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四十七話 ミヅハノメ覚醒

 「ちゅいちゅい」

 時雨の肩の上でキクイタダキが羽繕いをしている。

 相当ご機嫌らしくずっと何かを囀っていた。


「ねぇ…本当にここ来る意味合ったの?」

 時雨はむすっとした顔で上を見上げる。

 太陽は少しずつ傾いてきていた。


 午後2時くらい。

 一日で一番気温が高い時間はさすがに桐谷の町でも暑いと感じた。


 「ちゅい!」

 キクイタダキは張り切った声で鳴く。

 時雨には言葉の意味は分からないがそれでも肯定の意味だということは分かった。


 不思議な水に触れることはできた。

 だがただそれだけで時雨が特段パワーアップしたわけでもない。


 これでは美空を助けに行けないではないか。

 時雨はそんな不安を抱えていたがキクイタダキはそこまで意に介していなかった。


 美空が生み出した怪人なのだから多分美空がピンチなら何かしら反応を示すはず。

 ならこの様子ならまだ大丈夫なのかなと時雨は考える。


 なんでこの子を残したんだろう…

 時雨はふぅと息をつく。


 美空も余裕がなかったのかもしれない。

 もしかしたら空間の影響でうまく怪人を作れなかったということかもしれない。


 「ちゅい!」

 キクイタダキは羽繕いを念入りに済ませて羽ばたいて近くの木に止まる。


「あらら、どこいくの」

 時雨は慌てて追いかける。

 近くにあった木の幹をすいすいと上り、キクイタダキのもとへやってきた時雨。

 キクイタダキの隣まで来ると景色に驚く。

 

 「稲穂…?この時期に?」


 木の上から見えたのはずっと向こうまで通じる田園地帯だった。

 山の合間にある台地の上に形成された田んぼは絶景。


 夏の終わりかけという時期にもうここまで稲穂が育っているのだ。

 流石におかしいのではないか?


 時雨は訝しんだ。


「ちゅい!」

 キクイタダキは田園地帯へ向けて飛んでいく。

 キクイタダキの冠羽が今までにないほど逆立っていた。


 時雨は冠羽の変貌具合に驚きながら即座に追いかける。


 ――――

 

 キクイタダキを追いかけて時雨は全力疾走する。

 美空の生み出した怪人であるというのは疑いようもなかった。


 時雨が全速力で駆けてもキクイタダキはそのまま前を飛び続ける。

 

(多分気のせいじゃない)

 時雨はじわりとにじみ出る汗を走りながら振り払う。


 単に暑いからというわけではない。

 なんだか変なのだ。


 キクイタダキはかなり周囲を警戒しているようだし、時雨自身も本能が警鐘を鳴らしている。

 少なくともここらで一瞬でも止まっていたくなかった。


 なんだか桐谷に初めて言った時の感覚。

 確信は持てないけれどなんだか周囲を気にせずにはいられない。


 もしかしたら前と同じく影が近づいてきているのかも。


 だから走り続ける。

 田んぼのあぜ道を走り続けた。


 右も左も黄金色の大地が広がっていて遠くの方に太陽が見えている。

 やがて黄色味を帯びた太陽が少しずつ沈んでいく。


 何時間か走り続けた。

 すると右側の田んぼは途切れて森が姿を現す。


すぅっ…


 僅かに視界が色あせた。

 目が疲れたのか?

 

 (今不自然に周りの色が薄くなったような…)

