第9話:史上最強の「育成環境(シェルター)」
5人揃った『PENTAGRAM』。
だが、彼女たちはまだ「個」の集まりだ。
バラバラな5つの魂を1つの「伝説」に昇華させるため、俺――カズマは、王都から少し離れた静かな湖畔に、彼女たちを連れ出した。
「……カズマ様、これ……何ですか?」
リナリアが呆然と見上げる先には、昨日までそこにはなかったはずの、白亜の巨大な私邸が建っていた。
「合宿所だ。お前たちが最高のパフォーマンスを磨くための、世界で最も安全で、最も贅沢な城だ」
俺は胸を張って言った。
5人を守り、育てるためだけに一晩で魔法と私財を投じて建設させた『レアルート・トレーニング・センター』。
24時間魔力供給される最新の防音スタジオ。
ベルが全力で暴れても傷つかない竜鱗補強のダンスルーム。
メルティの演出を試すための全天候型ホール。
そして、クロエが満足するまで衣装を選べる巨大なウォークインクローゼット。
「……やりすぎですわ、カズマ様。これ、王宮の離宮より豪華じゃありませんこと?」
クロエが呆れながらも、その瞳は期待に輝いている。
「やりすぎ? そんな言葉は俺の辞書にはない。……いいか、リナリア、シキ、メルティ、ベル、クロエ。今日から二週間、お前たちはここで『寝食を共にする』。誰にも邪魔させない。食事も、洗濯も、スケジュール管理も、すべて俺がやる。お前たちはただ、自分たちの歌と、仲間の声にだけ集中しろ」
【合宿開始:PENTAGRAMの結束力 15% → ??%】
合宿初日の夜。
カズマが自ら振る舞う「栄養バランスと幸福度を極限まで計算した特製ディナー」を囲み、5人は初めて本音で語り合う。
「私……さっき、ベルさんの低音に合わせて歌ったら、自分の声がもっと高く届く気がしたの」
「……リナリアの背中、見てると。……私のステップ、もっと速くできる」
「ふふ、でも皆様、汗をかいた後の肌のケアを怠ってはいけませんわよ? カズマ様が用意してくださったこの泥パック、最高級品ですわ」
最初はぎこちなかった会話が、カズマの「お節介なほどのケア」によって、少しずつ熱を帯びていく。
だが、カズマの過保護は夜も止まらない。
「おい、ベル。冷えは喉の天敵だ。毛布をもう一枚追加しろ。メルティ、夜更かしは肌の魔力伝導率を下げる、あと10分で消灯だ。シキ、練習中に見えたあの足首の微かな捻れ……今すぐ俺がマッサージしてやる。遠慮するな、これはメンテナンスだ」
「……カズマ。お前、本当に、私たちから目を離さないんだな」
ベルが少し照れくさそうに笑う。
「当たり前だ。俺の左目は、お前たちの指先一本の震えも見逃さない。……お前たちは、俺の命よりも価値がある『作品』なんだからな」
翌朝。
地獄の特訓――もとい、カズマによる「至福の英才教育」が始まった。
カズマは5人のステータスをリアルタイムで解析しながら、一人ひとりに最適なメニューを組んでいく。
シキのダンスに、メルティの光が同期する。
ベルの咆哮を、クロエのコーラスが華やかに彩る。
そしてその中心で、リナリアの声が、4人の個性を束ねる「光」となって爆発する。
【プロデューサーアイ:解析中……】
【シナジー:『五連星の共鳴』が発動。共鳴率 120%突破!】
だが、この平和な合宿所の外では、彼女たちを快く思わない勢力が動き出していた。
5人を引き裂こうとする、各組織の「刺客」たち。
「……来やがったな。だが、この合宿所はただの家じゃない。……国家級の防御結界と、俺という『世界一過保護な門番』がいることを、身をもって知ることになるぞ」
カズマは、眠っている5人の寝顔をモニター越しに優しく見つめながら、侵入者たちを迎え撃つために静かに立ち上がった。




