこんななのか?」


 ジャレットがすっと話題を変えてくれた。有難う雄介……。


【ジャレットは共感性羞恥から話題を逸らした。】


 俺のためじゃなかった! いやでも、助かったのは助かったよ。


「いつも違う」


 ユウオは答え、そこで言葉を終えた。もうちょっとちょうだい?


「もしかして、アーサーの指輪は関係ある?」

「あ」


 「魔王近くに行くことが許される指輪」だっけ、ラクエイが言ってた!

 いろいろあって忘れかけてたが、けっこう重要アイテムだよな。ゲームだったら、たぶん、それがないと魔王城に入れないみたいな。


「ある」


 ユウオがまたシンプルに答えた。


「アーサーはいま――みたいなこと」

「え?」


 何か言われたが聞き取れない。いや、知らない言葉だったのか……?


「えと……魔界の、すごい人」

「ん?」


 どういうこと?


「つまり、指輪を所持していることで、アーサーには強い権限がある。魔界の、たとえば強力な種族たちのような扱いをされていて、だから『下々の者』は道行きを邪魔しない……こういうことかしら」

「そう」


 レナさんの理解力と言語化能力、助かりすぎる。


【魔界の偉大なる存在――魔王シュヴァルツはその一端に過ぎない。】


 『地の文』の言葉に俺は吹き出しそうになった。

 待って? まさか、「実はシュヴァルツを倒しても第二第三の魔王が」ってやりたいの!?

 いやいやいや、絶対に拒否したいけど、仮にもし本当なら、それを言うのは絶対いまじゃないからね!?


【人間の世界にやってくる「魔王」はシュヴァルツだけだが】


 ……じゃあ、大丈夫か? もしかして、魔界の設定を話したいだけか? それなら、つき合ってやるよ。


【「魔王」は魔界に四名存在し、彼らは四魔王と呼ばれている。】


 ――やっぱりやりたかったのか、四天王。


【もっとも、アーサーたちの道行きにほかの三魔王は関わらない。彼らは魔界の統制で忙しいからだ。】


 助かった。本当に。魔界の統制が何かは知らんけど。第二第三のシュヴァルツにはならないんだな?

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