 しかしそれは一瞬のことですぐに色は元に戻った。


「あ!先輩!」

 時雨の元へ溌溂とした声がかかる。


「碧!」

 声の主の名を呼ぶ。

 どうやら京の付近まで帰ってきたようだ。


 そんなに長い距離走っていたのかと時雨は内心驚く。

 碧は手に竹籠を持っていた。


 山菜を集めに来たようだ。

 「先輩もう帰ってきてたんですね」

 碧はにっこりと笑う。


「あ、うん」

 時雨は戸惑いながら答える。

 斜陽が時雨を後ろから照らす。


 「先輩、聞きましたよ。結構無茶な戦いしたって」

 碧はめっ、ととがめるように腰に手を当ててずいと顔を近づける。


「う…ごめん」

 ミズスマシとアメンボの怪人と戦った時のことだ。

 あの後病院にかかれと言われたが、診てもらうなり当たり所が悪かったらどうするんですかとヨモギさんにこっぴどく怒られた。

 しかもその話は既に碧の耳にまで届いていたということだろう。


 時雨は苦い顔をする。


「だいたい、先輩は焦りすぎなんですよ。気持ちはわかりますけどね!」

 

 碧は時雨に言う。

 彼女自身も同期に実力でおいていかれた身でもあるから焦りも分かるのだろう。


「それに、大丈夫ですよ美空さんは。強いですから」

 美空は強いから大丈夫。

 攫われた美空は今も捜索されている状態。


 多分碧自身もそのことに不安はあるだろうと思う。

 それでも彼女は美空のことを信じているということだ。


 少し前に美空と一緒に任務に当たって感銘を受けたらしい。


「…そうだね」

 時雨は寂しそうに笑う。

 大丈夫。自分に言い聞かせるようにした。


 少しだけ不安が和らいだ気がした。


 「…ちゅい」

 

 キクイタダキが低く鳴いた。

「!!」

 時雨はキクイタダキよりも少し遅れて反応する。

 


 


 辺(・)り(・)一(・)面(・)か(・)ら(・)色(・)が(・)失(・)わ(・)れ(・)た(・)。(・)


 



 

 黄金色の大地は淡い灰色へ変貌し、白と黒だけで表現されたモノクロの世界が時雨たちを包んだ。


(!!さっきのは気のせいじゃない!)

 時雨は背筋が凍るように冷たく固まっているのに気が付く。


 なんだ!?この恐怖感は!!

 碧は突然のことに困惑するばかりだった。


「碧!すぐに京に戻って応援頼める!!?」


「えっ!?で、でも先輩…!」


「早く!」


 時雨は碧を柄にもなく怒鳴り飛ばす。

 事態についていけない碧を即座に退避させる目的もあるけれど、誰かほかの人を呼んでくれなきゃいけない。


 (これは…多分自分にとって一番の危機だ!!)


 時雨は直感的に把握していた。

 即座に装備を起動して装着する。

 義手は壊れたばかりで今回は持ってきていない。

 

 武装し始めた時雨を見て碧は弾かれたように駆け出していく。

 しかし白黒の主はそれを許さなかった。


 音もなく地面から真っ黒な糸が飛び出す。

 碧の体を瞬く間に縛り付けた。


「な…!?」

 碧は突然体の自由が奪われたことに困惑する。

 黒い糸は頑丈すぎて碧の力では振りほどくことができない。


(能力が出ない!?)

 さらに爆破の力も封じられてしまっている。

 すぅっ、と碧の背後に黒い影が現れた。

 

「碧!」

 即座に時雨は碧の元へ駆け出す。

 圧力も全開にして時雨は突進する。


 ズバッ…


 「!!」

 時雨は全く気が付かないうちに切り裂かれていた。

 

(なに…が…!?)

 時雨は全く気が付かなかった。

 攻撃されているということに。


 黒い糸が張り巡らせているわけではなかった。

 視認性の悪い霞網みたいなトラップではない。


 愛刀が地面に落ちる。

 時雨は信じられないものを見たというような表情でもう一度碧に手を伸ばす。


 ドン…!

 今度は時雨は後ろまで押し返される。

 当然何をされたのかもわからない。


 そして遅れて激しい痛みが時雨を襲う。

 「がぼっ」


 大量の血反吐。

 内臓がつぶれた。

 具体的にどこかは分からない。


 吐いた血は透明になって地面に吸収されていく。

 時雨は膝をついて肩で息をする。


(…?)

