表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
近接戦では剣士タイプの方が強いですよ?(仮)&(真)  作者: 墨人
(仮)第六章 近接戦では剣士タイプの方が強いですか?
76/395

クラス代表決定戦

 3-Bクラス代表決定戦は放課後に行われる。

 学園側(と言うか主に学園長がだろうけど)が私達の試合を積極的に後押ししているのは、予め日程が決まっていたりした事からして確実だと思う。とは言え通常の授業スケジュールを変更したりせず、実施は放課後という段取りになっていた。


 未だにシングル戦無敗記録を更新し続けている委員長。

 不本意なものも含めて色々と有名になってしまった私。

 昨年の試合の噂も広まっているし、またも観戦者が多くなりそうだ。

 実際、ホームルームが終わると共に生徒は次々に接続室に移動している。

 これからの試合に対する期待で学園内はどこか高揚していた。


 私が成美や沙織と連れだってログインしたのは、試合開始予定の十分前くらいだった。

 ぎりぎりになってしまったのは理由がある。


 今日は朝から精神的に絶不調の状態だった。

 原因は朝方に見た夢。

 分類するならエロ夢になるそれは、とてもショックな内容だった。


 まあ私も健全な年頃の女子であるからエロい夢の一つや二つは見もする。夢は本人の願望がある程度影響するものなのか、普段であれば見れてラッキーと思えるような内容なのに、今朝のそれは酷かった。

 何しろ相手は複数の男性で、しかもどう見ても合意の上の行為ではない。

 念のために言っておけば私にそんな願望は無い。絶対に無い。

 さらに悪い事に夢はとてもリアルだった。

 ……もっとも、本気状態の男性のソレを実際に見た事はないから、本当の意味でリアルなのかは判断できないのだけど。

 とにかくそういう行為に晒された女性が感じるであろう屈辱感や絶望感はダイレクトに感じていた。

 そして最悪なのはそれをはっきりと憶えている点だった。

 夢なんてものは目が覚めてしばらくすれば大概綺麗に忘れているものだし、憶えているにしても「こんな感じの夢をみたかな?」程度のぼんやりした記憶にしかならない。

 ところが今回ははっきりと思い出せてしまうのだ。今でも実際の体験に等しい明瞭さで細部まで思い出せてしまう。


 そんなわけで朝から精神的に参ってしまっていて、放課後になると同時に見兼ねた成美達によっていつもの溜まり場に引っ張って行かれた。不調の理由を知った沙織は考え込み、やがて成美にこう言った。


「桜は悪いエロ夢で落ち込んでいるんだから、桜にとっての良いエロで上書きしましょう。今回は私も目を瞑るから、揉ませるなり何なりしてあげなさい。なんなら事故に見せかけてチューしちゃっても構わないから」


 いつもならストッパー役に徹する沙織の言葉に不調も忘れてびっくりした。

 私の状態が相当に酷かったのだろうけど、自分の節を曲げてまで立ち直らせようとしてくれた沙織には本当に感謝している。

 提示した手段は正直どうかと思わないでもないけれど。


 で、結果として私復活。

 さすがにチューはしなかった。いくらなんでも女子同士でそれは問題があるし。

 成美の柔らかな膨らみから夢と希望を分けて貰ったとだけ言っておこう。


 そうして去年と同じように景気付けのマックスなコーヒーを飲んで、三人で接続室に向かったのだった。


 *********************************


 ログインして、私は大きく安堵の息を吐いていた。

 そんな私を見て沙織が一言。


「たまにあんたがバカなんじゃないかと思えるんだけど」


 これには返す言葉が無かった。

 ついさっき、景気付けにマックスなコーヒーを飲んだ所、なんだかんだで慣れてしまっているのかあまり達成感が無かった。そこで二本目一気飲みを敢行したら今度は少々気分が悪くなってしまった。

 夢が原因の精神的な不調から回復した直後に、コーヒーが原因の身体的な不調を抱え込んでしまったわけで。

 バカと言われるなら甘んじて受け入れるしかなかった。


 幸い仮想空間のアバターに現実世界の体調は影響しない。ログインと同時に胸のムカつきからは解放されて、それで安堵の息を吐くことになった。

 精神的な方を残していた場合は仮想空間内にも持ち込んでいただろうから、改めて英断を下した沙織と、夢と希望を分け与えてくれた成美には深く感謝しておく。


 ポータルまで歩く間にも周囲から視線を浴びる。

 今日の主役の一人でもあるしそれも仕方なし。


 気付いたのはそこかしこで自分の頬をつねったりしている人が多い事。

 痛覚再現率五十パーセントに設定変更されたのは周知の事実だ。

 実際に試して「あ、本当に痛いや」などと言い合っている。

 彼ら彼女らにとって仮想世界で痛みを感じるのは新鮮な体験なのだろう。


 成美達もつねったり頬をぺちぺちと叩いたりして確認していた。


 ポータルで闘技場ホールに飛ぶと、ここでもやはり注目を浴びる。


「じゃあ私達は観客席に行くから。しっかりね」

「応援してるからねー」


 二人が手を振りながら観客席に続く扉へ向かい、私は予め決められていた控え室へ。


 スクリーンにはただ一つの対戦カードとして「sakura vs タマ」と表示されている。

 せっかく痛覚有りにして本人同士の戦いに近づけているのだから、ここも天音桜 vs 三条珠貴となっていた方が良かったけど、そこまで望むのは贅沢が過ぎるというものだろう。


 選手用のベンチに腰を下ろし装備の確認を行う。

 現実でなら装備品の劣化などに注意してメンテナンスとなる場面ながら、ここで行う確認にそういう意味は無い。仮想世界では試合の終了ごとに装備品も新品状態にリセットされるからだ。

