2章 169
「鈴城さん」
「なに」
冷凍のピザを温めただけ。きっと世の中にはもっと美味しいと思えるものは沢山あるけれど、私は鈴城さんと一緒に食べれるならその時が一番だと思えるみたいだ。
「美味しいね」
「美味しいけど」
「けど?」
鈴城さんの口に対して大きい1切れを両手で支えながら食べる鈴城さんはもぐもぐと食べ、口の中を空にしてそう言う。
続きがある言い方だし、言おうとして躊躇ったから聞いてみる。
「岐阜さんの……なんでもない」
「ええ、そこまで言ったんなら最後まで言いなよ」
私の名前が出てくるとは思わなかった。
けど、最後まで言ってくれない。すごく気になるから言って欲しい。
鈴城さんは食べるのに忙しいですと言うように、チキンを口に含む。
私は食べ終わるのをコーラを飲んで待つ。
パチパチシュワシュワとした刺激が心地いい。
「何でもないって」
「言ってくれてもいいのに」
じーっと鈴城さんを見てるとぶっきらぼうにそう言われてしまっては、話は終わってしまう。
食事中の会話はほとんどないけれど、一緒と言うだけで美味しくなるから不思議だ。
「というか、量多くない?食べ切れるの?」
「無理だと思う。明日食べなよ」
だいぶ食べ進めたけど、半分くらい残ってる。
お腹を擦りながら恨めしそうに私を見る。
これを全部は普通に無理だから、明日に回してしまえばいい。
鈴城さんは料理をしないから、明日の夜にもう一度食べればいいと思った。鈴城さんは同じものが続くと食べたくないとかあるのかな。
「はあ、そうするしかないね」
「……私が明日も来て一緒に消費しようか?」
「じゃあ、そうして」
軽口のつもりで、鈴城さんから明日も来ていい事になった。
思わぬ事態にポカンとしてしまった。
ここで「いいの?」とか、「連日だよ?」とか下手なことを言えば、「じゃあ、来なくていい」と言われる。うん、絶対に。
だから、私が言う言葉は初めから1つだけなんだ。
「分かった。楽しみにしてる」
「しなくていいから」




