クラブ活動2
今、俺は、頭に三角巾、身体にはエプロンを着けて、ある料理の説明を受けていた。
「えーと、今回は、唐揚げです、なので油をたくさん使いますので、気をつけて作って下さい」
と、担任である浜村先生が言った。
今日は先日、俺が所属した家庭クラブ内で作る料理が唐揚げと決まり、いよいよ作る日を迎えたのであった。
食材は各々、分担で持ってきていた、俺が持ってきたのは、鶏もも肉1枚、生姜一かけ分だ。
なんでも一人、一枚の鶏もも肉は持ってくるという指示だったので、各自、一枚は持ってきていた。その他の細かいものは個人個人で割り振られていて、俺が持ってきたのは生姜だった。
「仁美ちゃん、楽しみだね!、早く食べたいね!」
「そうだね、でも今回は気をつけないと危ないよ!、油、使うんだから」
そう言って佐藤みどりと武田仁美はこれから作る唐揚げを待ちきれないとばかりに顔をほころばせた。
あーあ、本当はお好み焼きが良かったんだがな!、まあ関東の方じゃ、あんまり馴染みが無さそうだし、仕方がないといえば仕方がない、ここは気持ちを切り替えて頑張ろう。
と、思ったのだが、俺はあるものに目が行った。
調理台の上には各自で持ってきた食材、そして学校に置いてあった調味料、その中にニンニクが置いてあった。
俺は唐揚げは好きだがニンニクは嫌いだ。俺が世の中で一番嫌いなものと言っていい!、とにかくニンニクだけは駄目だ!、なんとかしなければ。
「浜村先生、俺、ニンニク嫌いなんで、俺の分は生姜だけでいいですか?」
「天野君はニンニク、嫌いなんですね!、わかりました!、天野君の分はニンニクを使わないで作ってみましょう」
ふー、助かったぜ、相変わらず浜村先生は優しいな!、有り難いぜ。
「なに、天野君、ニンニク嫌いなんだ!、なんかドラキュラみたいだね?」
「みどりちゃん、みんなそれぞれ嫌いなものがあるんだよ!」
「でもさ、唐揚げって、ニンニクとか生姜、入ってたんだね、全然、知らなかったわ!」
佐藤みどりと武田仁美のやり取りを聞いていた俺は思わず、うーん、やっぱり子供だなと思ってしまう。まあ多分、小6ぐらいじゃ、家で肉が出てきても何の肉か、わかって食べてないだろうな、ましてやどんなふうに作られて、何を使っているかまでは考えないだろうしな。
「はいはい、お話はそこまでにして調理に取りかかって下さい、まずは最初に、調味料を合わせて、そのあとお肉を切り分けて下さい」
浜村先生がそう指示を出すと、俺達は言われた通り調理を始めた。
「先生、なんかお肉、切りづらい!」
「佐藤さん、鶏肉の皮が付いている方を下にして切ってみましょう、そうすれば切りやすいと思うわ!」
「先生、調味料を全部入れたら、この白い粉も全部、一緒に入れるんですか?」
「武田さん、調味料を入れたら、まずは切ったお肉を入れます、小麦粉と片栗粉はまだ入れないで下さい」
うーん、浜村先生も色々大変そうだな、本当に、一から教えるって大変だもんな。
そして俺の方はそうこうしているうちにとっくに指示通り、終えていた。
今回のレシピは、多分、基本的な作り方だろう、俺が作る時は片栗粉だけだが今回は片栗粉と小麦粉を両方使う感じか、でもその方が良いような気がする、なんか、昔、テレビで小麦粉を付けると鶏肉をコーティングして旨味が逃げないとか言っていたような、そしてさらに片栗粉を付けると表面がパッと仕上がるから両方使う方が旨く出来るって言ってたな。
「はい、じゃあ出来ましたね、あとはそのまま鶏肉を30分ぐらい漬けて置きます」
「先生、何で、30分も漬けとくんですか?」
「はい、佐藤さん、良い質問ですね!、何でかというと鶏肉に下味を染み込ませる為です、そうしないと美味しくなりません!」
