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第五部 四十九話 社に眠る災厄

 人間の町の中にあるほどほどの大きさの神社の境内。


 普段は神殿と植樹以外はほとんど閑散としているその場所はいまや大いににぎわっていた。

 頭上には数多くの赤い提灯が並び、あちこちが光り輝くテントで満たされている。


 香ばしい肉の香りが鼻を刺激する。

 行き交う人は光るリングを腕に通していたり、はたまた色と模様のついた風船を持ち歩いていた。


 アイスがあったり、チョコバナナがあったり。

 屋台は色とりどりの看板でその存在をアピールしている。


 夜空の下で多くの人がにぎわう。

 時雨はその中を物珍しそうにきょろきょろ周りを見ながら歩いていた。


 せっかくだからと知り合いが着せてくれた良い和服。

 深い藍色に白い波の模様が入りその中へ淡いピンクや黄色の丸が漂う和服。

 海と花火を描いているのだろう。


 時雨のとなりを歩いていたのは黒色に少し白い模様が入った和服を着る晴斗。

 もともと二人は一緒に来たのではなく、たまたまばったりと会ったのだ。


 せっかくだからと二人で回ることになったのである。時雨はおめかししてもらっているから晴斗から見ればどきりとするほど綺麗だった。


 時雨はそんなことお構いなしに晴斗の手を引いて人込みの中を進んでいく。

 時雨はこんな京以外でこんなお祭りは初めてなものだから大興奮だった。


「晴斗、あれなに?」

 時雨は指をさしてアイスの屋台を指さす。

 晴斗は見慣れぬ時雨の雰囲気にたじたじしながら時雨に説明する。


「ああ、竹茸アイスか…たけのこときのこの形を模した棒アイスだ」

 晴斗はアイスの説明する。ここらでお祭りの定番なアイスらしい。晴斗は昔お父さんにねだって買ってもらってたなぁと思い出す。


 なんだかお父さんが微妙な顔をしていた気がするけど、なんでだっけ…


 そんなことを思いながら晴斗は時雨を連れて店員さんの前に行く。


「まあ!彼女さん連れかい?」

 作業をしていたおばちゃんが振り返って声をかけてくれる。


 時雨はぱちくりとした。

 晴斗は「いや、俺たちそんなんじゃ…」と困惑しながら答える。


「まあまあそう言わんと!」

 おばちゃんは話半分みたいで晴斗が説明しても2人がカップルだということは疑わないらしい。


 晴斗も困ってしまって訂正しなくていいか…と開き直る。


「…っ…どれがいい?」

 開き直ったつもりでいたがおばちゃんに言われたことでどうしても意識してしまう。


 辿々しく時雨に聞いてみる。

 顔は直視できなかった。


「薄紫のきのこアイスで」

 時雨は目に映ったアイスのうち一番気になるものを指さす。


「兄ちゃんはどうする?」

 後ろの方で作業していたらしいおじちゃんが声をかけてくれる。


 晴斗はひとまずお気に入りの緑色のたけのこアイスにした。

 代金を晴斗が払うことして2人ともアイスを受け取る。近くのベンチに腰を下ろした。


 アイスを食べ終わったら時雨が自分の分の代金を支払うつもりだ。


「♪」

 時雨は鼻歌を歌いながらアイスをなめる。

 甘いぶどう味。

 時雨はこういうのは食べたことがなかった。


 幸せそうに食べる時雨を晴斗は眺めていると気がつくことがある。


 (なんかお父さんが微妙な顔する意味がわかった気がする)


 晴斗は目をふいとそらした。

 ちょっと顔が赤くなってると思う。やや赤みのある光の影響ということにできないだろうか。


「?」

 時雨は晴斗の気も知らずアイスを味わっている。 


 ちらと晴斗が時雨の方をみた時時雨は柔らかくなってきたアイスを齧った。


「?どうしたの?」

 晴斗は反射的に顔を青ざめさせて股間を押さえる。手に持ったたけのこアイスがぷるぷる震えているのに気がついて、時雨は問いかけた。

 


