リサ
身体を洗い流したあと湯船に浸かりながらある人物のことを考えたいた。
私は、天野リサ、小学5年生です。最近色々環境が変わって大変だったけどようやく落ち着いてきた。でもその中でどうしても気になることがあるの、なにかっていうとそれはお兄ちゃんのこと、なんーか今までと違うんだよね。
お兄ちゃんはジャングルジムから落ちて頭を怪我しちゃって3ヶ月ぐらい意識がなかったんだけどちょっと前に目が覚めたんだよね、私もそれを聞いた時は本当に嬉しかった。
まあよく口喧嘩や言い争いはしてたけどやっぱり家族は大事だもんね。
なんだかんだ言っても私はお兄ちゃんが大好きだと思う、恥ずかしくて誰にも言えないけど。
そんなお兄ちゃんなんだけど、なんーかおかしいんだよね、どこがどう?ってわけじゃないんだけど、モヤモヤするんだよね。
一言でいうと優しくなったと思う、私に対する態度がお父さんと似てるんだよね。
お母さんはよく私にうるさく色々言ってくるんだけど、お父さんは私が色々ワガママ言ってもなんだかんだで許してくれる。でもよく私に構ってきて、正直たまにめんどくさい時があるんだよね。
その辺がわかってくれればなあ、と思う。
だからとにかくなんか、お兄ちゃんお父さんに近いんだよね。
そうかと思えばさっきは急に洗濯するとか言うし、私が自分の部屋で漫画を読んでたらなんか、掃除機の音とかも聞こえてたし、多分リビングとかを掃除してたんだと思う
あと、ちょっと前に一緒にスーパーにお昼を買いに行ったとき、ずうっと、どのお弁当にするか悩んでたな、最後は私のところにきてお金まで借りてきてたし、まあ200円だからいいんだけど。
前のお兄ちゃんだったら部屋の中は汚いし、私のお菓子とかも勝手に食べちゃうし、まあその仕返しにお兄ちゃんのケーキ食べたけど、あの時は凄い怒ってて怖かったな。
まあ、色々思うことはいっぱいあるけど優しいお兄ちゃん、なんかいいな。
と、顔をほころばせると湯船から出てお風呂を終えるリサであった。
ふと時計を確認すると時刻は19時近くになっていた。
夕食を作り終えると同時に洗濯も終わったのですぐさまベランダの方に向かい干洗濯物をし終わった。
そうしているとリビングに向かって足音が近づいてきた。
「あーなんかいい匂いがする、あれご飯が出来てる、なんで」
妹のリサが軽く興奮する感じで声を発した。
「おー出てきたか、ちょうど夕食が出来たところだ、すぐ食べられるぞ」
「えー、なにこれ全部お兄ちゃんが作ったの?、すごいじゃん、もう私お腹が空いちゃって我慢できなかったから、すぐ食べる」
リサは先ほどお風呂の中で色々考えていたが、そんなことはもうどうでもいいと言わんばかりで用意されている目の前の料理にくぎ付けになっていた。
そうして俺達は夕食を食べる為に席に着いた。
「いただきます!」
そう言うとリサはおもむろに食べ出した。
ちなみにリサは好き嫌いは基本的にはないらしい、でも一番好きなのはグミらしい。なるほど、やっぱりその辺はまだまだ子供だな、だけどリサぐらいの歳で嫌いなものがあんまりないというのは偉いな。俺の昔から比べれば考えられんな。
前世の俺は小さい時は好き嫌いが多かったと思う、野菜や牛乳、生魚、まあ色々あった。
「えーなにこれ美味しい!、でもなんでお兄ちゃんご飯作れたの?、今まで作ったことなかったじゃん」
「ほら、そこにさ料理の本があるじゃん、それ見て作ったんだよ」
俺はすかさずさっき考えた予定通りの返しをする。
「へえーそうなんだ、すごいじゃん、私なんか見たってよくわからないのに」
そう言ったリサは目の前の料理を黙々と口に運んでいった。
だがあれだな、こうして自分が作った料理を食べてくれる人がいて、それを美味しい!と言って貰うのは本当に嬉しいな。
俺は料理を作るのは好きだが、誰かに食べて貰う料理を作ってきたわけじゃないから、なんかこういう感覚は初めてだな。
これは俺の持論だがよく料理は手間暇をかける、と言うけれど手間暇かけて作ったって食べる人は食べるし、食べない人は食べないと思う。
要は俺も含めて食べる相手に合わせて作ればだいたいなんとかなると思う。
でも今回はリサの好みに合わせて作っていないにもかかわらず、こんなにも美味しそうに食べてくれるとは、なんか泣きそうになるな。
なんかこの天野真という身体になってからどうも、涙腺ゆるいな。
「あー美味しかった、お腹いっぱい、お兄ちゃんがこんな美味しい料理、作れるなんてなんか不思議」
「いやいや、これからはな男でも料理ぐらい出来ないとダメなんだぞ」
と、俺は冗談っぽく言う。
でも実際はその通りだと思う、今の現代社会において昔ながらの考えで料理は女性がするもの、と言うのはハッキリ言って通用しないだろう。
とまあ俺が偉そうなことはいえないが。
「じゃあ私は将来結婚したら、旦那さんに料理、作って貰う」
「いやいや、リサも多少は料理が出来た方がいいと思うぞ、男って言うのはな、料理が出来る女性には弱いんだよ」
「ふーんだ、料理なんか出来なくてもいいもん」
その後リサと軽い談笑をしながら夕食を終えた。
リサは夕食を終えるとそそくさと自分の部屋に戻って行ってしまった。
だいたいやることはもうやったので俺も風呂に入ることにした。
しかしこの追い焚きとういうのは本当に便利だな、俺は前世ではずっと独身だった為、湯船に浸かるというのはほとんどしなかった、だいたいシャワーで済ましていた。だから風呂と言っても俺の場合はシャワーの為、5分で済んでしまう。
でもこの追い焚き機能を知ってからは湯船に必ず浸かる、やっぱり最新の機能は便利だよな。
そして風呂から上がり、リビングにある50インチのテレビをソファーに座りながら見ていた。
「ただいま!」
玄関の方から声が響いてきた。多分、母親だろう。
さてと、上手く話してなんとか切り抜けよう。




