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敵は魔王より『地の文』だって?~勇者アーサーの不本意な戦い~  作者: 一枝 唯
第10話 『地の文』が設定を追加してくる

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04 弟に向き合いなさいって

「勇者よ」

「え、俺?」


 ジャレットを素通しすんなよ。弟と向き合いなさいよ。


「どうやってか我が呪いを逃れたようだが――二度目はない」

「は?」

「呪い……それじゃ、ユウオの妖力に何か仕掛けていたのがあなたなのね」


 ああ、そういうことか! 理解の早いレナ。助かる。


「ユウオの規格外の妖力なら、雑音があっても私やジャレットは気づかない……でも生憎ね、〈聖なる勇者〉は二神の加護を得ているの。呪いなんて全く効かないわ」


 レナさんのはったり! 正直、それなりに効いてたし、治ったのはレナの香油のおかげだよ!?


 ただ、あれは『地の文』がいなかったことによるメンタル不調も大きかったと思ってる。そんな状態でなけりゃ、ジュイムさんの呪いもあんまり効かなかった可能性はあるな。


「我が呪いを雑音だと……? この、小娘めが」


 小娘! リアルに聞くとは……いや、レナに対してその言いようは許さん。俺はじろりとジュイムを睨んだ。


「呪いがあんたの武器かい、お兄さん。いまから俺を体調不良にする? ちょっと間に合わないんじゃないか?」


【アーサーは不敵に笑った。ワーストエンドの柄に手をかけ、いつでも抜く体勢を取る。ジャレットもヴォルドヴァンドの杖を取り出した。】


「ほう、〈聖なる勇者〉とは丸腰の人間を相手に剣を抜き、仲間に術を振るわせる存在か」

「生憎だけど兄貴。魔王城で待ち受けて、仲間の動揺を誘おうとしてくる丸腰の人間に関しては、別でね」


 言うじゃん、ジャレット。かっこいいぞ。


 でも困ったことがひとつある。俺は、人間を斬りたくない。

 だって、人間を斬った記憶持って杏里沙に戻れると思う!? しかも友だちのお兄さんとか、ちょっと現代日本ではハードすぎる記憶だよ!


 いままではずっと魔物相手だった。シノンみたいな人型タイプならあるけど、それでも連中の感触は生々しくないし、倒したらすーっと消えてくれる。魔界に還るとか『地の文』は理屈をつけてた。ご都合的でも俺には有難い。


 あのさ……お兄さん、人間のまま?

 実は魔物化してたりしない? それなら何とかやれるかも。


 俺は友人の兄に対してけっこう酷いことを考えた。


「勇者よ」


 は?

 また俺?

 弟に向き合いなさいって。


「身体の不調と言ったか。その程度で済んだのであれば、確かにお前には神の加護があるのだろう」


【まるで自身の能力不足を認めるかのようなジュイムの言葉に、アーサーは違和感を覚えた。】


 うん、思った。確かに違和感がある。負けを認めるタイプじゃなくない?


「何が言いたい?」


 声に警戒がにじんだ。ちらりとジャレットを見ると、不審そうな顔をしてる。やっぱジュイムらしくないんだろう。


「その神女も。日々祈りを欠かさず、神に近くある。もとより〈白銀月〉の称号を得ている、精鋭と言えるだろう。呪いを打ち破ったも道理だ」


 何だ……? これって、落とす準備がある流れだよな?

 めちゃくちゃ嫌な感じがする。


「そこへ行くと我が愚弟は、生得の力を力任せに振るうばかり。神に感謝せずとも術は使える、と図に乗った」

「じゅ、十代の頃の話だろうがよ!」


 「愚弟」に突っ込むよりジャレットは焦ったように言った。レナの冷たい視線を感じ取ったんだろうか。


「心を改めたか? だとしても、お前たちのなかで最も呪術に弱いのはお前だな、ジャレット」

「俺を呪おうってのか? ふざけ」


【腹を立てた様子で言い返し終える前に、ジャレットは――その場に倒れた。】


「ジャレット!」


 俺とレナの声が重なる。

 待て、俺は知ってる……こんな出来事を。


「これに見覚えがあるな?……勇者アーサー」


 ジュイムが示したものを見て、俺は目を見開いた。


「〈月の民〉の石像――!」


 その手には、「エレナ」の命を奪うところだった小さな石像と同じ形をしたものが、握られていた。


―*―


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