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第8話:完璧な令嬢(センター)、究極のあざとさ

リナリア、シキ、メルティ、ベル。


 四人の歌声が重なったとき、その破壊力はすでに王都の壁を震わせるほどになっていた。だが、俺――カズマは、最後の「鍵」を探して、貴族街の外れにある没落した邸宅の前にいた。

 

実力うたは揃った。……だが、大衆を熱狂させ、流行を支配し、敵を『あざとく』翻弄する、完璧なビジュアル・リーダーが必要だ」

 

 俺が門を叩いた先にいたのは、かつて「王都の宝石」と称えられ、身勝手な婚約破棄によってすべてを失った公爵令嬢、クロエだった。

 

【名前:クロエ(追放された公爵令嬢)】

【歌唱:85 / ビジュアル:120(限界突破) / センス:100】

【適正:キュート・ポップ・ボーカル & 広報・衣装担当】

【備考:完璧主義すぎて周囲に理解されず、現在は『自分磨き』を誰にも見せられず引きこもっている。】

 

「……あら、レアルート家の三男坊様。落ちぶれた私を笑いに来たのかしら?」

 ボロボロのドレスを着ていても、彼女の立ち居振る舞いは気高く、そして何より「どう見られれば一番美しいか」を無意識に計算し尽くしている。

 

「笑いに来たんじゃない。スカウトに来たんだ、クロエ。……お前のその『美への執念』。泥をかけられて終わるには、あまりにも勿体ない」


「ふふ、お上手ね。でも、私にはもう何もありませんわ。ドレスも、名誉も、私を飾る宝石さえも……」


「宝石なら、そこにあるじゃないか」

 俺は彼女の喉元を指差した。

 

「お前のその、甘く中毒性のある歌声。そして、自分を最高に見せるための『あざとさ』。それは貴族の社交界なんて狭い場所で腐らせるもんじゃない。……世界中の男を虜にし、女を憧れさせる、新しい時代の『象徴アイドル』になるための力だ」

 

「……アイドル? 私が、見世物になれとおっしゃるの?」

「違う。お前が世界を『見下ろす』ステージを作ってやる、と言っているんだ」

 

 俺は彼女の前に、四人のメンバーを連れてきた。

 ロック、ラップ、幻想、ソウル。強烈な個性を持つ四人を前に、クロエの瞳にプロの「審美眼」が宿る。

 

「……リナリアさんのその髪、もっと輝かせれば舞台映えしますわ。シキさんの身のこなしは、シルクの衣装が似合うはず。メルティさんの光は……もっと色温度を下げて……ベルさんのその野性味は、あえてレースで抑えるのが……」

 

 彼女の指が、勝手に空中で衣装のデザインを描き始めた。


 そう。彼女は最高のボーカリストであると同時に、グループをセルフプロデュースできる「広報とファッション」の天才だったのだ。


「クロエ。お前が歌い、お前が彼女たちを着飾らせろ。そうすれば、お前を捨てた王子も、指を咥えて見ていることしかできない『高嶺の華』になれる」

 

「……いいでしょう。その挑戦、受けて立ちますわ。……ただし、カズマ様。私のプロデュースは高くつきますわよ?」


「望むところだ。お前のために、王都中の絹と魔石を買い占めてやる」

 

 その時、邸宅を包囲するように、彼女を「処刑」しようと企む元婚約者の騎士団が現れた。


「クロエ! 潔く投降しろ! 罪人の娘が、これ以上恥をさらすな!」


「……うるさいわね。今、衣装のコンセプトを練っているところですわよ」

 クロエが冷たく言い放つ。俺はニヤリと笑い、五人の前に立った。

 

「全員、マイクを持て。……初披露だ。お前たちを否定したこの世界を、音圧と美貌で分からせてやれ!」

 

 五人の歌声が、初めて重なった。

 リナリアの咆哮にクロエの甘い高音が重なり、シキのラップがリズムを刻み、メルティの光が舞い、ベルの重低音が大地を揺らす。


【コンプリート:アイドルユニット『PENTAGRAM』結成!】

【共鳴率:測定不能オーバーフロー

【カズマの過保護レベル:Max(一国規模の守護展開)】


 歌声の衝撃波で騎士団は吹き飛び、邸宅を囲んでいた闇が、一瞬にして光のステージへと変わる。

「……これが、私たちの……『歌』」

 五人が顔を見合わせ、初めて笑い合った。

 

「さあ、お嬢さん方。次は練習場じゃない。……王都最大の『大祭』を乗っ取りに行くぞ。俺が、世界一過保護なマネジメントで、お前たちを伝説にしてやる」

 

 カズマと五人の少女たちの、世界を揺るがすプロデュースが、今、完全に幕を開けた。

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