↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
敵は魔王より『地の文』だって?~勇者アーサーの不本意な戦い~  作者: 一枝 唯
第10話 『地の文』が設定を追加してくる

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
65/95

01 鍛えた力

「アーサー、ここはいいから私に――」

「駄目です」


 「私に任せて先へ行って」とか何とか言いかけるレナに被せて、俺はそれを止めた。

 それぞれの見せ場ができて熱い展開になるから読む分には好きだけど、主人公側のメンバーが勝つとも限らないもんな。

 だから、俺の仲間はやっちゃ駄目!


「みんなで行くの!」

「アーサー……」

「ははっ、判るぞアーサー!」


 ジャレットが親指を立てた。ヤツにはこの機微が通じる。有難い。


「いいか、シノン! レナを足止めして勇者から〈癒やし手〉を奪うつもりかもしれないが――」


 俺は、いまこの瞬間に思いついたことを口にするか迷った。ちょっと無茶じゃない? そう思う理性もあった。

 ええい、それでもいまは勢いがある! 言っちゃえ!


「勇者にはなあ、回復魔法もつきものだ! 実は俺も回復術が使える! レナを狙ったって無駄だからな」


 いまさら!? ここにきて!? 俺は自分に突っ込んだ。

 さてどうする、『地の文』。


【そう! 勇者には回復魔法がつきものである!】


 ははっ、乗ってきた!


「……いがぁい、ずっと隠してたの? ただのお人好しじゃないのね、アーサークン」


【シノンの目が警戒するように細められる。】


「アーサー、本当に?」

「……少なくとも多種多様の呪文には詳しい」


 レナも驚いた様子だ。そりゃそうだよな、やったことないもん。

 でも知ってるぞ。ホイミ系はもとより、ケアルもディアも……あとあれだ、「三ターンの間、仲間を回復し続ける」みたいなのはソシャゲにも多い!


「あー、そうか、『勇者』は使うよな、回復」


 ジャレットにもやっぱり通じた。


「だとしてもぉ、神女チャンを落としておくことに、別に不利益はないのよねー」


 シノンは冷静に指摘してきた。うっ、それはそう。ヒーラー二枚ならまず一枚潰そう、ってのは定石だった!


「そうね、それなら安心して、ここであの露出魔とやれるわね」


 レナさんまで! でも言われてみればそう、明らかに俺の作戦ミス!


【そのままレナとシノンは、アーサーを挟んでにらみ合うような状態になった。】


「駄目! いいか、レナ。レナの役目は? 使命と言ってもいい」

「〈聖なる勇者〉を月神の癒しで支え、魔王を倒すことよ」


 シノンから視線を逸らさないまま、レナは答える。


「はい。そうです。シノン!」

「え」

「そっちの使命は?」

「……魔王様のお望みのままになるよう……?」

「はい。いいですね。では、シュヴァルツのいまの望みは?」

「どうやら本物らしい勇者が本当に自分の前までやってきて倒そうとするなら、遊んでみたい……かしら」


 シノンの目がレナから離れて俺の方に戻った。いいぞ。


 しかし、遊び、ね……でもまあ、あのど迫力からするとそんな扱いだよなあ。

 俺は自嘲しそうになったが、いまの目的は魔王と俺の戦力比較じゃない。


「では、俺が自分で自分を癒やしながら戦ってたら、本領を発揮できるでしょうか?」

「……できなさそう」

「はい。シュヴァルツは全力の俺を見たいよな? そしたらこちらのふたりは俺と一緒にいないといけません」


 ぱちん、と俺は手を叩いた。

 口調が謎に小学校の先生みたいな感じになったが、上げる前には『地の文』が推敲するだろう。問題なし。


【アーサーの強引な理屈に、シノンはぽかんとした。毒気を抜かれたような顔、と言うのかもしれない。愛しい魔王のためには聖剣を持つ勇者を〈癒やし手〉や〈撃ち手〉つきの完全な状態で通してやるのが最上なのか、と葛藤しているのが見て取れる。】


 ちょっと可愛い。……レナの三パーセントくらい。


「ごめんなさい、アーサー。有難う、落ち着いたわ」


【レナは息を吐いた。】


「お前、すごいな。まさかの、話し合いで解決させた」


【ジャレットも感じ入っている。】


「いや、口から出まかせみたいなもんだけど……」


 本当にな。これを「話し合い」と言っていいのか疑問だと思う。


 だって、普通に考えたら、ついに本気のシノンと決戦!――って流れだったろ。いくらシュヴァルツが楽しみにしてようと、「ここで倒される程度ならシュヴァルツ様と戦うのに相応しくないわ」とか言ってさ。


 でもシノンは、「このままの方がシュヴァルツ様のお慰みになるのかも」みたいなことを思っちゃった。それはおそらく、『地の文』がいない間に俺が鍛えた力のおかげだ。


 即ち、お約束展開を壊してでも行うツッコミ、それによってシリアスな空気を破壊し、コメディ方向に寄せる力!


 いまは完全なコメディまではいかなかったが、俺の勢いでシノンと『地の文』を納得させた。

 あとで推敲してバトルに寄せるなら好きに変えてくれ、『地の文』。いまはこのまま進ませてもらおう。


「とにかく、別行動や単独戦闘は避けたいんだ。レナもジャレットも、胸に刻んでおいてくれ」


 俺はそっと囁いた。ひとりずつの決戦はやめようね。


「判ったわ、もうイラッとしても耐えるから」

「俺はたぶん、多少罵倒されてもカッとなるタイプじゃないし、平気だろ」


 レナはいつも通りの様子に戻って言い、ジャレットは……お前、それフラグじゃないよな?


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。