3 バカと鳥とエトセトラ
苦しい。真っ暗で何も見えない。まるで体中に重油がまとわりついているように重苦しい。
真っ暗な世界による不安と息苦しさに押しつぶされないようにもがいていると、いきなり明るい世界に放り出された。
「ゴホッ、ゴホッ⋯⋯」
「だいじょうぶかい?」
目をこすりながらまだ明るい世界に慣れていない目で声をかけた人物に視点を移した。そこには赤髪の少年がこちらを覗きこんでいた。
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「とりあえずお茶どうぞ。」
そう言われて出てきた黄緑色のお茶には茶柱が立っている。
「えっと⋯⋯なんにも聞かされてないよね⋯⋯」
赤髪の少年が先に口を開いた。
「あ、はい⋯⋯」
「えっと、火野くんだったよね。とりあえず自己紹介をしようか。僕の名前は鵜海 快斗。気軽にカイトって呼んでよ。それでさっき君を連れてきたバカは楠ノ木 烏。まぁバカラスでいいよあいつは。それで――」
「おい待てバカラスってなんだ。俺は馬鹿じゃないぞ。」
さっきまでカイトに怒られて部屋の角で小さくうずくまっていたカラスが『バカ』という単語を聞いた途端勢いよく立ち上がった。
「何?聞いてたんだ」
「聞いてたわ!俺は馬鹿じゃないぞ!メガネかけてるし」
「伊達メガネなんてかけても頭良くなれねぇんだよバーカ」
「⋯⋯っ!?」
カイトがそっけなく言った言葉にショックを受けたのかカラスは膝から崩れ落ち地面に拳を叩きつけている。
「あ、あれ伊達メガネだったんですね」
僕はカラスに聞こえないような小さな声でハルトに聞いた。
「そうだよ、あいつは本当のバカだよ。バカの中のバカさ⋯⋯まぁそんなことはどうでもいい。さっきの話の続きをしようか」
カイトは目の前にあったお茶を一口のみ、ゆっくりと話し始めた。
「今この世界は戦争をしている、帝国とNUSがだ。しかし今戦場は泥沼化しているのさ。何故か分かるかい?それは――」
「ヴィア粒子のせいですよ、ね⋯⋯」
多分話を遮られるのが嫌いなタイプなのだろうカイトはものすごい形相で僕のことを睨みつけてきたがしばらくすると何事もなかったかのようにまた話し始めた。
「ヴィア粒子のせいで兵器のほとんどが使えなくなってしまった。国を守るのには最適だが攻める手段がない。そこで帝国はヴィア粒子を使った実験を行った。
その実験でなんとヴィア粒子を体内に取り込むと超人的な力を得ることが分かった。
その力を我々は『ロード』と呼び、ロードを持っている人間のことを『ローダー』と呼んでいる。
僕達も『ローダー』なのさ、あのバカラスは『影のロード』を持っている。見たことがあるだろう、黒いやつ」
「あ、はい。さっきちょうど」
その話が本当なら病室で見たカラスの足元から出た黒いモヤの正体はカラスが操っていた影だということになるのだ。
しかしそんな漫画やアニメにありそうなことが実際にできるなんて。これは世界中の厨二病達も大喜びだろう。
「で、なんで僕はここにいるんでしょう?」
「そりゃあ君も『ローダー』だからに決まってるじゃないか」
当たり前だろ、と言いたげな表情でカイトは僕のことを見つめてきた。しかし、今まで『ロード』とやらを使ったこともなければ聞いたこともない。第一ヴィア粒子なんて体内に取り込んだ記憶などまったくない。
「僕、ヴィア粒子なんて取り込んだ記憶なんてないんですけれど⋯⋯取り込むどころか見たこともないんですけれど⋯⋯」
予想外の反応に驚いたのかしばらくお互いにポカンと口を開けていたが「ただいまー」という聞いたことがない声で我を取り戻した。
「あっおかえりアツキ」
アツキと呼ばれた男は気だるそうに持っていた荷物を床にドサッと置きそのままソファに倒れ込んだ。
「あの、あの人は?」
「あぁ彼は桂樹 亜月。あいつも『ローダー』だよ。本当はもう一人いるんだけれど今はこれで全員」
アツキと呼ばれた男はソファに顔を埋めたままヘッドフォンをしている。音楽でも聞いているのだろう。かすかにヘッドフォンから音が漏れていた。
「さぁ本題と行こうか」
カイトは真剣な表情で話し始めた。
カイトが話した内容は具体的にはこうだ。あくまで推測だが軍が秘密裏に実験をしていた『ローダー』になれる薬が誤っていくつか流出した。その薬が偶然瀕死の状態であった僕に使われた。そうして僕は無事に『ローダー』となり奇跡の生還を果たしたのではないか、ということだ。
