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第20話 ログハウス完成パーティ

 エリナがたった一人で、命懸けの死闘を繰り広げているその頃。

 地下50階層のテオとティアたちの拠点では、まったく正反対の光景が広がっていた。

 盛大な、ログハウス完成お祝いパーティが開かれていたのである。


「かんぱーい!!」


 完成したばかりのログハウスの広いウッドテラスで、テオ、ティア、ポチ、そしてロボが、冷えたトマトジュース(と、テオ用には氷で冷やした麦茶)を入れたコップを高々と掲げた。

 ついに僕たちの家が完成したのだ。

 2階建て、広々とした3LDK、リビングには温かい暖炉、使い勝手の良いアイランドキッチン、そして地下には食材を新鮮なまま保存できる巨大な貯蔵庫付き。

 ガントンから譲り受けていた建築技術書を参考にした頑丈な構造に、ティアの付与魔法による結界、ロボの精密作業による仕上げが結集した、文字通りの傑作だ。


「いやー、いい家だね! これなら100年は余裕で住めるよ」

「ふふん、当然だ。甘いぞテオ。我が魔力を込めた多重結界もあるからな。100年どころか1000年は持つ! ドラゴンブレスが直撃しても傷一つ付かんぞ。地震も雷も火事も、全て無効化する最強の要塞だ!」

「ワンワン!(僕の部屋、モフモフの毛布がいっぱいで最高!)」

「ガガガ(内装ノ仕上ゲモ完璧デス。チリ一ツ、ホコリ一ツ許シマセン。毎日磨キ上ゲマス)」


 みんな誇らしげだ。

 今日のメインディッシュは、完成したばかりの耐火煉瓦製の石窯で焼いた、特製ピザだ。

 生地は、少し離れた草原エリアで発見し、品種改良して育てたダンジョン小麦を挽いた強力粉を使用。

 ソースは、もちろん自慢の【完熟トマト】を煮込んだ濃厚トマトソース。

 具材は、畑で採れたナスやピーマン、そしてポチが狩ってきたオーク肉を桜のチップで燻製にした自家製ベーコン。

 そして味の決め手は、ティアが「白い水」と呼んで怖がっていた(実はミノタウロスの乳牛種から搾乳したミルク)から作った、とろけるモッツァレラチーズだ。


「さあ、焼きたてだよ。熱いから気をつけて」

 

 石窯から取り出したピザからは、香ばしい小麦とチーズの焼ける匂いが立ち上り、食欲を刺激する。

 ティアが待ちきれない様子で、一切れを手に取った。

 びよーんと伸びるチーズ。


「……はむっ」


 一口食べた瞬間、ティアの動きが止まった。

 そして次の瞬間、頬を抑えてテーブルに突っ伏し、悶絶し始めた。


「んん~っ!! う、うまいーっ!!」


 ピザという料理を生まれて初めて食べたのだ。その衝撃は計り知れないだろう。


「なんだこの犯罪的な美味さは……! トマトの酸味、チーズの濃厚なコク、小麦の香ばしさ、そして肉の旨味……これらが口の中で複雑に絡み合い、極上の三重奏を奏でている! これを作ったテオは天才か!? いや料理の神か!? 創造神なのか!?」

「ただの農家だよ」

「いや、これは神の所業だ! 毎日作れ! 朝昼晩これでもいい! ピザこそ正義だ!」


 大絶賛だ。

 ポチも自分の皿に乗せられたピザを、ハフハフと言いながら尻尾をちぎれんばかりに振って食べている。

 ロボも食べる機能はないが、「解析中。幸福度指数上昇ヲ確認」と言いながら、嬉しそうに背中から蒸気を噴き出している。


 みんなで美味しいものを食べて、笑い合って、自分たちで作った頑丈で温かい家で眠る。

 こんなに満たされた日が来るとは、一週間前に勇者パーティを追放された時は、夢にも想像できなかった。

 絶望のどん底から、僕は最高の居場所を手に入れたのだ。


 ふと、僕はテラスから見える空を見上げた。ダンジョンの天井だけど、ヒカリゴケが星のように瞬いている。

 ふと、地上のみんなは元気かな、と思った。

 アレクたちのことじゃない。あんな連中はどうでもいい。

 いつも僕を気遣ってくれていた、あの心優しい聖女エリナ様のことだ。

 彼女も地上で、美味しい料理を食べて、幸せに暮らしているといいんだけど……。


 ドクン。


 虫の知らせだろうか。

 胸が少しざわついた気がした。

 風の音が、遠くから誰かの助けを呼ぶ声に聞こえたような。

 まさか。エリナ様はSランクパーティの一員だ。安全な地上にいるはずだ。


「気のせいか」

「どうしたテオ? 食べないなら我貰うぞ?」

「あ、食べる食べる! はい、ティアの分のおかわり」


 僕は首を振って雑念を追い払い、おかわりをねだるティアの皿に、熱々のピザを乗せた。

 今は、この幸せな時間を大切にしよう。

 そう思って、僕もピザにかぶりついたのだった。


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