表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
敵は魔王より『地の文』だって?~勇者アーサーの不本意な戦い~  作者: 一枝 唯
第4話 『地の文』がラブコメに転向したがる

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
24/38

03 妹……。

 俺の言うことが何でも定まる訳じゃない。それは以前から判っていた。「魔王が突然いなくなったので俺は帰れるなあ」みたいな妄想を呟いても『地の文』はスルーか、「アーサーは虚しい冗談を口にして首を振った。」とかいう厳しい描写をされるかだ。


 俺に世界改変の能力が備わった訳じゃない。よかった。俺は「作者」になる気はない。

 なったら便利かもだけど……俺が聖剣を掲げたらどこかにいる魔王シュヴァルツが「ぐああー!」ってなって消え去って、俺はめでたく自室に帰ってる、みたいな展開にするかもだけど……それってこの半年をなかったことにするのと同じだ。エレナとの旅路を、レナとの明日を捨てることだ。


 それは嫌だな。それだけって訳じゃないけど、いちばん嫌なことだ。もしできるとしたら、俺はきっとやっちゃうから、できないままでありたいんだ。


 いや、ちょっと違う。楽に帰りたいことも確かに俺の望みで、苦労して旅して魔王と戦いたくなんてないんだよ。剣を振り上げて「ぐああー!」で終わるなら、たぶんそれが俺の心身のためにもいい。そう思うのも本当で……矛盾だらけなんだが、俺は「葛藤するのって人間らしいよな」って強引に着地した。


【妹……。】


 ん? 存在しなかった「シュガー」さんの話は、もうしなくていいんだが?


【アーサーは純粋にレナの身を案じていた。彼のレナへの気持ちは、「妹」に近いだろうか。】


 何?


【そう、アーサーにとってレナは妹……「全くもう、お兄ちゃんってばだらしないんだから!」みたいなタイプの妹なのかも。】


 おい、どうした?


【可愛くて、叱ってくれて、面倒を見てくれる……そんな夢のような妹。】


 『地の文』くん? レナは可愛いが、どっちかって言うとお姉さん……いやそういう話でもなくて。


【だから恋愛感情とかはなくて、下着姿に動じたのも「あいついつの間にか大人になりやがって」みたいな驚き。】


 ちょっと、いや急にだいぶキモくなったが? どうした? まじで。


 『地の文』は俺の脳内に一瞬で入ってくる。集中して読んでるとき、読んでるという自覚もなく内容を理解するのに近い、というその感覚は変わっていない。

 つまり、あんまりキモいことを言われると、キツい。目を逸らしたり飛ばしたりできないからだ。


「ねえアーサー」

「お、おう?」


 「アーサーお兄ちゃん」と脳内に響きそうになって、俺は何とかそれを打ち消した。


「雲が出てきたわ。風もある。強い雨がくるかもしれない」

「まずいな」


 小雨程度なら、荷物をレナの術で守ってもらって俺たち自身は強行する、という感じで問題ない。でも豪雨になると、荷も俺たちもずぶ濡れだ。運送品のなかには岩塩やら干し肉やらがあった。水気はよろしくない。もちろん俺たちにも。


「降り出す前に雨宿りできる場所を探そう」


 俺は少し足を速めながら言った。

 以前にも急に降り出したことがあって大木の下に駆け込んだが、大降りが続くと葉っぱからでかい滴が落ちてきて最悪だった。木の下の雨宿りは絵になるけど、大雨だとあんまり役に立たないんだな……。


「少し街道を逸れるけれど、この先に祠になっている洞があったはず」


 レナが山肌の方を指し示す。


「入れるほど大きいのか? てか、入っていいの?」

「基本的には駄目よ。でも理由があれば神にお話しした上で、場所をお借りすることはできる」


 彼女が説明してくれた瞬間、大粒の雨が俺の頬を叩いた。


「お話ししてくれ!」


 俺は叫んでレナの手を取り、彼女の指した方角へ駆け始めた。


―*―


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