佐藤みどりはそうなんだ、みたいな顔をしていたが、確かにその通りだ、唐揚げは下味次第だと思う。最近は唐揚げ粉という万能なものがあるが、基本はやっぱり、ちゃんと味を染み込ませるのが唐揚げを作る時の大前提だ。
そして鶏肉を漬け込んで15分ぐらい立った時、浜村先生から次の指示があった。
「はい、みなさん、そろそろ揚げ油の準備をしましょう、置いてあるフライパンの7割ぐらいまで油を入れて下さい」
そう言われ各自、目の前のフライパンに油を入れていく。
ちなみに一人、一個のフライパンを使い各々で調理している。
最初、俺はフライパン一個で揚げ油を作り、それを3人で使うのかと思ったのだが、なんでも経験させる事が大事だとのこと、だそうだ。つまりはほとんど一人で作っているのと変わらない。
「油を入れ終わったら、火をつけて中火にして、しばらく待ちます」
さてと、どうするかな、このまま言われた通り作っても多分、美味いと思うが、俺は二度上げしたカリッとした感じが好きなのだ、ここは一つ俺なりに作らさせてもらうか。
「浜村先生、俺、二度上げしたいんですけどいいですか?」
「え、天野君、よく二度上げなんて知ってたね!、もしかして唐揚げ作ったことあるの?」
「いえ、ないですが、親が作るのを見てて、それを真似してみようかなと、思いまして」
「そんなんだ、まあ、これは調理実習だから、ある意味、好きなようにやっても良いのよ、でも油の温度が高いから充分に気をつけるのよ」
よし、これで浜村先生の了承は得た、これで俺が好きな唐揚げが作れるな。
「それでは、漬け込んでいたお肉に、小麦粉を最初に入れて、その後片栗粉を入れましょう」
浜村先生の指示通り、みんな黙々と調理をこなす、揚げ物=危険という意識があるのか佐藤みどりと武田仁美は段々と口数が少なくなっていった。
「では、温度計で油の温度を計って下さい、温度が170度になっていたら、ゆっくりと一個ずつ、静かに落とすように入れて下さい」
浜村先生の指示は170だか俺は180で揚げようと思っていた、俺がやろうとしている方法はまず、180度で1分30秒ぐらい揚げてから取り出し、そのまま4分ぐらい余熱で火を入れる、その後、もう一回、180度で今度は40秒ぐらい揚げてから取り出せば完成だ。
「では、温度が170度になった人から入れて、そっから4、5分そのままにして、色が狐色になったら取り出しましょう」
「きゃあ!、油がハネた!、なんか怖い」
「みどりちゃん、ゆっくり入れないと危ないよ!」
「佐藤さん、もっと慎重に入れなきゃ、駄目でしょ!、油が飛んできたら大変なんだから」
浜村先生と女子二人はそんなやり取りをしていた。浜村先生は俺の方は大丈夫だと思ったのか、今は女子二人の方に付きっきりで見ていた。
その後、無事に各々で唐揚げを完成させ、試食をしていた。
「あー、美味しい、本当に美味しいわ!」
「みどりちゃん、そんなに急いで食べなくても、いいんじゃない!」
二人の女子は美味しそうな笑顔で食べていた。うん、やっぱり美味いものを食べる時は大人も子供も笑顔になるな!、俺も自分で作ったものを食べて、あまりの美味しさに久々に感動した、やっぱり、唐揚げは出来立てじゃないとな。
その後、浜村先生が唐揚げを作っただけで揚げ油を捨ててしまうのはもったいない!、と家庭科室の冷凍庫の中から冷凍のフライドポテト、チキンナゲット、フライドチキンなどを出してきて、それを3人でまた揚げて食べたのであった。
しかし、何故、浜村先生はあんなものを用意していたのだろうか?、浜村先生は我先にとどんどん食べていた、途中から俺達3人はもう食べられなくなってしまい、結構な量が残っていたのだか、浜村先生が残すのはもったいないと言って一人で食べてしまった。なんというか、凄かった。
ふうー、しばらくは揚げ物はもう食べたくないな、俺はそう思うのであった。




