3-6
三回戦目からは、グラウンドでの試合は行わず、すべての試合がこのメインスタジアムで行われる。だんだんと終盤に差し掛かる戦いであり、観客数も今まででのものよりずっと多い。弱者が淘汰され、生き残ったチームは全体のおよそ四分の一。当然、試合の質も上がり、観戦するものはその試合をわずかでも見逃さないようにしようと、集中してフィールドを見つめる。
この試合もまた、そうなるはずだった。
参加選手の命である瓦の割れる音が最初に響いたのは、試合開始の合図が鳴ってから一分と少し経ってのことだった。命の砕ける音が、そのスタジアムに響いた。あまりにも早い、脱落の合図だった。
次にその音が再び鳴ったのは、最初の音から十数秒後。観客のざわめきが、フィールドの中まで聞こえてきそうな、そんな空気にも感じた。
そしてそこからまた一分と少し。創は再びこの乾いたフィールドに、亀裂音を響かせた。これまでに割られた瓦は、いずれも周吾の班のものだった。
これで五対二。もはや勝敗は決定的だった。
何も特別な手を使ったわけではない。いつもと同じ作戦で、いつもと同じ動きをしていただけだった。最初に倒した相手も、たった今倒した相手も、そしてどこかで敗れていった相手もきっと、誰もが慢心に満ちていた。周吾たちの個々の力は確かに強い。けれど、彼らが合流する前に二対一の状況を作り、挟み打って仕舞えば苦戦することはない。
創は修也と共に、残りの二人を探して歩く。残りの二人の中には、まだ周吾が残っていた。
少し歩くと、すぐ近くから争うような物音が聞こえた。慌てて、音のした方へと走る。視界を遮るように並び立つ障害物を回り込むと、視界の先には、優花と竜司、そして周吾と田児が交戦しているのが見えた。彼らは、創と修也の登場にまだ気づくそぶりを見せていない。
さすがに二対二では厳しいのか、二人は苦戦を強いられているように見える。助けに入ろうと、両足に力を込めた。その瞬間、視界の外から不意に影が現れて、目の前の相手に集中している田児を急襲した。その影——涼子は田児の背中につけられた的を、一瞬にして破壊する。
そのあまりの早業に、田児もその隣にいた周吾も言葉を失った。ややあって、田児が膝から崩れ落ちた。
「嘘だろおい、何やられちまってるんだよ」
ようやく状況を把握できたのか、そんな言葉が周吾の口から漏れる。そして、今自分がどれほどの窮地に立たされているのか、気づいて、走り出した。
「くそっ、くそっ!」
だが、走り出した先は、ちょうど創と修也の立つ方だった。周吾の目が二人の存在を認めると、走る足を慌てて止めた。左右を障害物に挟まれた彼の、その足が向かうべき方角など、もうどこにもありはしない。
五人の敵に囲まれて、立ち尽くす。
「くそ、くそが……どいつもこいつも先に負けやがって」
拳を握り、体を震わせる。
もういい加減終わりにすべきだ。あまりにもくだらないこの争いは、もうここで終わりにしよう。創は一歩、前へ出た。
「ああああああああ!!!」
それが合図になったのか、周吾は創と修也の待つ先に向かって、拳を構えて飛び出した。その気迫にわずかに怯んで、けれどすぐに冷静になり、迫る周吾を迎え討つ。
それが、この試合の幕引きだった。
あれだけ激しく火花を散らした因縁も、終わるときはこうもあっけないものなのか。試合に勝利できたことはもちろん嬉しいが、それはあくまでも大会の数ある試合の一つに勝利できた喜びに過ぎない。周吾たちに勝ったという事実には、別段感慨はなかった。それは他の四人も同じだったのか、喜びの声を上げている者はない。
対照に、敗れた周吾の方は冷静にとはいかなかったようだ。地面に両手をつくような体勢になって、ひたすらに感情を吐き出していた。
「ありえねえ。ありえねえ……!こんなやつらに、俺たちが負けるわけねえに!そうだよ、全部このくだらないルールが悪いんだ!」
聞きながら、まるで自分に言い聞かせているみたいだと思う。立ち直れずにいる周吾を捨ておいて、創たちはフィールドを後にする。
とても後味がいいとは言えない幕引きだった。
「勝ちは勝ちだよ。今はまた次の試合に向けて気持ちを切り替えよう」
一回戦の終わりに聞いた言葉と、同じようなことを修也は口にした。




