2章 12
「やっぱり余ったね」
これだけ残れば明日の分もある。密かにホッとした。
岐阜さんはお腹を擦りながら残った料理をじーっと見ている。
その顔はどこか懐かしむような、羨むような、あまり見ない類の表情だった。
「別にいい」
なにかされる前にかっさらうようにキッチンへ行きラップをかけて冷蔵庫にすぐ入れた。
思ったよりも力が入っちゃって閉める時に大きな音が出た。
「明日食べるの?」
「悪い?」
岐阜さんは私のすぐ後ろから話しかけてきて、いつの間にか来たのか、気配を感じなかった。
別に恥ずかしがることじゃないし、隠すことでもないんだろうけど、素直に言うこともはばかられて、ついつい突き放すような言い方になってしまう。
そんなふうな言葉しか出ない私自身に苛立ちというか、悲しみというかが押し寄せて子供みたいな顔になってると思う。
そんな表情も相まって岐阜さんは傷付いた様な顔を見せたが、直ぐにいつも通りに戻った。
心のどこかで、苦しめばいいなんて思っていても、そんな顔をされると心が痛む。私は矛盾してばかりだ。
「すぐそう言う。初めからそのつもりだった?」
「岐阜さん」
「あ、はい」
「うるさい」
岐阜さんがパッとわざとらしいくらい明るい表情を作って、ニヤニヤと聞いてきたから、私もわざとらしく言葉を区切って話す。
ついでに鼻をつまんでおいた。
ぎゅっと、ね。
涙目の岐阜さんになら笑顔を向けられたけど、下から岐阜さんは恨めしそうな顔をしていた。
私はニッコリと笑顔を作ってあげた。それなのに岐阜さんは引き攣った顔をしてそそくさと離れていく。
私は頬を片手で触りながらそんなに変な顔になっていたのかと不安になったのだった。