 時雨の視界がかすむ。

 あまりの痛み故だろう。


 だが。


「あああああああっ!!」

 

 時雨は再度碧を取り返しにかかった。


 なんとしても防がなくては。

 このままでは碧まで…!!

 今度は全身にアビスを展開する。


 今までよりもはるかに速くそして重い攻撃。

 今までで一番近くまでいけただろうか。


 影はするりと回避した。

 体は不定形らしく、くにゃりと体が曲がって避けてきた。


 時雨が反応するよりも早く影は真っ黒なエネルギー弾をぶつけた。

 時雨の身長よりもはるかに大きな黒玉が田んぼのあぜ道ごと削り取っていく。


 巻き込まれた時雨が無事なはずがない。

 「あ…!ぐ」


 時雨は体が削られてなくなっていく激痛の中、空しく碧の方に向かって手を伸ばす。

 その手が届くことはなかった。


 影は碧を真っ黒な繭の中へ閉じ込める。

 繭は竜巻のように回転していた。


(ダメだ!ダメだ!)


 時雨はその光景を目の当たりにして起き上がろうとする。

 

 

「…?」

 時雨は違和感に気が付いた。

 恐る恐る自分の体を見る。

 

 足がない。

 さっきの黒玉で削り取られてしまったんだ。


「っ…!」

 時雨は残された左腕だけでなんとか動こうとする。

 だがそんなことをしたところで意味はない。


 歩くことなんてできない。

 ただでさえ内臓がつぶれているというのに四肢の大半を失ってはこれ以上動けるはずはなかった。


 ドンッ!


 空気が一気に押し出される。

 時雨は空気に押し出されて小石のように転がった。


 ざばん。

 田んぼの中に放り出され水しぶきを上げた。


「…!」

 時雨はなんとか体を起こそうとして、目の前の光景に顔を青くする。


 真っ黒な影。

 その輪郭は碧とまるで同じだった。


 (取り込まれた…!?)

 否。影の本体は確かにすぐ近くにいた。


 いまの碧の姿は影の傀儡と成り果てたがゆえのもの。

 時雨はその事実に絶望する。


 まだ打つ手がなくなったわけじゃない…!でも…!碧を助けられる方法が分からない!


 相手の術の特性は何だ!?

 本体を倒したら解除されるタイプか?!

 下手に解除したらダメなやつか?!


 分からない。

 時雨はその手の搦め手の知識に疎かった。


 ズズ…

 真っ黒な影の碧は同じくらい真っ黒なスパナーを地面に引きずって前進し始めた。

 やがてゆっくりだった歩幅は一気に広がり田んぼの中を勢いよく走り出す。


 時雨は逃げようとするがあいにく左手だけだ。

 逃げるなんてできたものじゃない。


 バコオン…という豪快な音が響き渡って時雨は宙に放り出された。


 ――――


 深い水の中だった。

 光は深場へ行くほど薄くなり深い青色へ染まっていく。

 はるか上の方で光が揺れている。

 

 光をぼんやりとした目で眺める時雨は力なく底へ底へと沈んでいった。



(まただ)


 時雨は思い出す。

 また自分が弱いせいで誰かが苦しむんだ。


 美空を守れなかった。

 碧もああなってしまった。


 昔だって霙にけがをさせた。

 先輩に庇われてなんとか生き残った。


(僕は…ダメな子だ)


 時雨は目を伏せる。

 まぶしかった水面の輝きは次第に弱くなっていく。


 両親の話を聞いた。

 二人とも立派な戦士だったという。


 方や術が多彩かつ独自。

 もう一方は術は使えなくても身体能力はピカイチ。


 自分は…中途半端だ。

 そんなすごい人の血を引いているだなんて思えない。

 何度失敗した?


 他の人よりも何回出遅れた?


