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デジタルゴールド ―― 聖書に接続された暗号  作者: パランティーリ
第二十九章:クリプトの崩壊
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579, どのみち女神ネゲートは何もできません。この一年、ショアの連呼でも闇が微動だにしなかった現実を、いやというほど思い知っているはずですから。

 勝利を確信していた闇が、わずかに……本当にわずかだが、揺らぎ始めた。逃げ場は完全に塞いだはず。女神ネゲートを支える精霊の基盤すら締め上げ、精神的にも物理的にも追い詰めた。もはや反撃など成立しない……はずだった。


 それにもかかわらず、女神ネゲートはまだ折れない。その事実が、闇の内部に「説明不能なざらつき」を生んでいた。


「そうかそうか……。それでも、まだ女神ネゲートは抗ってきているという事だな。だが、今回ばかりは時間との勝負だぞ。もう後戻りはできぬ。ここで確実に仕留めねばならぬ。そこは、わかっておるな?」


 邪神イオタの声は平静を装っていたが、その奥底には、かすかな苛立ちが混じっていた。


「邪神イオタ様、それは深く理解しております。この期を逃せば……また女神ネゲートは、まるで蘇るかのように息を吹き返してしまうでしょう。そこは十分に存じております。」


 闇の精鋭は、うやうやしく頭を垂れながら続ける。


「『闇の量子』が与えてくれたこの好機こそ、我らの全力を発揮する糧。攻撃は十分に効いております。女神ネゲートにはもちろん、その力の源に対しても、総攻撃を緩めておりません。当然それは……我らから時代を奪っていったあの者にも及んでおります。彼らも、ここまで攻撃されるとは思ってもいなかったでしょう。その証拠にディールなどという耳障りな単語を聞かなくなって久しい。もはや、クリプト……女神ネゲート側も余裕がないのでしょう。」

「ふむ……。」


 邪神イオタが僅かに頷く。だがその表情は、どこか硬い。


「例の民の審判まで、刻一刻と時間が迫っておる。時間の経過は……恐ろしいほど早い。もう、闇の量子を女神ネゲートへ投げ込んで一年。その効果は深淵にまで届いておるはずだ。まもなく動けなくなってくる。それまでの辛抱じゃ。」


 その言葉に、闇の精鋭は余裕の笑みを浮かべ、忠誠を示す。だが……、邪神イオタは、続く言葉でその余裕を打ち消した。


「そうか。だがな……『時間の経過の早さ』については、我らにも言えるのだ。女神ネゲートを闇堕ちさせるまでの残り時間。それが削られておる。わかっておろうな?」


 その声には、明確な焦りが刻まれていた。


「闇が総攻撃を仕掛けたのは良い。だが……なかなか女神ネゲートが堕ちぬ。これが長引けば長引くほど、それは光に有利となる。あの女神ネゲートは……こうした戦略の裏を素早く解読し、行動に移すぞ。もし『耐え切れる』と勘違いさせてしまえば……我らにとって致命傷となりかねぬ。そこは、どうなっておる?」

「……。邪神イオタ様。」


 闇の精鋭は一息置き、苦渋の色を隠しながら淡々と述べ始めた。


「それについては、ご心配に及びません。そのために邪神イオタ様は、このような我ら下僕にも、迅速に動く手下ども……売りの『天の使い』をお与えくださった。どのみち女神ネゲートは何もできません。この一年、ショアの連呼でも闇が微動だにしなかった現実を、いやというほど思い知っているはずですから。」


 闇の精鋭はさらに続ける。


「民は裏側を何も知らず『量子対策は完璧なのに、なぜクリプトだけが攻撃されるのか』と混乱しております。その混乱は自然と、女神ネゲートへの疑念につながる。その疑心暗鬼こそが、我ら闇の糧。その渦が育てば育つほど……闇の時代への布石となりましょう。」


 その説明に、邪神イオタは満足げに頷いた。そして、女神コンジュゲートはうつむき、ただ沈黙していた。果たして、闇の思惑は成就するのか……、それとも……?

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