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第15話:美人と食事? 嬉しいけど、緊張する

「えっ……お、お食事ですか……!?」


 ルナからの思いがけない誘いに、陸は思わず足を止めて固まってしまった。


(どっどうしよう……! これまで彼女なんて一度もできたことがない僕が、こんな次元の違う絶世の美人と二人で食事なんて行っていいのかな……!? 緊張して上手く喋れなかったらどうしよう……)


 実家と学校とアパートを往復するだけの生活だった陸にとって、年上の綺麗な女性と二人きりで食事に行くなど未知の体験すぎる。ドギマギと挙動不審になりかけ、胸をバクバクと高鳴らせながら葛藤する陸だったが、ルナはサファイア色の瞳をきらめかせて楽しそうに陸を見つめていた。


「陸さん? お忙しいかしら?」


「あ、いえっ! 忙しくないです! 僕でよろしければ……喜んでご一緒させてください!」


「よかったです! それじゃあ、美味しいと評判の落ち着いたお店を知っているので、行きましょう!」


 舞い上がるような嬉しさと、ドキドキとした緊張感を抱えた陸は、ルナの案内に続いて落ち着いた石造りのレストランへと足を踏み入れた。

 ◇

通されたのは、木の温もりと柔らかい光に包まれた静かなテーブル席だった。ルナがフードを被ったままメニューを陸に見せてくれた。


「陸さん、遠慮しないで好きなものを頼んでくださいね」


「あ、ありがとうございます……! でもよくわからないので、おすすめの料理を頼んでいただけませんか?」


「うふふ、わかりました。 すみません、こちらのグルド鳥と野菜のグリル、それに麦パン、野菜スープを二人分お願いします」


 注文を終え、料理が運ばれてくるまでの間、陸は前々から気になっていた異世界のことについて尋ねてみることにした。


「あの、ルナさん。さっきボルツさんが『Aランク冒険者』って仰ってましたけど……冒険者って、普段はどういうことをされているんですか? 僕、このあたりのことにすごく疎くて……」


「あら、冒険者のことですか? ふふ、なんでも聞いてください!」


 ルナは心地よい声で、冒険者ギルドやランクの仕組みについて分かりやすく教えてくれた。


「冒険者ギルドというのは、魔物の討伐や素材の採取、それに街や人の護衛といった依頼を仲介してくれる組織なんです。ランクはFからSまであって、実績を重ねると上がっていくんです。」


「へぇぇ……! ランクによって受けられる依頼が変わるんですね」


「ええ。たとえばFやEランクだと小さな害獣や狼の討伐、薬草の採取が多くて、BやAランクになるとワイバーンや巨大なゴーレムといった強い魔物の討伐、それと私みたいに危険なダンジョンの最深部へ入る依頼なんかも受けるようになりますね」


「ワイバーンとかゴーレム……! ルナさんって、そんな凄まじい魔物が出るところで戦ってるんですか……!?」


「ふふっ、こう見えて弓と剣の扱いには少し自信がありますから」


 見た目の可憐さからは想像もつかない凄腕冒険者としての話に、陸は感心して目を丸くするばかりだった。

 ◇

 やがて、芳醇な香りを漂わせた厚切りのグルド鳥と野菜のグリル、温かいスープ、焼きたての麦パンが運ばれてきた。


「美味しそうですね! いただきましょう、陸さん!」


「はい、いただきます!」


 陸はナイフで柔らかい肉を切り分け、口の中へと運んだ。グルド鳥は地球のチキンと似ていてジューシーな肉汁と絶妙な火入れでとても美味しかったのだが、一口、二口と噛み締めるうちに、陸の胸には小さな物足りなさが残った。


(ん……やっぱり、美味しいんだけど塩味だけなんだよな)

 

肉の旨味を引き立てる塩加減は素晴らしいのだが、醤油の深い香ばしさも、出汁のコクも存在しない。古いアパートで質素な自炊をしていた頃の味が、どうしても恋しくなってしまったのだ。


「陸さん? どうかしました?」


「あ、いえっ! すごく美味しいです! ただ……僕の故郷には『醤油』とか『出汁』っていう、料理の味を引き立たせる調味料があったんです。このお肉もすごく美味しいんですけど、もし醤油があればもっと美味しくなるのになぁって……ちょっと恋しくなっちゃいまして」


「しょうゆ……? そんなに凄い調味料があるんですか?」

 

初めて聞く言葉に、ルナは不思議そうにサファイア色の瞳を瞬かせた。


「ええ。大豆や魚を発酵させて作るんですけど、ひと垂らしするだけで料理の味がガラッと変わるんです。だから僕、今日市場に来たのも、醤油の代わりになる『魚醤』っていう調味料を作る材料を探すためだったんです」


「魚醤……! 魚と塩だけで、そんな凄い調味料ができるんですか!?」


「はい! 魚の酵素で分解させて旨味を出すんです。もしうまく魚醤が作れたら……ルナさん、今度ご馳走しますよ!」


 陸がどきどきしながら、少し恥ずかしそうに提案すると、ルナはぱっと表情を明るく咲かせた。


「 陸さんの作るその『魚醤』を使ったお料理、私、絶対に食べてみたいです!」


ここまで読んでくださり、ありがとうございます。ルナの気さくさにドギマギする陸です。もし面白いと思っていただけましたら☆や登録をしていただけるとありがたく思います。

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