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育成期間0年8ヵ月3週間

思い付きで始めた訓練も数日が過ぎた。

石板に浮かび上がる想定ダメージも、中々いい線いくようになったじゃないか。


もちろん、まだまだ荒削りなところはあるが、

例え泥玉だろうと磨けば光るものだ。


というわけで、コッコには光り輝いてもらうための第一歩を踏み出してもらう。

作り上げた基盤を手に、より高度な訓練。

実戦を経験させよう。


-----------------------------------------------------------


ここは以前、クエストで薬草を採取に来た森の中。

手頃な相手を求めて、付近を捜索している最中だ。


希望としては、そこそこ素早く、且つそれなりに頑丈な奴がいい。

鈍重でも軟弱でも駄目。

適度なバランスの整った相手が理想的だ。


ちなみに、今回はコッコに探させている。

・・・・俺が探したって、どうせ見つからないし。


それに、コッコには能力アビリティ「探索」がある。

この「探索」は、目標物との遭遇率を高める能力だ。

アイテムだろうと、生き物だろうとその効果は適用され、

発動の際に指定できる条件も複雑なものから大雑把なものまで、

幅広く対応している。使い勝手のいい能力だ。


戦闘用の能力ではないため、最近まですっかりその存在を忘れていた。

コッコが妙に探し物上手だったのはこの能力のお蔭だったんだな。


・・・さて、程なく目的の相手を発見。

しかし早いな、くそ。10分もかかってないじゃないか。

俺なら軽く3時間は固いってのに。


愚痴りつつ、目の前を見据える。

俺の魔獣が見つけたのは、魔物ではなく動物だ。

従魔士のスキルレベルが上がったことにより自動修得したスキルの1つ

「真名識別」を発動させ、相手の名前を確認する。


スキルレベルの低い状態では、

名前を読み取ることのできる個体は多くないが今回は無事成功した。


名前は「ラージラビット」

見た目はというと、全身が筋肉隆々で前足が妙に長く、

犬歯が立派な・・・・・兎。



・・・・・・・・。



悪い冗談だ。これで兎というのが。

俺の知ってる兎はもう少し可愛げがあった気がするぞ。

大体、こいつが魔物じゃないのもちゃんちゃらおかしい話だ。

コッコといい、この兎といい魔物と動物の判断基準は本当によく分からないな。


・・・・しかし、見れば見るほど奇怪な姿だ。

ラージラビットの感想は気持ち悪いの一言に尽きる。


だが、訓練相手としては申し分なさそうだ。


すぐさま指示笛を鳴らし、コッコへ令を発する。

身を屈め、能力発動に備えるコッコ。


対し、ラージラビットは呑気に欠伸あくびをしている。

眼前のニワトリモドキが自らの生命を脅かすことは無いと判断したか。

或いは、ただ油断しているだけか。

いずれにせよ、もう遅いが。


再度、指示笛を奏で、魔獣に訓練の成果を発動させた。


空間は瞬時に無くなり、両者は密着する。

それは刹那の出来事。

すぐに互いの体は離れ、大きく距離を開く。    


その場を離れたのはラージラビット。

いや、離れたのではなく弾き飛ばされたが正解か。


弾き飛ばされた兎は乱立する木々の1つに激突し、

そのまま地面へ叩き付けられる。


僅か数秒の出来事だった。


醜い兎の顛末を確認してから視線をコッコへ向ける。

息1つ乱れてはいない俺の魔獣。

見たところダメージも、無い。


・・・・いいじゃないか、これは。


今までのコッコならば、さっきの一撃で少なからず

ダメージを負っていたはずだ。

それが、今は無い。無傷だ。


この瞬間、1つの訓練は実を結んだ。

目に見える成果をしっかりと噛み締める。


俺がコッコにこの数日間行わせた訓練。


それは、能力の同時発動。


能力を瞬間的に連続して発動することは困難を極める。

少なくとも、数ヵ月間鍛えた程度の魔獣にはまず無理な話だ。

俺の魔獣ならば、尚のこと。


だから、俺は能力の同時発動を重視し、コッコに訓練をさせた。

無論、根拠無く取り組ませたわけではない。


夜通し読み漁った書物の数々。

その中に記されていた魔獣の特性の1つをあの日思い出したのが切っ掛けだ。


その書物には、

魔獣は並列して能力を発動することに関しては魔物よりも優れていると。

そう記されていた。


あの時は、能力の同時発動によるメリットがまるで見えていなかった。

大量の体力値消費によるデメリットだけが頭の内を占め、

その知識はすぐ脳の片隅に押しやられた。


しかし、こうして結果を見せつけられては、

あの日の判断は間違いであったと言わざるを得ない。


成果の余韻に浸るのをやめ、再び視線をラージラビットへ向ける。

流石に己の危機を感じてか、兎は必死に逃げ出そうとしているが、

自身の体が思うように動かないらしい。

血反吐を吐きながらその場でもがいている。


偶々当たり所が良かったのか、想定よりも与えたダメージは大きいようだ。


今回、コッコが同時発動した能力は

「疾走」「硬直」「打撃耐性(低)」の3つ。

「疾走」による加速で得たエネルギーを、本来は悪性能力バッドアビリティ

の1つである「硬直」によって自身を硬化させた状態で相手にぶつける。

そして、その際にコッコが受けるダメージは

「打撃耐性(低)」によって相殺する。


この3つの能力を同時に発動することによって、

コッコは最大速力による体当たりが可能になった。

しかも、これは唯の体当たりではない。

「硬直」による硬化によって、柔らかい羽毛の塊ではなく、

岩石に等しい状態での体当たりだ。


ラージラビットはコッコと同程度の大きさだが、

自分と同じサイズの岩がぶつかればどうなるか。

そして、それが立て続けにぶつかってくるとどうなるか・・・。


試した結果としては、3度の体当たりによってラージラビットは絶命した。


流石というべきか、あの後死に直面した野生動物は重傷にも拘らず

コッコの攻撃を何度も躱しながら逃げ続けたんだが、

まあ長続きはしないよな。


弱ったところをコッコの能力同時発動させた

体当たりが直撃しそのまま終わった。


その後は、何羽かのラージラビットを見つけては

訓練に付き合ってもらった。

同じ種とは言え、矢張り行う行動は多様性に富んでおり、

いい訓練になったとは思う。


・・・・今思えば、仕留めずに生命の奪取を行えば良かったな。


何にせよ、コッコにとって大きな一歩だったことに違いはない。



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