「…なんでもない」

 ブルブルしながら晴斗は呟いた。

 なんでこうなってるのか説明求められたらどうしようと困っていたが、晴斗の心配は無用だった。


「失礼します。ちょっとお話いいでしょうか。」

 そこへ一人の女性が現れたのだ。

 話題は完全にそっちに持っていかれる。


 瞬く光に照らされた黒い髪がぼんやりと光っていた。赤白の巫女服を身にまとう女性。

 いかにも巫女といった人だった。


「京の方々ですね。お願いしたいことがあります。」

 神妙な口ぶりで巫女は事を語る。

 まさか京について知っているとは思わなかった。

 かなり外部の人で京人のことを把握している人は少ない。

 

 目を見開く晴斗と時雨。

 夜空で星が瞬き、きらりと揺れる。


 ――――

 

 「メンバーは、美空さんと俺、時雨とかぐや…さん」


 あってるよなと少し不安に思いながらも晴斗は点呼をとる。

 場所は神社の地下にある空間。


 禍々しい紫色の瘴気が立ち込めるその場所はすさまじく気味が悪かった。

 


 神社の下には洞窟があるらしいことは晴斗は話に聞いたことがある。

 しかしそれは半分神話的なものだと思っていたから、本当にあったのかと驚いた。


「わぁ…これが…」

 かぐやという女の子は目の前の光景に感嘆する。

 この子は以前瀬戸香や美空と行動を共にしていた子だ。


 黒く長い髪に、緑色のぱたぱたとした和服姿。

 手には大麻(おおあさ)を持っており、呪いの類に精通するスペシャリストである。


「さすがは魔神由来だねぇ」


 洞窟の中になんとか閉じ込められているが、この瘴気は触れたら人間にとってひとたまりもないものだ。

 神通力を使える巫女ならともかく人間は近づいてはならない。


 京人も大丈夫だが長時間の活動は良くないとのこと。

 晴斗は霊力を宿したことにより京人と同様に行動できるようだ。ただし前例があまりないので注意を怠るのはいけない。


 人選の理由は魔神の瘴気に京人以上に強いデミスとアビスの力を持つ2人。

 

「美空、大丈夫そう?」

 時雨は心配そうに美空に聞く。


 美空はばっちり!と元気よく答えて見せる。

 彼女は時雨よりも前に覚醒しているとのことだ。


 時雨はまだその状態の美空を見ていないので少し楽しみだったりする。

 自分の成長も見せられるといいな。


 神社は洞窟に封印された魔神を抑え込む役割を担っているわけだが、どういうわけかその封印に対抗し始めているという。

 完全な復活は難しいだろうが魔神の力の断片が暴れ出す可能性があるらしい。


 ちなみに断片だけでも街一帯を消すことぐらいたやすいとのこと。

 このまま放って置くわけには行かない。


 巫女が封印の確認をするべく4人に護衛を頼んだのだ。かぐやの場合は護衛よりもサポートの方が役割的には大きいだろう。


「行きます」

 巫女さんは前進した。

 体を白い光が覆っている。


 まさしくこれが神通力なのだろう。

 

