4 突然の崩壊からの宿無し
夢を見ていた。血だらけの死体の中に自分は立っていた。自分の手には血が滴っているナイフがある。ハッとして慌ててナイフを離す。ふと、横にあった鏡を覗いた。そこには真っ赤な血で染め上がった服を着ている火野がいた。気味の悪い悪魔のような笑みを浮かべて。
午前三時。真っ暗な暗闇の中火野は目を覚ました。目覚めたばかりの火野は汗だくで心臓の鼓動が聞こえてくるほど高鳴っている。
「またあの夢か、最近みなくなっていたのに……」
火野はベットを出て台所に向かった。無性にのどが渇いていたからだ。コップに水をため一気に飲み切った。喉の奥までスーッと水がいきわたるのがわかる。
ふと不意に窓の外をみた。いつもはアパートの目の前には砂利を引いただけの小さめの駐車場があり、駐車場の隣には大家さんが植えた柿の木がある。毎年秋になると大家さんがその柿の実を分けてくれる。渋柿なので干さないと食べられないが干すと甘くて美味しい干し柿になる。
「なんだあれ?」
その柿の木の前に3メートルはある大男が立っていた。街灯の光が弱すぎるせいで顔までは見えないがとてもいかついことはよくわかった。
何をしているのだろう。そう思ってぼーっと眺めていると信じられないことが起こったなんとその大男が柿の木を引っこ抜いたのだ。ミキミキと音を立てて柿の木が引っこ抜かれているとその音に気づいた大家さんが慌てて部屋から出てきた。
「ちょっ、あんた何やってんのよ!」
大家さんの驚きと怒りが混じったような声が聞こえる。大男は気にする素振りもなく柿の木を引っこ抜いた。
「よくもあたしの大切な柿の木を!なんてことしてくれるのよ!」
夜中だというのに大家は大声を上げている。大男は少しやかましそうに大家のことを見ているが全く言葉を発さない。
すごいな、大家さん。あんな大男に怒鳴ってんだもんな。
「聞いてるの!!やめなさいよっ」
との叫び声とともに鈍い音が聞こえた。大男の足元に缶が転がっていた。
「オマエ、ウルサイ」
「え、今喋ったか。あいつ」
大男が喋ったことに驚いているとグッチャというグロい音が聞こえた。
「グッチャ?今グッチャって言ったよな……まさか……」
その予想通り大男の近くまで行っていた大家さんがなんと惨い姿になっていた。
「うそ……だろ……」
「ア、シンダ」
自分が人を殺したことに大男は気にも留めていない様子だった。そして、大男は大家を潰した柿の木を槍投げの姿勢で持ちアパートに向かって投げ飛ばした。
柿の木はもの凄い勢いでアパートに衝突しアパートは半壊、そして漏れたガスのせいで火がついていた。僕はというと怪我はないが腰を抜かして尻餅をついていた。
「な、なんなんだよ。あいつ……」
大男は燃えているアパートを眺めていた。しばらくするといきなり近づいてきて燃え盛っているアパートを漁り始めた。が、腰を抜かしてあたふたしている火野に気がついてのっしのっしと近づいてきた。
「オマエガ、ヒノスザク、カ?」
「あ、はっはい、ぼ、僕が火野です」
「ソウカ、オデ、リグノ、オマエ、ボスノトコ、ツレテク」
リグノ、そう名乗った大男は火野をつまみ上げようと手を伸ばした。
やばい、おれまた死ぬかも。なんでここ数日で何回も死にかけないといけないんだよ。
そう思っていると影の中から見覚えのある一人の男が出てきた。
「こいつは俺等の大切な仲間なんだ。手をだすというなら……お前を殺す」
「か、カラスさん」
やばい、超かっこいい。ほれてしまいそうだよこれは。今はバカなんか関係ない。なぜならかっこいいから。
「オマエ、ジャマ、ドカナイト、コロス」
「やってみろよ。大男ふぜいが」
「オデ、キレタ、オマエ、コロス」
リグノはどこから取り出したのか体格にあった大きめの棍棒を取り出して殴りかかってきた。
カラスは棍棒を華麗な動きでかわしながらリグノの大きな腹に何発か殴った。
リグノも少しは怯んだが動きを止めることはなく懸命に棍棒を振り回している。棍棒を避け間合いを詰めたカラスがリグノの顎めがけて強烈な一撃を叩き込む。
流石にリグノもやばいと感じたのか、攻めの姿勢から防御へと変えて次から次へと飛んでくる拳をガードしている。
「ちっ、これじゃきりがない。仕方ない、これを使うか」
一瞬緩んだ隙を棍棒の強烈な一撃が放たれる。回避が間に合わないと判断したカラスは影を盾の形に変形させてカードの姿勢をつくる。
ゴォォンと鉄と鉄がぶつかったような音が響いた。カラスが勢いよく後ろに吹っ飛ぶ。勢いを防ぎきれなかったのだ。
「ちっ」
吹っ飛ばされたカラスの頭から血が流れた。リグノはこの勢いのまままっすぐカラスへ棍棒を振りかざす。
やばい、そう思ったときだった。
「沼、影枝」
カラスがボソッと呟いた瞬間にリグノの身体中から血が噴き出した。
「ガハッ」
リグノが顔から倒れる。
今一瞬だが何をしたのかはっきり見えた。カラスが呟いたとき一瞬でカラスの影が広がりリグノの足元までいき、その影のなかから黒い物体が無数にでてリグノの身体を貫いた。
「な、なんなんだ、今の……」
「大丈夫だったか」
リグノとの戦闘を終わらせたカラスが、まだ腰を抜かしている火野の目の前へ歩いてきた。
「カラスさん血、大丈夫ですか」
「あぁとっくに止血は済ませた」
そう言いメガネを中指でクイッと上げドヤ顔を見せた。そのドヤ顔に火野はホッとしたのもつかのドッと疲れが火野を襲った。
あーやばい眠くなってきた。
「あ、いたいた。火野くん大丈夫だったかい」
その明るい声と気持ちの悪い笑みを浮かべたカイトが手を振りながら近づいてくる。周りに響くサイレンの音も相まって余計不審な人感が否めていない。
「あれ、火野くん?」
「カイトさん、俺寝るのであとよろしくお願いし……ま……」
「え、うそ。普通ここで寝る?」
睡魔に負けていきなり眠りだした火野をカイトは見下ろす。アパートの残骸の上ですやすやと気持ちよさそうに眠る火野をみてカイトはこいつ神経図太いな……と少し複雑な気持ちになった。
「おい、カイト火野の家なくなったけどどうする?」
「あ、そうだった。どうしよっか……」
まさかの結構強いカイトさん
次回は新キャラです




