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「早かったね」
「何が」
「インターホンを鳴らして、鈴城さんが出てくるまで」
何だかそれでは私が待っていたみたいで、不愉快だった。
それに、こんな事を言い合う必要は無い。
「たまたま1階に居ただけだから。部屋に行ってて」
私は1階に降りた本来の目的を果たす為にキッチンへ行く。
ほとんど何も無い冷蔵庫の中、コップにお茶を注いで飲む。
気まぐれだった。
一応は客人だから。
礼儀だから。
そう言い訳を用意して、岐阜さんの分のお茶を1杯。
私の分、1杯。
両手に持って階段を上がる。
いつもいつも見飽きるとか通り越したこの部屋までの道すがら、この短い距離に一々足が重くなる。
「……はぁ、嫌だ」
階段を登りきってため息と一緒に気持ちまで溶けてしまいそうだった。