 紫色の瘴気の中を進んでいく。

 奥に行くほど少しずつ瘴気の濃さが増していくような気がする。漂う煙のような塊を手で振り払いながら進んだ。

 狭い道を抜けると大広間につながっていた。


 「これは…」

 見上げるほど巨大な空間。

 岩の壁がはるか先まで広がっていてそのわきから生える草は紫色に変色していた。

 広間の中央には水たまりと祠が立てられている。


 この祠の周囲には灯篭が複数並んでいた。

 灯篭は全体が真っ黒になっている。ところどころにムラがあって、黒がもともとの色ではなかったであろうことを暗に示しているような気がした。


 真っ黒な灯籠の屋根らしき場所の下には部屋のような空間があって、瘴気に似た紫色の光を放っている。


 それに加え洞窟の中だから光源はないはずだが不思議と明るかった。


 ちらちらとホタルのような光が漂っている。

 紫色の光がなにに由来するものなのかはわからない。下手に触れないほうがいいと判断した。


「まずは灯篭の様子を調べていきます。」

 巫女さんはてきぱきと動き出した。

 流石はプロといったところ。


 巫女さんは驚くことにはるか昔、先祖があの桔梗さんとライバル関係にあったという。

 京ともつながりがある不思議な家系なのだとか。


 その腕前はこういう封印に関する知識を持たない時雨からしても相当すごいと分かる。

 巫女さんの周囲にサイコロのような光の図形が浮かび上がり、ころころと回転し始める。


 手で探り、灯篭の様子を調べていく。

 紫色の光だった明かりが一つだけ黄色に変化した。


「!!」

 同時に周囲にどろどろとした紫色の塊が出現する。

 4人はそれを脅威と認識して武装する。


「お願いします!」

 巫女さんは声を張り上げた。


 4人は一斉に動き出しす。


 紫の塊はスライムみたいにもぞもぞと動き出したかと思うと驚くほどの速度で跳躍する。

 壁に当たっては反射するように高速で動き始めた。


「うわ、なんだこいつ!?」

 晴斗は思わず声を上げる。


 「帳」

 かぐやは静かに術を展開した。

 光の壁が出現し巫女とその周囲を覆う。


 呪いや瘴気の類を退ける領域を作り出した。

 塊たちはかぐやを最優先に狙おうとしていたらしく出鼻をくじかれて散開する。


「逃がすかよッ!」

 晴斗は塊のうち近くにいた一匹をぶん殴る。


 ドゴッ!!


 激しい打撃音が響いて塊は壁にたたきつけられて離散する。


「!?今素手で殴りましたか?!」

 巫女は慌てて確認する。

 巫女さんは晴斗が何も武器を持っていないとは思っていなかったらしい。


「おお。そうだけど」

 晴斗は何食わぬ顔で殴った手を見せる。

 なんの変哲もない肌の色。


「…普通呪いが移るはずなんですが…なんで大丈夫なんですか?」

 巫女は困惑したような、でも同時に安堵したような顔をして尋ねる。

 


