第二話:賢くしすぎたドラゴンとの戦い方
モンスターの解剖学的な正しさを追求することの問題点は、そいつが自分の仕事において極めて有能になってしまうことだ。そしてどうやら、このドラゴンの仕事というのは、俺を練炭に加工することらしかった。
俺は広場を全速力で駆け抜けた。安っぽい鎧が、鍋や皿が雪崩を起こしたような凄まじい音を立ててがちゃがちゃと鳴り響く。一秒前まで俺の頭があった場所では、奔流のような火炎が石畳をドロドロに溶かしていた。熱は本物だ。危機も本物だ。俺自身の手によるクソみたいな修正が、全力で俺を殺しにかかっている。
「プロ意識を持つとこうなるのか!」俺は叫びながら、ひっくり返った果物売りのリヤカーの影に飛び込んだ。
地響きとともにドラゴンが着地した。その琥珀色の瞳は、冷徹な知性をもって混沌をスキャンしている。奴はもう、ただ暴れ回っているわけではなかった。狩りをしているのだ。そして、自分の認知機能が急激にアップグレードされた原因が誰にあるのかを正確に理解していた。
俺だ。
俺は割れた木板の隙間からそっと外を覗いた。手の中には、かすかに、しかし途切れなく光を放つ赤ペンがまだ握られている。俺は自分の中に残る創造エネルギーの澱——今や『編集容量』という名で体感できるようになった、集中と意志の源泉を意識した。残量は半分といったところか。いや、もう少し少ないかもしれない。大きな修正なら一回、小さな修正なら数回分だ。
よし、落ち着け、新。衛兵としてではなく、編集者として思考しろ。プロット上の問題:あまりにも初期の段階で、あまりにも強力な敵が登場してしまった。定石となる解決策は?
デウス・エクス・マキナ、隠された力の覚醒、あるいは都合のいい逃走。
今の俺にはそのどれもない。俺にあるのは、一本のペンだけだ。
俺の最初の本能は、何かを『創り出す』ことだった。
【編集発動:構造編集(魔法の檻)】
俺は集中し、ペンを宙に走らせ、自分の意志を世界へと注ぎ込んだ。
かすかな赤い線が空中に現れ、ちらついて……何もない空気に溶けた。
脳裏の余白に、冷酷で鋭い筆跡のメモが走り書きされた。漫画家としての自分が、内側で磨き上げてきた、自分自身の編集者としての筆跡だ。
新しいアセットは追加できないぞ、新米。
作者が与えたものを使え。
編集しろ。発明するな。
当然だ。すでに完成した原稿のページに新しいキャラクターを勝手に描き足せないのと同じように、無から檻を生み出すことなどできるはずがない。俺にできるのは、すでにそこにある記述を『修正』することだけだ。
ドラゴンの頭が、果物売りのリヤカーに向けて一瞬で固定された。見つかった。
軽自動車ほどもあるそいつの鼻先が木材を粉砕し、リンゴと木片が四方に飛び散る中、俺は這うようにして後退した。完全に身を晒してしまった。
考えろ。このシーンに何がある? 作者はこれまでに何を記述した?
広場。城壁。パニックに陥った衛兵たち。気絶したユニコーン。それから……噴水。
待て。噴水だ。
第一話の導入部分——あの砂糖菓子みたいな文章の塊の中に、「天使の口から水が湧き出る噴水があり、それは液体の虹のような味がした」という一文があった。ただ雰囲気を出すためだけの、中身のない設定だ。
だが、それは『公式設定』だった。
すでに存在するアセットだ。
そして、俺はそれを編集できる。
ドラゴンが頭を下げ、再びすべてを灰にする炎を吐き出そうと顎を開いた。
時間がない。
「よし」俺は赤ペンを掲げ、囁いた。「この連続性に、補強を入れる」
俺は残りのエネルギーをペンに注ぎ込み、無から創り出すのではなく、すでにそこにあるものを『記憶』することに集中した。
【編集発動:連続性補強——構造固定】
俺は噴水があるべき広場の中心に向けて、ペンを走らせた。
空気の中にきらめく赤の輪郭線が現れる——噴水の三次元設計図だ。一瞬、それはただのスケッチのようだった。だが、石が削れる轟音と激しく湧き出る水の音とともに、現実がその輪郭を埋めていく。噴水が実体化した——最上部で滑稽なほど愛くるしい天使が微笑む、巨大な三段仕立ての大理石構造。それはもはや、ただの書き割りではない。確かな質量。本物。この物語の歴史に根を下ろした存在だ。
突如として現れた数トンの大理石の塊を前に、ドラゴンは混乱したように動きを止めた。
狙うなら、この隙しかない。
そして、俺の編集はまだ終わっていない。
脳裏の編集本能が俺に叫ぶ。元の記述は「液体の虹のような味」だ。そんなものは水ではない。ただのお洒落なナンセンスだ。何の役にも立たない。
元原稿の記述を修正する必要がある。
俺は赤ペンの先を、天使の口へと向けた。
