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ある侍女の回想

第2章の1までの内容になります。

 私は淫魔族のイルミリア、魔族には魔大公と族長以外は家名がありませんので、何族の何がしと名乗るのが普通です。


 昨日から私は、魔王陛下であるミナフィリア様の傍付の侍女をしております。あっ申し訳ありません、「ミナ様」と呼ぶように言われておりました。


 ミナ様がお生まれになった時は、それはもう大変な騒ぎでございました。先代様が人間の呼び出した勇者の前に倒れたのが、200年も前の事でございました。その頃の私は、まだまだ、小さな子供でございましたので、あまり記憶にはございませんが、初めの10年はいないのが普通の事でしたので、誰も不思議には思っておりませんでした。それが20年経ち、30年が過ぎても魔王様がお生まれになりません。100年も経つと私達魔族は、もう魔王様は生まれないかも知れないと思うようになりました。


 その頃からでしょうか、魔王様に命令されない限りは行く事も無かった人間の国へ、食料調達の為に出向くようになったのは。魔族は魔力が無ければ生きていけません。先代様が残された魔晶石は、20年経った頃にはなくなっておりました。


 しばらくは、魔族同士で魔力の奪い合いが起きました。100年経つ頃には魔族同士では足りなくなってしまったのです。


 私達淫魔が、人間の精を生きる為の糧とするようになったのもその頃です。人間を惑わす淫魔などといわれておりますが、魔王様の魔力をいただいているうちは、人間の魔力などと言うまずいものを必要とはしていなかったのです。


 人間の国に出れば、倒されるものも出てきます。いくら強大な魔族といえども、殆ど絶食状態では戦いに慣れた人間の集団には勝てなかったのです。


 ミナ様のお生まれになるまでは、このまま魔族は滅んでしまうかと絶望にさいなまれていたのです。




 そんな時です。魔狼まろう族のゲルフ殿からの使いが、魔王様の誕生を魔王城に知らせに来たのです。


 イルファータ叔父を含む四魔大公の皆様は、初め何を聞いたか理解するのに時間が掛かってしまったそうです。魔王様のいない事に慣れてしまっていたのでしょう。


 ゲルフ殿がお連れして来ていると聞いて、謁見の間の入り口に張り付き、魔王様の魔力を感じようとしていたのは、ミナ様には今でも秘密だそうです。


 向かってくるミナ様の魔力を一番に感じ取ったのは、実は魔王城そのものでした。ミナ様は今でもご存じないでしょうが、魔王様のいない魔王城は、光の全てを吸収するような黒に染まるのです。それが、ミナ様の姿の見えない時から、見る見るうちに水晶の輝きを取り戻して行ったそうでございます。




 謁見にて、あまりにも御強いミナ様の魔力に驚いた叔父達は、生半可な者を侍女にすれば魅了されて何をするか判らないと、人選に頭を悩ませたそうでございます。


 他の魔大公の皆様はすぐには、いい者が思いつかなかったのですが、イルファータ叔父には私がおりましたのですぐに思いついたそうです。お傍に付く侍女が1人では申し訳ないのですが、居ないよりは幾分かはましと言うものです。それこそ言葉のまま、飛んで戻ってきた叔父により、急遽きゅうきょ私が、それらしい衣装をまとい、ミナ様のお召し物を用意したのです。




 私は、初めて魔王様にお会いするする緊張で、細かく震えていたかもしれません。


 衣装を準備いたしましたので、御小さい方なのは判っておりましたが、なにしろ魔王様です。ですが、そのお姿でも 叔父ですら足元にも及ばないお力をお持ちなのです。緊張しない方が無理と言うものです。


 大変緊張しながらドアをノックいたしました。


 既にお目覚めになられていた魔王様は、とても愛らしいお声で『はい』とお答えくださいました。それを聞いたとたんに、私の緊張が何処かへ消えてしまったのです。


 許可を得て入室し、天蓋のカーテンを開けた時に初めて拝見したミナ様は、急な事で何も無かったのでしょう、本当に簡単なお召し物でしたが、その愛らしさっ! その美しさと言ったらもうっ! たべ・・・・・・ゲフンッ。もとい、ミナ様のお傍に侍女としてお使え出来る喜びに、打ち震えてしまったのです。




 その後、初めての入浴の時間での事でございます。御一人で入れると仰いましたが、お生まれしたばかりのミナ様でございます。慣れていらっしゃるはずもございません。そうです、せっかくのミナ様のお美しい肢体を拝見できるこの機会を逃すなんて・・・・・・ゴホンッ。ではなく・・・魔力の制御がまだ不自由なミナ様を、御一人で入浴など大変危険です。


 入浴中のミナ様の髪やお体を洗わせていただいている時の、幸福感と言ったらもう。特に髪を洗う時にギュッと目を閉じているお顔と言ったらっ! 少々鼻から赤いものが流れてしまったのは一生の秘密でございます。




 執務室へご案内させて頂いていた時の事でございます。食事が必要ないのかご質問なさいました。


 魔王様と言うのは、お生まれになったばかりでも、いろいろな事をご存知なのだと驚かされましたが、ご自分に食事が必要ないと説明させていただくと、ひどく残念そうなお顔をされてしまいました。


 何か食事がしたいと申し付けられましたが、さすがにすぐと言うのは無理でございます。夜にならば間に合うかと思い。そのように申しますと、とてもお喜びになり。


「はい、お願いしますね」


 と仰ってくださいました。ですが、魔族というのは魔王様の為にいるのです。そのように言われては、逆に困ってしまいますので、そうお願いしたしました。


 ですが、ミナ様は


「でも私のわがままだから、やっぱりお願いしますね」


 と微笑みながら仰ったのですっ!! ああっ! もう本当になんて愛らしく美しい方なのでしょう!!


 自然と鼻から赤いものが出そうになり、慌てて上を向き鼻を抑えます。


 そんな私に、ミナ様はご心配してくださったのです。


「ミリアどうかした?」


 あっ! ミリアと言うのは、ミナ様が付けて頂いた、私の愛称でございます。


 なんとか返事をしましたが、手で鼻を押さえていたので、聞き取りにくかったのではないかと思います。ですが、ミナ様はそれ以上追及される事も無く、なんてお優しい方なのでしょう。そんなミナ様のお傍に一番に付く事が出来た幸運を感謝したしました。


 執務室への案内が終わりお茶の用意の為に退室いたしましたが、暫くの間、わが身に起こった幸運を噛み締めるため動く事ができませんでした。



 ああっ! これから毎日のようにミナ様のあんな姿やこんな微笑を拝見する事ができるなんて、もう・・・もう・・・ジュルリ・・・あっ! 申し訳ありません。ちょっと涎が。





 今日からは他に3人侍女が来る予定です。ミナ様との2人だけの時間も、もうすぐ終わりでございます。


 短かったミナ様と私だけの時間を思いますと・・・


 「はぁ」

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