 自分は…防人に向いてないのかもしれない。

 いや分かってはいた。


 向いてないのだ。

 美空の心配は正しかった。


 死んでほしくないって。

 僕はこれから…約束を破るんだ。


 悔しかった。

 辛かった。


 破るつもりなんて一切なかった大事な約束を自分は今無下にしようとしている。


『本当に?』


 声が聞こえた。

 時雨ははっとして辺りを見渡す。


 下の方で上とはまた別の光が待っていた。

 優しく淡い紫色の光。


 まるでラベンダーみたいな、優しいけど同時に強かな光。


『…お母さん』

 時雨は呟いた。


 いつか言ってたっけ。

 時が来たらまた会えるって。


 それって…


『違うわ』

 うっすらとベールのような姿。

 ほとんどその容姿は見えなかった。


 でもはっきりと時雨の思ったことを否定した。


『あなたは決してダメな子じゃない。ここで死んじゃう子じゃない』

 

 強く、強く語り掛けてくる声だった。

 時雨が底へついて僅かな細かな砂を巻き上げる。


 母は時雨のもとへ近づいて砂をあっという間に取っ払った。

 優しく手を時雨の頬に当てる。


 『あなたは優しい。とっても優しい子よ。立派な防人よ。』


 『あなたが失ったもの確かにあるけど、同時に守ったものがある。』


 街中に怪人が襲ってきたときに、守った小さな女の子。

 ルリマダラ怪人から守り切って見せた後輩の霙。

 恨みで放たれた弾丸から守った少年。

 暴走した少女。

 屋上にいた少女の心。

 桐谷の人々と町。

 


 『全部、あなたがいなきゃだめだった』


『!』

 時雨はすっかり忘れていた。

 失ったものばかり数えていた。


 なんだか平手打ちを食らったように、痛くて、そして今までにないほど頭がクリアになった。

 

『それに…気づいてないでしょ。あ(・)な(・)た(・)、(・)刀(・)を(・)使(・)っ(・)て(・)い(・)な(・)が(・)ら(・)人(・)ど(・)こ(・)ろ(・)か(・)怪(・)人(・)す(・)ら(・)切(・)っ(・)た(・)こ(・)と(・)な(・)い(・)の(・)よ(・)』

 

 くすり、と笑ったような気がした。

 きっとなんて異常な子なんだろうと思ったんだろう。


 『斬るってことの重大さをよくわかっていることでもある。それは大事なこと。でももう一つ忘れちゃだめなこともあるの』


『今あなたが戦うべき敵と、大事な仲間の命。天秤にかけたら…分かるでしょ?どっちが大事なのか』

 すっと、ほんの少しだけ母の姿が見えたような気がした。

 輪郭だけでなくて少し色が付いたような気さえする。

 

『大丈夫。あなたなら、きっと後輩ちゃんを助けてあげられるわ。私の自慢の子だもの』


 全身に力がこもった。

 立ち上がらなきゃと思った。


 たとえ足がなくても。

 あるに越したことはないけど!


 今僕は立ち上がらなきゃいけない!

 約束を守るため。

 碧を助け出すため。


 無茶をするのは今に始まったことじゃない!

 そしてちゃんと2人無事に京へ帰るんだ!


 母に見送られながら時雨は上へ上へと上っていった。

 自然と体は、上っていった。


 ――――

 波が揺れた。

 地面を転がっていた若人を中心として大波が現れた。しかしそれ自体はささやかなもの。

 影を圧倒することも碧を救い出すこともなかった。

 

「…」

 しかし影は確かに状況が変化したことを瞬時に理解した。

 若人の四肢は既に元通りになっている。


 傷も多少残っているが、それでも大怪我どころじゃない話だったのが嘘のように治ってきた。

 白黒の世界では霊力を介する能力の使用は不可能。

 影にとって時雨はこの瞬間から得体のしれない者となった。



 

 時雨は立ち上がる。

 疲労まで回復したわけじゃない。最低限戦うために必要なくらいは回復できた。


 (水が…作れるようになった!)

 時雨は影から目を離さず自分の変化を感じ取る。同時に水を取り込んで回復することもできるようになった。


 (それだけじゃない)

 時雨の体内を巡る紫のエネルギー。

 今までとは格段に違う何か。


 (これは…桐谷のあの水…!)

