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「私って恩を何倍にしても返す女なの」
「そう、良かったね。じゃあ帰るから」
ヤバい奴に捕まった。
これは直感じゃない。
怖い。
お化け屋敷に居るみたいに、廃墟に居るみたいに、走りまくったあとみたいに、ホラー映画を見ているみたいに、とにかく心臓が早鐘を打っている。
「鈴城さんに仕えてあげる」
意味が分からない。怖い。
でも、彼女は私の腕をガッチリと掴んで離さなかった。
痛いから振りほどこうにも思いの外力が強くて解けない。
「痛い!」
キーンと部屋に響く声を出してようやく手を離した。
私は掴まれた手首を撫でる。
圧迫され過ぎてうっすらと手のひらの後が付いていた。
「要らないから、そんなの」
睨み付けるようにして今度こそこの場から逃げ出した。
ドアを開けて廊下に出た瞬間走り出した。
分け目も振らずに走った。
一刻も早く家へ帰りたかった。
いつもはなんとも思わない冷たい家が今は恋しくて仕方なかった。




