第28話【現れし闇】(探索編その2)
滅多に声を出さないノーメンに対し翠色の瞳を見開き飛び起きるように反応するセリエ。
「そう!!俺が言いたいのは、そこなんだよ。明らかにヤバイのがこの渓谷にいるってわけ!!」
マスク越しに微かだが視認できる、芋虫の亡骸を指差しながら熱弁を繰り返す。
「もし倒した奴が精霊付きであれ、level-Ⅳであれ、俺達でもこの位の奴なら倒せる……って言いたいんだけど、何せここまで綺麗な闘いを見せられたら気になっちゃうわけよ?」
セリエは珍しく興奮気味に返答すると、耳障りだと思ったのか「いいから先へ行くぞ」とハンドサインを出されまた無視される。
再び手の平から子犬を出し、松明代りにするが混ざりあった闇の中では正気を保たなければ何処までも呑み込まれそうな【深淵の闇】が辺りを取り囲んでいた。
「相変わらずノーメンの旦那は、お堅いなぁ~。暇だからその犬ちょっと貸してよ!!」
通常は人肌程の温もりがある子犬に近づくと、強引に抱き寄せようとしたが余程嫌なのか唸り声を上げ威嚇を繰り返すと、体温が急激に上がったことにより体から水蒸気を発する。
(やはりここには、僅かだが水の気配があるな……つう事は、居るとしたら【水の精霊】って奴か。まぁ、【時の精霊】よりかは楽勝だな……)
「ところでノーメンの旦那……燃えてるけどそれ熱くないの?」
セリエの一言に直ぐ様反応を示し、子犬と相思相愛の様に目で会話をするとお互い小さく頷き協会特注の【耐炎手袋】を見せびらかしてきた。
「良いだろ、スゲーだろ!?」と言わんばかりの身振りや表情をしている。
(マスクしてるし、暗いから分からないが彼の性格上恐らくそうだろう)
僅かに漂う水の匂いを頼りに歩みを進めるが恐らく【危険度level-Ⅲ】クラスが、今もこの渓谷を闊歩しているだろう。
無駄な戦闘と魔力を温存したいセリエは、亡骸に息を吹き付けると小さな風が芋虫を包み込み、半身程の巨体はものの数秒で手のひらサイズのガラス玉に変化し、照りつける炎にかざすと、体液が結晶化され淡い深翠色の宝石が輝いてるのが分かる。
周囲を蛍に似た光の粒が飛び交う様を見ながら、立ち尽くすノーメンは、美しいガラス玉に目が釘付けになっていた。
「これなんだと思う?」とセリエは、悪戯好きの子どもみたいな笑顔を向ける。