 時雨は感覚的に感じとった。

 しかもあの水よりもさらに高濃度で純粋であることも。


「はあっ!!」


 時雨は渦巻くその力を引っ張り出した。


 ゴウ…!

 豪快な音とともに紫色の光沢のある水が時雨を包み込む。


 バシャン!

 

 そして弾けた。


 頭から生えた輝く触角。

 髪は所々明るい紫色を宿す。


 瞳の色はそのままに瞳孔が雫の形をとる。


 紫色の光は次第に流れるようにゆっくりとその位置取りを変えていく。

 もともと濡烏色だった髪は明るい水色へ変わって光り輝いていた。

 

 時雨の身体を包むように水の羽衣が展開される。


 真気覚醒。

 

「ふぅ~っっ」

 時雨は深呼吸する。

 溢れ出すような全能感。


 今までと比べ大きく変化したのは間違いない。

 例えそうだとしても。


 やることは変わらない。

 紫色の光が一層輝いた。


 時雨は開眼し空中を蹴る。

 正確には足の裏に出現した水滴のエネルギーを放出させて推進力を得た。


 ドンッ!

 凄まじい音とともに瞬間移動かと錯覚するほどの速度で影に距離を詰める。


「…!!」

 影は驚いたように即座に距離を取ろうとする。

 同時に操られた碧がスパナーを振りかぶり攻撃した。


「はっ!」

 しかしスパナーが当たるよりも早く時雨は渦を発生させて碧をなかに閉じ込める。


 (じっとしといて!)

 時雨は念ずる。

 影が得体が知れぬ存在であるために碧にまで参戦されるのは避けたかった。


 影は腕らしい部分をくねらせ鞭のように振るう。

 時雨は即座に回避した。

 多分液状化では対処できない。


 以前の影もそうだった。

 こいつは気配を見るに影の中でもかなり有力な存在なのだろう。


 時雨には今色が戻っている。

 これは影の空間の力を上回ったということであるが、しかし完全ではない。


 輝く部位だけが色を取り戻している。

 恐らくはその部位以外を液状化させようとしても不可能だろう。


「てりゃあッ!」

 回避した直後に攻撃に転ずる。

 回し蹴りを影に向かって繰り出す。


 ドオンッ!という音とともに衝撃波が駆け巡っていった。

 遠くの木の枝が激しく揺れる。


 桁違いの力。

 しかし感触が薄い。


 とても影に効いているとは思えなかった。

 影は何事もなかったかのようににゅるんと姿を変え、今度は鉄槌の形になって時雨を襲う。


 「!!」

 振り回される槌を何度も回避する。

 動きが読めないから本当に危なっかしい。


 運が悪ければ何度か当たっていただろう。


 影は有効打になりにくいと考えたのか急に作戦を変えた。

 体全体が無数のナイフの形になって襲ってくる。


 流石にさばききれず何本ものナイフが体に突き刺さった。


 ナイフはじわりと時雨の中に浸透していき体を蝕んでいく。

 体の内側から黒く染まっていく感覚は不快極まりない。

 体が完全に拒否するくらいの危険物質だろう。


「くっ」


 時雨は即座に後ろへ下がる。

 脱力感がすさまじく打ち込まれた場所に力が入らない。


 このままナイフを放置するわけにはいかなかった。

 そこで時雨は体をはじけさせる。

 自爆。


 それにより強引にナイフを吹き飛ばし自身へのダメージを水の生成と取り込みで無理やり帳消しにする。


 はあ、はあと息を荒くしながら時雨は足を踏みしめる。

 この動作はどう考えても何回も使えるものなんかじゃない。


 

(…この動作は流石に無茶が過ぎたかも)


 

 霊力の消費が激しかった。

 通常の天賦による回復とは異なり2つの能力をほぼ同時に使わざるを得ない。

 再生することはできるのだが、ひどく効率が悪いのは確かだった。


 しかし時雨はまだ戦える。

 静かながらも強大な流れを伴う海流のような闘志が渦巻いていた。


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