2章 97
お互いに髪すら乾かしきってない状態で、岐阜さんは私のパーカーを来ている。岐阜さんには少し小さめになるけど、それすら着こなしていて狡いと思う。
「岐阜さん」
「なあに」
優しく問う声。耳障りがよくってずっと聞いていたくなるような声。
私と居る時、岐阜さんは教室では見せない顔をよくする。
その顔は私を惑わすからやめて欲しいけれど、他で見たいとは思わないし、見たくない訳じゃない。
「あの日、呼んだ理由を言ってもいい」
「なるほどね。その代わり、何をして欲しいの?」
岐阜さんを見ないで隣に座ってそう言うと、岐阜さんはさりげなく私の手と自分の手を重ねてくる。
振り解きたいとまでは思わなかったから、そのままに。
聞き分けがいいし、要領もいい。私がどんな事を言うのか察知して先回りして来る。
岐阜さんは従順だ。だからこそ、私以外への対応に違和感を覚えてしまう。
「それは言わないけど、黙って従って」
「いいよ」
私は人前に出れないくらいの跡を付けるつもりだった。
何の言い訳もできないくらいに付けてやれば、岐阜さんも相当困るだろう。
今までそこまではしなかったからか、なんの抵抗もない。
「……少しは無いの?」
「なにが?」
「なにがって、抵抗とか」
「無いよ。鈴城さんには要らないから」
視線が合う、岐阜さんは重ねていない手で私に触れた。
私との距離がグッと縮まってしまう。




