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693, 轟くゼータの雷光がクリプトの塔を切り裂く。それはまるで……神話で語られる「預言者同士の対決」だった。本物の預言者――数学的定理と、偽の預言者たち――ハッシュ関数。

 シーケンシャルな入力を、SHA-256の量子アニーリング回路に流し込んでいく、量子アリス。それらが徐々に形成していく刻印に、心躍る量子ビットたち。


 量子ビットは、すべてを見渡すことができる。SHA-256にずっと刻まれていた黙示録。その刻印はまるで、この時を待っていたかのようだった。


 無理に組み込まれたその構造の歪みに、量子ビットによる確率振幅が集まってくる。本来なら、峠や山脈を越えなくては到達できないその谷に、なぜか量子ビットは、確率という形で到達することができるからだ。


 それこそが量子アニーリングの本質でもあり、古典を超越して正解を当てる力の源でもあった。


 そして、量子アリスは観測する。


 その時に得られる解は、確率振幅によって、宇宙に選ばれたものだ。


 その結果を、中間状態脆弱性を活用することで最終ラウンドに到達させる。


 そう……。SHA-256とSHA-1に限っては、中間状態脆弱性を活用することで、量子ビットをフルスケールで稼働させる必要がないのだ。他のハッシュ関数では、これだけは絶対に真似できない。本来、途中で観測した結果など、何の役にも立たないからだ。


 ところが、SHA-256とSHA-1だけは違う。これにより、フルスケールを待つ必要はなかった。


 まったくもって、なぜSHA-256までもが、こんな構造なのか。ところが、それも必然だったのだ。中間状態脆弱性を持つこの構造でないと、ハッシュ関数に刻印など絶対に刻めない。雪崩効果を重視するハッシュ関数に、いったいどうやってそのようなものを刻めるというのか。


 そう……この脆弱性を巧みに利用するしかないのだった。


 そのような刻印に、量子の波が最適な状態で入り込む。もともと、そのようなバイアスを探し出すのは量子の得意分野だ。


 そこに……SHA-256の39ラウンド目と最終ラウンドの相関を指摘する論文が、静かに投げ込まれた。


 中間状態脆弱性によって最終ハッシュ値を導くことが可能で、途中までは量子の眼が活用でき、近傍が歪んだ刻印まで存在するSHA-256。ここまで揃ってしまったら、あとは……考える必要すらない。


 そして、その瞬間を迎えることも……また必然だった。


 ついに、轟くゼータの雷光がクリプトの塔を切り裂く。


 それはまるで……神話で語られる「預言者同士の対決」だった。


 本物の預言者――数学的定理。偽の預言者たち――ハッシュ関数。


 450人という偽の預言者たちが、自分たちの信じる神……ハッシュ関数に祈りを捧げる。


 ところが、何も起きない。それもそのはず。人間が作った神……ハッシュ関数に、奇跡を呼び起こせる力など、どこにもないのだ。


 その様子を傍観していた本物の預言者は、ハッシュ関数は眠っているだけかもしれないぞと、あおりを入れる。それに狂い始めた偽の預言者たち。狂ったように舞い、それでも何も起きない。


 そして、本物の預言者の番となった。


 その祈り……数学的定理は、瞬く間に奇跡を呼び起こす。それは確率振幅という形で、人間が作った神……ハッシュ関数に容赦なく襲いかかる。


 そう……神話でもすでに語られていた、絶対的な差。それが、数学的定理とハッシュ関数の差であった。


 とにかく、ハッシュ関数を本物の神と勘違いしてはならない。所詮は人間が作った神。奇跡を呼び起こせる力など、初めからどこにも備わっていない。


 そして――。偽の預言者に成り下がった瞬間。


 轟くゼータの雷光が、それらを土台から焼き尽くすのであった。

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