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2章 121
「作家、葵海先生のサイン会にいたよね」
言いにくそうに切り出して、なんでと思う。
そんなことを言うってことはあの場にいた訳だし、それなら初めから私を誘えばよかった。
「……居たよ」
私は岐阜さんを探してた。そして見つけられなかったのに、岐阜さんは私を見つけたんだ。あの人混みの中で居るか居ないか分からない、たった一人を。
それっきり。何か言いたいことはあるだろうし、隠してることもあるだろう。それは気持ちの話かもしれないし、別のことかもしれない。
けれど、私達は踏み込まない。
命令とご褒美。その2つを介さない限り、素直にも正直にも成れないからだ。
今日は命令の日。
私はあの日へ言及する命令を出すつもりはなかった。




