第26話:え-、そんなすごい人だったの?.
「実はね、冒険者ギルドで大型魔物の討伐依頼を受けたんだけど……相手がかなり大きいのよ。私一人じゃ倒した後の素材を持ち帰るのが大変なの。そこで、この前見せてくれた陸くんのあの頼もしい腕っぷしを頼みたくて来たの。素材運びを一緒に来て手伝ってくれないかしら?」
「え、あ……はい! 僕の力で役に立つなら、喜んでお引き受けします!」
頼りにされたことへの誇らしさ、何よりあの憧れるほど美しいルナと二人で街の外へ出かけられるという大きな喜びが胸いっぱいに広がり、陸の返事は自然と熱を帯びていた。
地球重力下で鍛え上げられた高密度な筋肉と骨格、を持つ陸にとって、この世界で重い魔物の素材を運ぶ作業なんか造作もないことだ。だが、そんなこと以上に、ルナから「陸くんの腕っぷしを頼りにしたい」とまっすぐ見つめられて頼んでもらえたことが、たまらなく嬉しかったのだ。
「あ……それとルナさん、よかったらこれ飲んでみてください。今作っていたスープなんです」
陸は小鍋で煮干しをさっと乾煎りし、香ばしさを引き出してから注いだ水を沸かして塩をひとつまみ効かせた出汁スープを木のカップに汲み分け、ルナへ手渡した。
「あら、ありがとう。……んっ! なにこれ、すごく美味しい……! 魚のスープ?でも魚の嫌な臭みが全然なくて、旨味が身体の隅々まで染み渡っていく感じがするわ……!」
スープの美味さに感動してうっとりと感嘆の息を漏らすルナの姿すら絵画のように美しく、陸は
「落ち着け自分」
と心の中で必死に言い聞かせるのだった。
大型魔物の素材回収と荷物持ちの依頼を引き受け、準備を整えた陸とルナは、新居を出て街の大通りへと向かった。ルナは再び深々とフードを被り、顔を隠して陸の隣を歩いている。
「手伝ってくれて助かるわ、陸くん。ギルドから報酬が出たらちゃんとお礼するからね」
「いえいえ、僕の方こそルナさんには助けてもらってばかりですから!」
そんな会話を交わしながら大通りを歩いていた、その時だった。
建物の隙間から、強い一陣の風が吹き抜けた。
「あっ……!?」
被り直していたフードの隙間を突かれ、風によってフードが大きく後ろへめくり上げられた。
その一瞬——ルナの異次元の美貌が大通りの白日の下に晒された。
その瞬間、周囲の喧騒がピタッと途絶えた。
通りがかった行商人、腕利きの冒険者、そして市場で買い物をしていた同族のエルフたちまでもが一斉に足を止め、息を呑んで硬直した。
「おい……今の顔、見たか……?」
「あの美貌は……エルフという領域すら超えているぞ……」
「間違いない……あの類まれなる美貌……!エルドリアの至宝との二つ名をもつ、
Aランク冒険者にして 『エルドリア聖樹王国』の第三王女、ルミナス・エルドリア殿下だ……!」
静寂のあと、波のようなざわめきと驚愕を含んだ声が周囲から一気に広がり始めた。
「あっ、いけない……! 行こ、陸くん!」
ルナは慌ててフードを被り直すと、陸の袖をキュッと引っ張って足早に走り出した。
引かれるままに走りながら、陸は冷や汗を流して心の中で絶叫した。
(ひええええっ……! エルフなだけでも驚いたのに……『エルドリアの第三王女ルミナス』って何!? 僕、とんでもない雲の上の人と知り合っちゃったんじゃないの……!!)
あまりのスケールの大きさに驚愕しながら、陸とルナの新たな依頼が幕を開けるのだった。
大通りの喧騒と人々の視線を振り切るように、ルナは陸の袖を引っ張って路地裏へと滑り込み、そのまま街の外へと続く静かな脇道へと抜けていった。
背後のざわめきがようやく遠のき、人通りの少ない街道沿いの木陰まで辿り着くと、ルナはほっと安堵の息を漏らして足を止めた。
「ふぅ……びっくりした。急に走らせちゃってごめんね、陸くん」
「い、いえ! 全然大丈夫ですけど……」
呼吸一つ乱れていない陸だったが、その顔には冷や汗が流れていた。二人が並んで歩き始めると、陸は喉をゴクリと鳴らし、ずっと胸につかえていた疑問を意を決して口にした。
「あの……ルナさん。歩きながらで申し訳ないんですが……さっき風でフードがめくれた時、周りの人たちが『エルドリアの第三王女ルミナス殿下』って叫んでましたよね……? ルナさんって、本当に……雲の上のお姫様なんですか……!?」
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ルナは実はエルフの王国の王女様でした。これから二人の冒険はどうなっていくのか。
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