【編集発動:語彙強化——適用済み】
【修正詳細:「液体の虹」→「高圧帯水層からの給水」】
天使の愛くるしい笑みに亀裂が入った。大理石の目が、不気味な赤い光を放つ。物語の論理が強制的に上書きされるにつれ、噴水の配管の奥深くから地響きのような唸りが響き渡る。
「頼むぞ、このご大層な庭の飾り物め」俺は祈るように呟いた。
混乱から立ち直ったドラゴンが大きく息を吸い込み、その喉をオレンジ色に輝かせた。
今しかない。
俺は赤ペンを前に突き出した。「今だ!」
天使の口が開き、高圧水流が炸裂した。生温い噴水などではない。高圧の、堅固な水の柱がドラゴンの顔面に直撃した。
千ガロンの冷水が千度の熱と衝突し、凄まじい水蒸気の爆発音が轟いた。巨大な蒸気雲が四方に広がり、広場全体を濃く、視界を遮る霧で覆い尽くす。
ドラゴンは怒りと苦痛の咆哮を上げ、よろめきながら後退した。その喉の奥の炎は、形を成す前に完全に消し止められた。
俺は自分の仕事を自画自賛するために立ち尽くすような真似はしなかった。蒸気の中で視界を奪われたまま暴れ回るドラゴンをよそに、俺は石柱の背後へと這うようにして身を隠した。
奴は倒れていない。倒せるはずもない。ただ濡れ、怒り、混乱しているだけだ。だが、モブの衛兵と最強の捕食者との戦いにおいて、「混乱している」というのは、実質的に俺の勝利を意味していた。
蒸気が晴れ始めた。ずぶ濡れになり、激怒したドラゴンが、その巨大な頭を振った。奴は噴水を見詰め、城を見詰め、それから情けなく悲鳴を上げる衛兵たちを見詰めた。
奴は、計算したようだった。この獲物はトラブルに見合わない、と。
石畳に熱水の飛沫をまき散らす最後の一鼻鳴らしを残し、ドラゴンは俺が完璧に整えてやった強靭な翼を羽ばたかせた。突風で俺の体は浮き上がりそうになる。奴は広場の上空を一度旋回し、俺に最後の一睨みを浴びせてから、山の方へと飛び去っていった。
撤退した。
本当に、逃げていったのだ。
広場には、出力を上げすぎた噴水の激しい水の音と、数人の衛兵の鼻をすする音だけが残された。
誰もが、見つめていた。焦げた地面を。湯気を上げる噴水を。
そして、俺を。
トビー。使い捨ての衛兵。逃げ出さなかった、唯一のモブを。
「お前が……お前がやったのか?」衛兵の一人が、剣を震わせながら吃った。
俺は石柱に寄りかかった。全身の力が完全に抜け切っていた。手の中の赤ペンは、何もない空間へと溶けるように消えた。俺の『編集容量』は、完全に乾き切っていた。空っぽだ。何も残っていない。
「誰かがやるしかなかったんだ」俺は、自分の校正作業をようやく生き延びたばかりの男のようには聞こえないよう、何とか声を絞り出した。
衛兵たちは互いに顔を見合わせ、それから、新たな敬意を込めて俺を見つめ直した。彼らは、そこに英雄を見ていた。
だが俺は、地獄のような校正スケジュールの修羅場をようやく生き延びた編集者としか思えなかった。
俺のこの力は、一般的な意味での強さや魔法ではない。現実という原稿の欠陥を見抜き、それを正す力だ。作者の辻褄の合わない設定を、彼女が軽率に呼び寄せた脅威へのカウンターとして利用する力なのだ。
脳裏の余白に、静かな手書きのメモが走り書きされた。疲れの中にも満足げな調子で。
危機は回避された。
かろうじてな。
編集要約:
【編集発動:連続性補強——構造固定——適用済み】
【編集発動:語彙強化——適用済み】
結果:環境型パズル解決による敵の撃退
編集容量残量:0%(これを習慣にするなよ)
新米にしては悪くない。さっさと寝ろ。
——編集本能
思わず笑みがこぼれそうになった。俺の潜在意識まで辛口の批評家らしい。
衛兵たちが歓声を上げ、俺の背中を叩き始めたその時、胸の奥に淡く、遠い温もりが広がるのを感じた。それはごく僅かな、今にも消えそうなエネルギーの細い流れだった。
俺は神経を集中させ、その源を探り当てようとした。
そして、聞こえたのだ。
耳で聴いたのではない。この物語の構造を感知する、あの編集本能で。
かすかな、規則的なリズム。
カタカタカタカタ……
キーボードの音だ。
どこか別の世界で、あの作者がまた書いている。
そして、彼女がキーを叩くたびに、創造のエネルギーがひとしずく、俺の中へと流れ込んできた。
俺は石の壁に頭を預け、疲れた笑みをゆっくりと口元に浮かべた。
「……マジか」俺は囁いた。
俺の生存も、力も、この世界での存在意義さえも。
すべては、あのガキの更新スケジュールにかかっている。
詰んだ。
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【第二話 終】