「晴斗は受ける攻撃を全部打撃に変換しちゃうんです。だから、呪いとか関係ないんですよ」

 他の塊から目を離さず後退してきた時雨が補足説明する。

 なるほどと巫女さんは納得する。


 「はっ!!」

 自在に曲がる光線が塊を3つ一気に焼き払う。

 跡形もなく消し飛ばされた。



「ふっ!」

 時雨も圧力を全開にして超臨界水と化した水妖を振るう。

 触れたらたちまち塊は溶けていく。


 何も考えずに斬ったりしてしまえば飛び散った破片とかが後々被害の元になりかねない。

 アビスがある時雨はいいがかぐやと晴斗は特別な耐性までは持っていない。それも打撃に変換できるなら問題はないかもしれないけど、それはそれでダメージを負っているはず。


 少なくともダメージを受けているような様子は見られなかった。じわじわあとから瘴気の影響が出てきてもおかしくはない。


 時雨は塊を強引に溶かしきって無力化していった。


「ふぅ…」

 時雨は汗を拭う。臨界状態を維持するのはかなり消耗するようだ。ただ不安定さはかなりなくなった気がする。これも覚醒の影響だろうか。


 出てきた塊は全て片付けた。

 再び洞窟の中に静寂が戻ってくる。


「…」

 巫女さんはじっと3つ目の灯籠を険しい顔つきで見つめていた。


「大丈夫ですか?」

 かぐやが近くでひょいと現れる。


「わっ!?」

 みこさんは相当集中していたようでいきなり声をかけられて驚いてしまった。


 恥ずかしそうに「ご、ごめんなさい」と謝る。


「あー、こういうタイプねー」

 かぐやは一目見て灯籠の様子を眺める。

 どうやらいくらか分かるようで巫女さんと一緒に作業を始めた。


 時雨たちはその会話には混ざれないので周囲を確認することに。

 さっきと同じなら多分解除したらまた何が出てくるんだろう。


「みんな、いったん休もう。こんな瘴気がある場所で留まってたらどうなるかわかんないよ」


 かぐやは手をはいはいと挙げて知らせる。

 一同は洞窟の外へ出て体を休めることにした。


「…そんなに感じないけどな」

 神社の敷地の隅に来て座る。

 晴斗は自分の様子を確かめてつぶやいた。


「基本的に発症するまでは自覚できないことがほとんどです」

 巫女はふっと息を吐いて説明する。


 巫女さんも結構消耗しているようだ。

 汗を浮かべながら座って休息している。


 神通力を使うというのも楽ではないらしい。

 一度でも剝がされたら人間である彼女の命はないという緊張感もあるだろう。


 それから20分の休憩を挟んで再度洞窟の中に入る。相変わらずの瘴気のすごさだ。


 思わず気持ち悪くなる。

 さっきまでこんな空間の中にいたのか。


 晴斗は思わず顔をしかめる。

 時雨たちも同様。


 中にいる時は全然感じなかったのに。

 全員で点呼した上で戦闘準備を行う。

 

 「次を解除したらもっとやばいのが出てくるのでそのつもりでお願いします。」


 巫女さんは慣れた手つきで術を使い灯篭の光の色を浄化する。

 ひときわ明るく光ったと同時にゴゴゴと地響きがした。


「うわっ!?」

 思わず時雨は足を取られた。

 膝をついて地面を見ると地面まで紫色に染まっている。


 時雨は反射的に飛び上がって距離をとった。

 ボゴッ、と大きい音を立てて地面が持ちあがっていく。

 大量の土がもりもりと軽々押しのけられて姿を現す。


 紫色のドロドロとした巨体。

 黒い靄もかかるその姿は異質そのものだった。


 大きさは5mほど。

 空間の割には結構場所を埋めてしまう大きさだ。


「なんだこいつ!?」

 晴斗は怪人とも明らかに違う体躯と姿に驚愕する。

 

 「竜…!」

 時雨は目を細める。

 これは油断できない。


 以前遭遇した奴はこれよりかは随分ましだっただろうが、それでも全然太刀打ちできない相手だった。

 冷や汗が出る。


 時雨はすぐに圧力を全開にした。今回は巫女さんも守らなければならない。

 紫色の怪物はすぐに周囲に存在する京人に反応する。

 4足歩行のごつい体格。

 身の毛もよだつ威圧感。


「はっ!」


 誰よりも早く動いたのは美空。

 ウラシアによく似た姿となって光線を放つ。


 さらに周囲には光り輝く盾が展開された。

 そのうち1枚ずつほかのメンバーのところまで飛んでくる。


(使えってことか!)

 晴斗はそれをすぐに掴んで走り出す。

 足から順に稲妻を発して速度上げていく。


 ゴゴゴ…!

 美空から放たれた光線が怪物の体を焼く。

 しかし効き目は薄いらしい。


 すぐに首を振り上げ光線の軌道を変えてしまう。

 光線はそのまま洞窟の壁を穿った。


 ズズン!

 高威力の光線が岩盤を削ってすさまじい轟音を反射させていく。

 ばらばらと石の破片が落ちてくるのをかぐやが術で防ぐ。

 

「おらっ!」

 晴斗が竜へ飛び蹴りをかます。


 ゴンッ! 


(なんだこいつ硬ぇ!)

 晴斗は思わず顔をしかめる。

 今まで蹴ったことのないくらいの硬さ。

 攻撃が通っているとは思えなかった。


 反作用で衝撃が晴斗の足に返ってくる。

 足が壊れることはないが、それでも痛みが激しい。たぶんこれは呪いの影響もあるだろう。


 即座にもう片方の足を使って退避する。


 美空の召喚したカニ、サメが攻撃に転ずる。

 晴斗と入れ替わるように前進し、カニはハサミで攻撃を、サメはかみついて攻撃する。


「はあっ!」

 時雨が跳躍して圧力に遠心力から位置エネルギーまで上乗せして怪物に背に一撃を見舞う。


 ガキンッ!