 一種の儀式的なものだと思えば良い。


 武器として黒刀+2、投擲針十二本。針は六本ずつに分けて左右の手甲の内側に装着している。

 防具は鉢金、サラシ、胸当て、手甲、脚甲。サラシ以外には「猫の」と付く。言うまでも無くミアに作ってもらった防具だ。

 一応猫印は入っているものの、それは目立たない部位に小さく控え目に入っている。

 冬のバイト代を全部注ぎ込んだとは言え学生が買えるレベルの品だ。製作者本人からすれば渾身の出来には程遠く、大々的にマークを入れるには至らなかった。事情は柄巻きの下に猫が隠れている黒刀と同じだ。


 ミアはそんな風に言っている防具は、私から見るとかなり上物の部類に入る。

 鉢金は構造上シンプルなので一般品と代わり映えはしないものの、他の部位はミアの工夫が凝らされた逸品だ。

 簡単に言うと衝撃吸収素材・繊維素材・硬質素材を重ねていて、打・刺・斬の攻撃三属性に対応できるらしい。防御力の割には軽くて、速度重視の私のスタイルにピッタリだ。


 余談ながら、これらの防具データにはミアが洒落で付けた隠し機能がある。

 着衣データを魔族セット(露出過多なエロ格好良い衣装だ)に変更すると、数値的には同じ性能ながら魔族の衣装に合わせたデザインに自動的に変化するのだ。特に胸当ての変化はミアの拘りが遺憾なく発揮されている。魔族セット+猫防具を試着した際には成美がふらふらと引き寄せられてきたくらいだから、その露出具合とエロさは折り紙付きだ。身内以外には見せられないレベルである。

 ちなみに魔族セット装着時にはマッチングの問題でサラシは装備できない。


 なにはともあれ上から下までミアの作った防具で固めている。

 学生としてはかなり恵まれた装備だ。


 こうして自身の装備を確認するのは今後の試合中に自分ができる事の確認でもある。殊に防具に関しては「攻撃を受けても大丈夫な個所」として体の何処を覆っているか常に意識しておく必要がある。回避できなかった攻撃が偶然防具に当たったからラッキー、なんて考え方は駄目だ。扱い方は盾と同じ。意図的に防具部分で受けるように動く必要がある。


《sakura様、闘技場へどうぞ》


 時間になってメッセージが表示される。

 最後に目を閉じて自分が平常心を保てているかを確認する。


 うん、大丈夫。

 成美達のお陰で普段通りの精神状態でもって試合に臨める。

 私は闘技場に続く扉を潜った。


 *********************************


 フィールドに出現すると同時に耳を聾するような歓声に包まれた。

 頭上、手を伸ばせば届く位の所に赤いカメラアイコンが現れる。

 何事かと見やれば空中に多面スクリーンが投影されていて、sakuraの映像とともに先頭登録スキルである『気功Lv16』と『総合lv14』と表示されている。


 気功スキルのレベルが剣術スキルより上になってしまったのには事情がある。

 私のスタイルは気功スキルありきだ。止水しかり、ステータスアップしかり。

 前回は練気ゲージを使いきってしまい気功スキルが解除されてしまったのが敗因の一つに数えられる。だから練気ゲージの上限を増やすため、またそれぞれの技のゲージ消費量を低減するために、機会があれば気功スキルを使ってレベル上げをしてきた。寝る間も惜しんでいた時期もあり、気が付いたら寝ながら気功スキルの呼吸をしていて自分ながら驚いたこともある。

 その甲斐あっての気功スキルレベル16。

 そうそうゲージ枯渇なんて事態には陥らないはずだ。


 再度歓声が盛り上がり、逆側の入り口から委員長が現れる。

 スクリーンの半分に委員長の映像と『魔術Lv18』『総合Lv15』の表示が出る。


 学園祭当時は同じ総合レベル9だったのに。

 委員長も相当に頑張ってレベルを上げてきたと見受けられる。

 魔術レベルからすれば魔力の上限はかなり高くなっている。 

 こちらも魔力切れは期待できそうにない。


 委員長の装備はローブの上からブレストプレート、ガントレットとグリーブ。構成は以前と同じながら新調された防具だ。より防御力の高い物に変えたのだろう。


 表情が判るくらいの距離に来て、委員長は「うん?」と疑問顔になった。


「今日は調子悪そうだったけど回復した?」


 委員長にも私の不調は気付かれていたみたいだ。

 それはまあ、対戦相手の事は気になって当然か。

 私の方は殆ど周りに気を回す余裕が無かったけども。


「あー……委員長にも心配かけたかな。うん、成美達のおかげでね。もう大丈夫だから」

「そう。良かったわ。腑抜けた状態のあなたに勝っても意味が無いし」


 思わず笑みが浮かぶのを抑えられない。

 やっぱり委員長は面白い。

 平常心を保とうとしても闘争心が刺激される。


「簡単に勝てるとは思わないでよ。私だって勝つつもりでここにいるんだから」

「簡単に行くとは思ってないわ。でも勝つ」

「ふふっ、委員長のそういうとこ私好きだわ」


 普段の委員長然とした委員長よりも、CODの時の委員長の方が断然良い。

 多分こっちの方が彼女の本質なんだと思う。


 そういう意味で他意なく言っただけなのに、委員長には軽い溜め息を吐かれてしまった。


「好きとか、天音さんは軽々しく言わない方が良いわよ? 絶対誤解する人いるから。特に女子には止めときなさい」


 しかもなんか諭されてしまった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