授業
時間は午前10時30分、ホワイトボードに書かれた内容を、手元にあるノートに書き写していた。
「はーい、みなさん、書き終わりましたか?、そろそろ、消しますよ!」
俺のクラスの担任である、浜村先生がそう言った。中には、必死になって写しているものや、全然、やる気が無さそうにしているもの、そして、寝ているものもいるな。
子供に取って、勉強というのは酷な事だよな、いくら、大事だと言ってもみんながみんな自らの意志でやる訳じゃないだろうしな、それにしても小学校の先生って大変だよな、俺の担任である浜村先生にしたって一体、何個、授業受け持っているんだろうか?、しかも、言うことを聞かない子供達ばっかりだしな。
「みなさん、ちゃんと写しておかないと、次にやる小テストで良い点が取れませんよ!、もう!、また寝ている子がいますね、しょうがないですね!」
そう言うと浜村先生は寝ている子を起こしに向かった。
浜村先生という人は基本的には怒らない、俺もいまだに浜村先生が怒っている姿を見たことがない、他の人達に聞いてもそうだった。
でも浜村先生は放任主義ぽい感じがするんだよな、もちろん悪い事をすれば言うし、子供が好きそうな感じもする、だが、一度注意をしても駄目だった場合は、連絡ノートなるものがあって、親に注意をしてもらうようにすぐ書くそうだ。
だから子供達はそれを知っている為、注意をされたら基本的には聞いているようだ、まあ確かに親には怒られたく無いもんな。
「では、みなさん、今日の授業のおさらいをする為に最後にテストを行います」
「えー、先生、テストは次って言ったじゃん!、なんでやるの?」
浜村先生がそう言うと、俺の後ろの席の山村圭が反応してそう言った。
この山村圭はクラスの中のお笑い担当、もしくは目立ちたがり屋だ、その割には頭は結構良いらしく、その上、スポーツもそこそこ出来る。
「次にやるのは別のテストです!、今回のテストは、今日の授業でやった所が出ます、わかりましたか?、山村君」
山村圭は何も言い返せないのか、一言、わかったと言い、みんなにテスト用紙が配られる。
ちなみに、今、俺が受けていた授業は国語だ、なんか教科書に載っている物語の主人公の感情や気持ち、その物語で出てくる新たな漢字、などなど、まあ至って普通の国語の授業という感じだ。
基本的に国語の授業の最後は漢字テストをして終わる事が多い、多分、習っていない漢字が出てくる事が多いので、ちゃんと授業を聞いて覚えたかの確認だと思うが。
「みなさんの所にちゃんと行きましたね!、いつも通り時間は10分です!、それでは始めて下さい」
そう声がかかると児童達は一斉にテストを始めた。
さてと、いつも通り手を抜きますか。出された問題は、10問、漢字の読みと書き問題だ、はっきり言って前世で37だった俺からすれば簡単すぎる問題だ。本気でやってしまったらおそらく全問正解だろう、でもそれをやってしまうと目立ってしまうので、俺は6割は正解を書いて、残りの4割は間違えるか空欄でテストのほとんどをやることにしている。
これはどんなテストであろうとだいたい一緒だ。
「はい、時間になりました!、後ろの方からテスト用紙を回してきて下さい、」
浜村先生の指示でテスト用紙が集められ、国語の授業は終わった。
そして休み時間に入り、俺は机の上に上半身を前屈みに倒して、寝てます!というアピールをしているにもかかわらず、俺に向かって声がかかった。
「マコっちゃん、テストの漢字出来た?、俺は一応、全部出来たけどさ」
後ろの方から声をかけてきたのは、山村圭だ、俺の後ろの席である。
まあ、多分、あれだな、自分が全部出来た事を自慢したいんだろう、とりあえずここは寝た振りをしよう!。
「ねえ、ねえ、どうだった?、教えてよ!」
山村圭は俺の肩を掴み、揺らしながら聞いてくる。
あーあ、ウザイな!、この山村圭と話をしているとだいたい、自慢話か人の悪口がほとんどだ、要は愚痴が多いのだ。
最初の頃は席が近い事もあり話をしていたのだか、そういう話ばっかりなので俺はもう、うんざりしていた為、あまり会話をしないようにしていたのだが、話をしないならしないでこれもまた、面倒くさい、あの手この手を使って俺と話をしようとしてくるのだ。
全く、たちが悪い奴だ。だか、小6の男ごときに、こっちが感情を出しても疲れるだけなので、適当に受け流すようにしている。
「何だよ!、寝ようとしてたのに、あー、テストか、テストはな、多分、6割ぐらいは出来たんじゃないか?」
「えー、そうなんだ、今回のテスト、まあまあだったしね!」
なんか、よくわからないが山村圭は納得したみたいで席を立って、どこかに立ち去って行った。
多分、俺に聞いてきた事を色々な人に聞いて、自分が全部出来た事を自慢したいんだろう、その辺はやっぱりまだまだガキだな。
よし、これで寝れるな!と思っていると、今度は梅宮隆が声をかけてきた。
「真、テスト、出来たか?、俺は全然、駄目だったぜ!」
はあ、なんで俺の所に来るかね?、それに出来なかった事を誇らしげに言ってこられても困るんだか、俺はなんて返せばいいんだ、全く。
「隆が出来ないのはいつも通りじゃないのか、今更、そんな事、言われても困るんだが」
「真、相変わらず、冷静だな!、ところでさ今日、学校終わったらサッカーやろうぜ!」
この梅宮隆は相変わらず、懲りずによく俺をことあるごとにサッカーをやろうぜ!と誘ってくる、いい加減、俺がサッカーをしたくない事をわかって貰いたいもんだな。
「いや、今日は帰ったらすぐ勉強するから無理だな!」
「この前も勉強って言って来なかったじゃねえか、今日はいいだろう?、なあ、頼むよ、お願いします」
目の前の梅宮隆は両手を合わせて、俺に対して拝むような感じで言ってきた。
はあー、本当に面倒くさいんだよな、でもたまには行ってやんないとこうしてウザくなるし、こいつもたちが悪い、しょうがない、今日は行ってやるか。
「しょうがないな、今日行ったら、しばらくは行かないからな!」
そう言うと梅宮隆はじゃあ、いつも通りな!と言って立ち去って行った。
梅宮隆が立ち去るのと同時に次の授業の開始を告げるチャイムが鳴った。
こうして寝ようと思ってもなかなか寝させて貰えない休み時間なのであった。