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第49話 圧倒的な格差

「あ、あ、ああ……助けてくれ! 頼む、助けてくれぇぇ!!」

「殺さないで……っ、後生ですから! 金でも装備でも、なんでも差し出しますからぁ!!」


 かつて王都で喝采を浴び、無敵の名を我が物としていた勇者パーティの面々は、今や見る影もなかった。泥と強酸のお酢にまみれ、泡を吹きながら、震える手足で必死に地面を掻き毟り、その場から一歩でも遠くへ逃げ出そうとしていた。

 そこへ、騒ぎを聞きつけてログハウスから出てきたのは、寝癖がついたまま目をこする、綿素材の寝間着姿のテオだった。その後ろからは、同様にナイトウェアに身を包んだエリナ、そして寝ぼけてふらふらしているティアが付いてくる。


「ん……なんだか外が騒がしいと思ったら……。ポチ、ロボ、どうしたの? まだ夜明け前だよ」

「あら……。不快な害獣が紛れ込んだと思ったら、アレクさんたちではありませんか。どうしたんですか、そんなドブネズミにさえ同情されるような汚らしい格好で」


 エリナが、以前のような聖女の仮面さえ付けるのを忘れ、ゴミ袋でも見るかのような冷徹な目線で、足元の泥にまみれた彼らを見下ろした。

 テオは彼らの姿を認め、一瞬だけ、かつて同じ道を歩んでいた頃の記憶が去来したことで少しだけ驚きに目を見開いたが。……その直後、まるで道端に落ちている石ころでも見たかのように、興味を完全に失ったようにして大きなあくびを一つした。


 かつては、この人たちの背中を見上げ、その力に憧れ。そして同時に、彼らの気まぐれな評価に一喜一憂し、追放された時は絶望に震えていた。

 けれど、今のテオの目に映る三人は、あまりにも小さく、色褪せ、惨めな敗残者にしか見えなかった。彼が農場で手に入れた、大地と共に生きる圧倒的な肯定感と実力。それと比肩させたとき、彼らが振り回していた「力」は、あまりにも底の浅い、壊れやすい玩具のように思えたのだ。


「悪いけど……すぐに帰ってくれるかな。ポチたちも興奮しちゃってるし、あまり長くここにいられると、畑の作物の土壌に悪い影響が出るかもしれないんだ。それに、僕は明日は朝早いんだよ。新しい種類の小麦の脱穀計画を立ててるんだ」


 怒号でもなければ、積年の恨みによる罵倒でもない。

 テオの口から漏れたのは、ただただ純粋な「無関心」であった。

 「君たちはもう、僕のこれからの人生に、一ミリも関係のない単なる他人にすぎないんだよ」という残酷な事実の提示。

 それが、アレクたちの肥大化したプライドと歪んだエゴを、どんな極大攻撃魔法よりも深く抉り、その魂を粉々に打ち砕いた。

 彼らは、この瞬間にようやく理解してしまったのだ。

 もはや自分たちは、復讐すべき敵ですらなく、再会を喜ぶべき仲間でもない。ただの仕事の邪魔をする「害虫」か、あるいは処理に困る不快な「汚れ」としか見なされていないのだということを。


「……ッ、う……う、うわぁぁぁぁぁ――ッ!!!」


 アレクは、魂の底から絶叫を上げた。それは恐怖、屈辱、そして自分たちが捨て去ったものがどれほど巨大で尊いものだったかを突きつけられたことへの、救いようのない絶望の発露だった。

 彼は半狂乱のまま、四つん這いになりながら、ガントンとミランダの腕を強引に引きずって、来た道を闇雲に転がり落ちるように逃げ出した。

 もう二度と、この深層の楽園に近づくことはないだろう。……いや、恐怖が彼らの骨の髄まで、その存在を刻み込んだ。

 地上に戻った彼らがその後どうなったのかを、テオたちが知ることはなかった。……というより、誰一人として興味を持たなかった。借金取りの追跡から逃げ惑うのか、あるいはすべてを失って田舎の土下座生活に甘んじるのか。いずれにせよ、彼らの物語はここで完全に絶たれたのである。


「……ふぅ。驚いたね。あんな場所まで、執念だけで降りてくるなんて。……エリナ様、おやすみなさい。ポチ、ロボ、夜通しの見張り、ありがとう」

「はい、こちらこそ。おやすみなさい、テオさん。ふふ、嫌なものはすべて夢と一緒に忘れてしまいましょう」

「ワンッッ!!(テオもゆっくり寝てね! 後は僕がちゃんと掃除しておくワン!)」


 テオは優しくポチの頭を撫で、ロボに軽く手を振ると、何事もなかったかのように温かい自分の家へと戻り、心地よい寝床の中に再び潜り込んだ。

 農場の夜は、何一つ変わることなく、再び深い静寂と作物の微かな呼吸音に包まれていった。

 過去を完全に清算し、テオたちのスローライフは、より強固で平和な幸福感と共に続いていくのだった。


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