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敵は魔王より『地の文』だって?~勇者アーサーの不本意な戦い~  作者: 一枝 唯
第4話 『地の文』がラブコメに転向したがる

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07 勝ち確なのかフラグなのか

【あのときレナの目に映ったアーサーは、ぼろぼろの衣服を着て古びた剣を持つ、何も知らない若者だった。】


 最初は新品みたいだった服も、王都にたどり着く頃にはすっかり古着になってたんだよな……。


【彼は、魔物を一撃のもとに切り捨てる実力者でありながら】


 いや、相当どたばたしたろ?


【礼も受け取ろうとせず、負傷したままその場を去ろうとした。見かねたレナがそれを引き留め、立派な行いだと讃えて癒やしを施した。そこで、神女が守るのであれば〈聖なる勇者〉なのではないか、という噂が立ち、王城に招かれたのだ。】


 そう、なんだよな。レナがいなかったら俺はのたれ死んだか、最上でも日銭を稼ぎながら細々と暮らす日々に……いまとあんまり変わらんか?


【アーサーの働きは、王国が与える〈勇者〉の称号に十二分すぎるほどのものではあったが、】


 ぽんぽん与えてるってシノンにも言われてたもんな……。


【それでも、〈白銀月の癒やし手〉神女エレナの働きかけがなければ、身元も判らない若造が王城に招かれたかは判らない。】


 え、まじで?


【実際レナは、アーサーと少し言葉を交わしただけで、彼が特別な存在であることに気づいた。】


 そ、そうなのか? 何か照れくさいが。


【世間に穢れていない無垢さ、自らについて語らない禁欲さ。活躍をひけらかすでもなく、かと言って卑下するでもなく、淡々と賞賛を受け入れる姿は、聖なる者として相応しい。】


 ええ? めちゃくちゃ恥ずかしかっただけですけど? あと、無知を無垢って言い換えてくれて有難う……?


【称号を受ける際の形式的な問いかけに、アーサーが気負うことなく答えたとき、彼女は確信した。彼こそが〈聖なる勇者〉だと。】


 え? 俺、何言ったっけ?


 そう言えば「汝、魔王を倒しますか」みたいな……いや、さすがにもっとそれっぽかったけど、何かそんなことを訊かれたんだよな。何て答えたらいいか判らなくて「誓います」とか言っただけだったと思うけど……結婚式かよ、って自分にツッコミながら。


【言葉の内容ではない。彼女はそこに見たのだ。勇者の志を。輝く聖なる魂を。】


 うう、さすがに恥ずい。俺、帰りたいから魔王倒しますって言ってるだけなのに。それも、『地の文』ブーストで勝てるだろうって見込んでいるだけなのに。


【そして彼女は、彼と道行きを共にし、魔王を倒す――それが〈月神の使徒〉としての使命のみならず、彼女自身の運命だと感じているのだ。】


 ちょっとよく判らない感覚だけど、神女として俺に何かを感じてくれたってことだよな。……自分の帰還のためだけじゃない、レナのためにも、俺はちゃんとやろう。


【もっとも、たとえレナが彼を見出さなかったとしても、アーサーが勇者である運命に変わりはない。彼は必ず魔王退治に向かい、そして魔王を倒すことになるだろう。】


 その言い切りが勝ち確なのかフラグなのかは判らないが、どっちにしろ前向きにやってくよ。それしかないもんな。


【しかし、こう順調ではなかったはずだ。聖剣〈ワーストエンド〉に至るまで、何年もの月日を費やしたかもしれない。】


 いや待って。

 剣を探すだけで半年は経ってるんですけど、順調扱い!? そりゃ「何年も」よりは短いけど……『地の文』くんさあ、やっぱり「半年後――」で済ませたろ、俺たちの半年!


【アーサーがいち早く勇者の自覚を持ったことにより、彼は驚くべき早さで聖剣を手に入れたのだ!】


 「驚くべき早さ」は言い過ぎだろ? やっぱお前、俺が王城を出てから一週間くらいしか経ってないと思ってない?


【〈ワーストエンド〉――魔王シュヴァルツに絶望的な終焉をもたらすもの。】


 またドヤ顔が見えた気がする。そのフレーズ気に入ってるんだ?


 中二っぽいのは、俺も好きだ。「『夜』より現れし漆黒」みたいなのは好き。ただ、ワーストエンドは理解できない。


 時折出してくるこうしたドヤ感は、イラッとくると同時に子供じみた可愛らしさもあって、本気で怒るのは馬鹿らしく感じる。


 もし『地の文』を書いているのが子供なら温かく見守ることもでき……いや、無理だな。子供だとしたら、どんな荒唐無稽な無茶をさせられるか怖ろしいわ。

 逆に、おっさんとかだった場合……苛立たしさのほうが勝つかもしれない。


【魔王シュヴァルツは強大だ。いかに聖剣があろうとも、アーサーとレナ、たったふたりで立ち向かうことは困難を極めるだろう。】


 「強大だ」で済ませるのは相変わらず雑だが、まさかこれ、仲間が増える流れだろうか。


 レナとふたりで巧いことやってる現状、いまさら、という気持ちもあるが、『地の文』がふたりじゃきついって言うなら、考える必要もあるな。

 俺は剣、レナは〈月神〉の癒やしを持っている訳だから、〈太陽神〉系、つまり攻撃系の術士がきてくれればバランスはいい。


【北の町が近くなってきた頃、アーサーはある人物と出会うことになる。】


 やっぱり仲間の流れか? どんなヤツだろう。レナに妙なことするような男なら、断固として追い払うが。


【アーサーは知るよしもないのだが、実はその男は】


 お、何がくる?


【――アーサーと同じ世界からの転生者である。】


 ネタバレェ!!


[第5話「『地の文』がネタバレをしてくる」につづく]


ラスト一行ででかいネタバレをしてきた『地の文』くん。(くん?)

言いたくなっちゃったんでしょうね(?)


先が気になっていただけましたら、最新エピソード画面下の【☆☆☆☆☆】評価やブックマーク等から、応援をよろしくお願いいたします。


第5話「『地の文』がネタバレをしてくる」。

お楽しみに!

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