そりゃあヴィア粒子を注入された覚えがないわけだ。意識を失っているときに入れられたのだから。
まぁ憶測の域を出ないが。
そのヴィア粒子の薬はもともとはアメリカ政府に渡されるはずだったものだそうだ。流出した薬を追いかけているうちに僕のところにたどり着いたらしい。
「⋯⋯ということなんだ。今偶然にも『ローダー』になったきみが目の前にいる。どうだい我々の組織に入るつもりはないかい?悪いようにはしないさ。」
「そうですか⋯⋯もし『NO』といったらどうしますか?」
「その時は君を殺す」
「⋯⋯え」
今なんて言った。殺すと言ったか聞き間違えじゃないよな。
「いま、なんと?」
「君が我々の組織に入ってくれないなら殺すしかないといったのさ」
き、聞き間違いじゃなかった⋯⋯こいつ清々しい顔で殺すと言いやがった。しかもさっきからずっとニヤニヤと気持ちの悪い笑みまで浮かべている。僕はこのたぐいの笑みを知っている。これは誰かのことをからかっているときの笑みだ。
「⋯⋯嘘だよ。冗談だよ。にしてもきみ反応が面白いね。あのバカラスよりからかいがいがありそうだ。これからが楽しみだよ」
そう言いながらカイトはまた気持ちの悪い笑みを浮かべたがすぐに真剣な顔になった。
「でも殺すと言ったのは半分冗談で半分本気だよ。君がこの誘いを断ると政府が動くことになる。国家を脅かしかねない危険因子と判断されるだろうからね。もし政府が動くようなことになったら流石に僕たちも擁護はできないよ」
今カイトは嘘をついていない。そう直感がいっているカイトの目も冗談を言っているような目ではない。つまり僕がこの誘いを断ったら今度は僕が政府に捕まってしまうことになる。そうなったら何をされるのかわからないということだ。どうしようか⋯⋯
「――少し考えさせてください」
しばらく考えた結果、今日は突然のことが起こりすぎて頭の整理が追いついていないこの状況で何かを決めることは難しい。そう判断した。
「いいよ。じゃあ今日は家に帰ってからよく考えておいてね。カラスが送ってくれるよ」
カイトはそう言いながら。まだ床を叩いているカラスのことを叩き起こした。カラスは「もう帰るのか。気を付けてな」なんて言いまたカイトに叩かれていた。賑やかなこった。
そしてこの拠点とやらは少しお高めのモダンハウスだった。
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「確かカラスさんの『ロード』ってやつで移動できたはずですよねどうして使わないんですか?」
僕は帰り道でカラスにたずねた。するとカラスはしばらく周りをキョロキョロしてから口を開いた。
「こんな話を外でするとカイトに怒られるんだが⋯⋯まぁ良いだろう。教えてやる。俺の『ロード』はな一度行ったことがある場所でかつ影がないと移動することができない」
カラスはどうだすごいだろと言いたげなドヤ顔で伊達メガネをクイッと上げた。そんなデメリットを誇っていうことでもないだろ。
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そんなこんなで僕の家の前まできた。僕の家は3階のボロアパートの3階で一人暮らしをしている。できれば一戸建てに住みたかったがそんなお金が高校生の僕にあるはずもない。ただでさえ家賃を払うのがギリギリだというのに。
「ボロいな、このアパート」
「すみませんね!こんなボロアパートで!」
カラスの無神経な発言にすこし苛つきながら階段を登っていった。
「僕の部屋は3階の302号室なんで。ここまでどうもありがとうございました」
「おぉ、そうかじゃあまた明日な」
カラスはそう言い足元から出た黒いモヤの中に姿を消した。そのことを見届けてから火野はドアの鍵を開け部屋の中に入っていった。部屋の中は少し散らかっている。火野はそのまままっすぐベットに向かっていきそのままベットに身を投げた。
「はぁ、疲れた⋯⋯」
今日はいろいろなことがありすぎた。そんな事を考えながらため息を漏らした。
「これから俺はどうなっちまうんだか⋯⋯」
もう一つため息をつき、そのため息を最後に火野は眠りについた。
今回はほぼ説明回だったのでいろいろと混乱すると思います
申し訳ない
ちなみにカイトは赤髪、カラスは紫がかった黒、アツキはグレーに近い銀髪です




