↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
敵は魔王より『地の文』だって?~勇者アーサーの不本意な戦い~  作者: 一枝 唯
第7話 『地の文』の動向が怪しい

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
45/95

02 言いづれえ!

 それから何となく「ジャレット採用でユウオ不採用だよな」という空気が俺たちの間に出た。

 魔物退治をするなら〈撃ち手〉二枚は確実に有利になる布陣なのに、ユウオに下がってもらったり、ジャレットと俺だけで先行したり。別に仲間はずれにしようなんて思ってはいないんだが、敢えてユウオに話を振ることもしなくなっていった。


 これはあくまでも「俺は」ってことで、レナはこれまで通りだし、ジャレットはユウオに疎外感を与えないように振る舞ってた。あいつだってユウオの火で危なかったことはあるのに。いいヤツ。


 当のユウオは、外されようと無視されようと、全く変わらない温度感。内心では俺を恨んでたり?……だとしても俺じゃなくて、適性のない仕事を回したシュヴァルツを恨んでほしい。


 一応言うけど俺だってユウオを嫌ってるとかじゃないし、意地悪してやろうとかは一切思ってないからな? 不採用の空気は出してく方がむしろ親切だろ? ふたりを同等に扱って、いざ十日目に「あ、こっちは採用でお前はクビね」とか言う方が人の心なくないか?

 決めた時点で「君は今日まででいい」とか言った方がよかった? でも十日間って約束したし……。

 魔物かもしれない相手に、俺はそんなことで葛藤したりもしてた。管理職の体験コースなんて申し込んだ覚えはないのよ。


 『地の文』の気配はない。

 十日目がやってきても。


 ……思い返すと、俺が何か大事な発言したり、大きめのイベントをこなすときって、『地の文』がそばにいてくれたんだよな……いや何も彼氏気取りみたいなことを言ってる訳ではなく!

 言うなればあいつが「イベントの開始を合図してくれてた」「空気感を教えてくれてた」みたいなことで……俺は気付かないままそこに頼ってたんだと思う。


 試用期間が終わる今日、俺はふたりにどこでどう伝えるべきか、悩んでろくに眠れなかった。『地の文』が誘導してくれることを望んでたんだ。


「話がある」


 『地の文』はいない。

 嫌なことはさっさと終わらせてしまおう。俺はそう決断すると、朝の集合の時点でそう言った。

 レナとジャレットはすぐに気づいて神妙な顔をする。ユウオはぬるっと顔を上げて俺を見る。

 ……いつも無表情にまっすぐ目を見て視線を外さないところも、ちょっと非人間的なんだよな。目をしっかり合わせるタイプの人もいるけど、普通はまばたきをするとかわずかにうなずくとか、リアクションあるから。


「――十日間お疲れ。ひとまず、約束通り魔石は分ける」

「いや……」

「要らない」


 遠慮しようとするジャレットと、いつもながらの即答のユウオ。


「ここは約束だから受け取ってもらう」


 俺は強調した。無償労働ダメ絶対。魔物でもダメ。……魔王軍から報酬を得ている場合は? 二重取りになるのでは? 思わず俺はそんなことを考えそうになったが、気にしないことにした。


「その上で、ジャレットは引き続き頼む。ユウオは、今日までにしてくれ」


 うう、言いづれえ! せめてユウオの正体が魔物であってくれ! 俺は元の世界に戻っても、採用とか評価とか、絶対やりたくない。


「今日まで、とは?」


 淡々とユウオは尋ねてきた。ええ……聞く? それを。


「ユウオとは、もう一緒に戦わない。俺たちから離れて、帰ってくれ」


 俺までユウオみたいな言い方になってしまう。


「帰る……?」


 判らなさそうにユウオが繰り返すので、「魔王城に帰ればいいんだよ」と言いそうになったが、すんでのところでこらえた。


「とにかく! お前とはもう――」

「駄目だ!」


 と、言ったのは、ジャレットだった。俺は目を見開く。


「駄目だ、アーサー。ユウオには俺がきっちり連携や照準を教える。だから、もう少しだけ時間をくれ!」


 ええ……? 何でそうなった? ジャレットは判ってたろ? ユウオの不採用……。


「頼む!」


 真剣な顔だ。俺は揺らいでしまった。助けを求めるようにレナを見る。レナは嘆息して肩をすくめた。うう、俺が決めるしかない。


「――そこまで言うなら、三日。三日だけ延長だ」

「有難うアーサー! お前はいいヤツだ!」


 お前には負けるよ……何なんだお前は。


 スパイ疑惑について、ジャレットはたぶん、白だと思う。これまでのやり取りが演技じゃないという保証はないが、それならいまだってもっと巧い演技ができるはずだからだ。

 或いは、もっと前からユウオをフォローしたり、俺にそれとなく根回ししたり。こんな不自然に止める前に、やり方があるだろう。


 なのに、ジャレットは強引に、横からブレーキを踏んできた。

 これは、俺が十日間見てきたジャレット「らしい」態度に思える。気遣い魔人ではあるが、立ち回りがすごく巧いという訳じゃない、不器用なお人好し。

 だから――白く見える。

 そこまで完璧なキャラ付けの上で演じられてたら、それはもう俺の負けかも。


 ジャレットは「よかったなユウオ!」などとユウオの肩を掴んで揺さぶっている。ユウオは「よかった」などと答えたようだ。仲がいいのかここは? よく判らん。


 そして……『地の文』くんよ。

 崩れたぞ、「十日間」の前提が。

 ここを描写しないのは有り得ないだろ? 十日間の試用期間だって話してて、「十三日後――」って出てきたら何かと思うぞ? まあ、演出次第ではありだけど、いまのは描写のしどころだったろ? いまのジャレットの食い下がりを描写しない理由あるか?


 呼びかけても答えはない。呼びかけて答えがあったことはないけど。


 気配のないままの『地の文』に、続くことになった試用期間。どっちに注意を払ったらいいんだ……俺は頭を抱えてしまった。


―*―


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。