第29話【現れし闇】(蟲毒玉編その1)
古代から伝わる言葉で【蟲毒】という物がある。
1つの容器の中で毒をもった数十種類もの生物を幾数も混ぜ合わせ、共食いをさせた後に生き残りを【神霊】として祀ったと言う話だ。
それと同じ状況を暴君殺戮芋虫は母親の体内で孵化した時から、【孤独】な闘いを強いられている。
中には、数万もの卵が外へ出ることを待っており、他の種からの捕食等はまず起こり得ないが、だからと言って決して安全ではない。
1分1秒と時を刻む中で先に外へ出たものがまず初めにすることは、同じ母の元で生まれし兄弟達の【捕食】と、体内にある毒をより強力な物にするための【蓄積】だ。
卵から帰らぬ者は無抵抗のまま養分となり、孵化出来たとしても安心は出来ず、共食いを繰り返してきた猛者達が次に狙うのはより強い個体を己に取り入れることだ。
母親の体内で繰り広げられる生き残りを賭けた死闘は、時として数日にも及ぶとされており、選ばれし数匹の個体は体外へ出てもその行為は変わらず、他種を捕食し体内で蓄積された毒をより強固たる物に変えていくのだ。
炎により眩い光を放つ玉を愛しそうに撫でながらセリエは説明をする。
「まあ、要はあれだよ。100Mクラスにもなると数百もの獲物を捕食し、その毒はまさに兵器と呼ばれる代物になる。それを凝縮、圧縮したのが、この【蟲毒玉】って訳。わかったかいノーメンさん?」
【毒】と聞いた途端、一瞬にして数M距離を取ったがしつこく宙を飛び回るセリエを撒けずマスク内で深いため息をつくと、年長者として、先輩として説明を聞いてあげることにした。
「そんなに嫌がらなくていいじゃんよ。俺等にとっては、まさに御守りって奴なんだぜ?ニッシャの子犬で広範囲を照らすことにより、採取した奴より戦闘力で劣るものはまずやって来ないし、何より協会への手土産が出来たから一石二鳥って事よ」
説明を大人しく聞き、一瞬頭の中で「?」が積み重なるが、いつの間にか夢中でその光景に見入っていた。
長々と熱弁をしたセリエでも直接手では触れたくないのか、風魔法で浮かしており、まるで地球儀の様に回転する球体は、堅固な岩肌とどこまでも続く闇の中、渓谷に幻想的な命の物語を映し出しているようだった。