 弾かれるような甲高い音。

 流石にこの巨体だから両断なんて無理だとは思っていたがそれでも鈍すぎる感触。


『オオオオオオオッ!』  

 雄たけびを上げて怪物は身をよじった。

 自分に危害を加える煩わしい者たちへの苛立ちの表れ。

 激しく身を揺らして背中から無数のトゲを展開する。


 串刺しになりかねない量に一同は焦った。

 晴斗が巻き添えを食らったが彼に限って刺さることはない。


 壁まで吹っ飛ばされて激突しているにもかかわらずわりと簡単に立ち上がっている。


「んにゃろ…!」


 サメが穿たれてはじけ飛んだ。

 さらに怪物は口から極太のブレスを吐く。


 「危ない!」


 美空が声を張り上げる。

 ブレスの照準は巫女さん。


 巫女さんの瞳孔が開かれ息が詰まる。

 時が止まったような一瞬。


「うぐぐっ…!」


 すぐそばにいたかぐやが盾役を買って出る。

 解呪の印を前に突き出してなんとか受けている。


 このブレスも呪いの類だからこそできる芸当。

 しかし威力の高さは無視できない。


 印が結ばれているのは特殊なつくりとはいえ紙。

 耐えきれずにばりっと音を立てて裂けた。


「!!」


 ブレスは二人を吹き飛ばした。

 さらに壁に激突しそのまま押し潰そうとする。


「流星ッ!」


 薄紫色に輝く隕石が竜の巨体を穿った。

 激しい威力故に竜も横に吹っ飛ばされて転がっていく。

 ブレスを打つ余裕もなくなって二人は解放された。

 美空はデミスの力を開放し姿を変える。


「無事!?」

 美空が相手をしてくれている間に時雨は二人に駆け寄る。


 「私はまだマシなんですけど、かぐやさんが…!」

 震える声で巫女さんが訴える。


「!」

 かぐやは終始巫女さんを庇い続けたのだろう。

 肌のほとんどが瘴気に染まり変色している。

 本来なら呪いに触れたらこうなるらしい。


 「はあ…はあ…!」

 かぐやは苦しそうに肩で息をしている。

 あまり長いことこれを放置したらいけないのは確か。

 

 「どうしたら…!?」


 時雨も慌てる。

 美空がタイマンで相手を抑えてくれているが、それはそれで美空が心配。あまり時間の余裕はなさそうだ。


「いったん外に…!このままでは瘴気で進行が加速します!」

 巫女さんはかぐやを抱えて歩こうとするが足が動かなくてすぐに転んだ。

 巫女さんだってかぐやに庇わたとはいえ呪いを受けてしまっている。なんとか動けているのは神通力あってこそのものだろう。


 時雨は転びそうになった彼女を受け止める。

 「時雨!俺が運ぶ!」


 晴斗が駆けつけて2人まとめて方に担いでくれた。


「あ、ありが…うぐっ!?」

時雨は礼を言おうとして棘の襲撃に対応が遅れる。


 二人を守らねばならないから液状化でやりすごすわけにもいかない。


 身を削られた。

 痛みが伴う中すぐに晴斗たちが無事かどうかを確認する。

 

 晴斗の足は速く、すぐに出口の方まで駆け出していった。


「なんで荷物みたいに扱うんですか~~っ!」

 巫女さんの文句が聞こえたが緊急時だから我慢してほしい。

 少なくとも大丈夫なはず。

 

 「このっ!」

 二人の無事を確認するや否や時雨は地面を這ってきた棘を全部破壊する。

 これがずっとあると動きにくくなる。

 相手の巨体の割には狭いこの洞窟で、動ける場所を限られてはのちのちまずいことになりかねない。


 中央の広間の方では美空と竜がほぼ一対一で攻防を繰り広げている。


 「美空!」

 時雨もすぐに加勢する。


 だが上空にいる美空を見たときに天井にある紫色の紋が目にした。

「なんだ…あれ?!」


 妖しく光るその紋様は不気味のひと言に尽きる。

 それが何を意味するのかは分からないが、しかしただ良くないものであるのだけは分かった。


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