表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/19

第6話:耳元で囁く、魔法の歌声

リナリアとシキ。熱い太陽と冷たい月のような二人の歌声は、地下練習場に驚くべき熱気をもたらした。だが、プロデューサーとしての俺の直感が、さらなる「深み」を求めていた。


「今のままでは、まだ『破壊力』だけだ。聴衆をトランス状態に誘い、世界を塗り替えるための『幻想』が足りない」

 

 俺は二人を連れて、王都の隅にある寂れた魔導具店へと向かった。

 そこには、棚の陰でひっそりと、壊れた魔道具を磨いているエルフの少女がいた。


【名前:メルティ(エルフ・元宮廷魔術師候補)】

【歌唱:82 / ダンス:40 / 演出:98(覚醒前)】

【適正:ウィスパー・ボーカル&VJ(視覚演出)】

【備考:声の出力が極端に小さいが、魔力波長は究極に繊細。】


「……いらっしゃいませ。……あ、あの、何かお探し、ですか……?」


 メルティの声は、耳を澄ませなければ聞こえないほど小さかった。彼女は「声が小さすぎて歌にならない」と聖歌隊をクビになり、さらに「火も出せない無能な魔法」しか使えないとエルフの里からも見捨てられた過去を持っていた。

 

「メルティ。お前のその魔法、見せてくれないか。……火を出す方じゃなく、光を散らす方のやつだ」


「……えっ? でも、これは……ただ、キラキラするだけで、何の役にも立たないって……」

 

 彼女が怯えながら指を鳴らすと、周囲に淡い、けれど透き通るように美しい光の粒子が舞った。それは俺が見てきたどの魔法よりも、情緒的で、幻想的な輝きを放っていた。

 

「……最高だ。これこそが俺の求めていた『空間演出ステージ』だ」


「え……?」


「メルティ、お前の声は小さくない。**『耳元で囁くために調整された、奇跡の歌声』**だ。そしてその魔法は、世界を夢の中に閉じ込めるための演出なんだよ」

 

 俺は、特注の『高感度魔導マイクロフォン』を取り出した。それは微細な吐息さえも拾い上げ、聴く者の脳に直接届けるASMR仕様の魔道具だ。


「さあ、歌ってみろ。歌詞なんてなくていい。ただ、その光の中に溶け込むように」

 

 メルティは戸惑いながらも、マイクに向かってそっと唇を寄せた。

 そして、囁くような、けれど甘く切ない歌声を漏らした。

「……あ、あぁ……。……ゆらゆら、揺れる、光の……海……」


 その瞬間。マイクを通した彼女の声が、リナリアとシキが作った爆音の隙間に、スッと、驚くほど滑らかに染み込んでいった。

 

【シナジー発生:『トリプル・ボーカル』の調和率 92%】

【特性:『精神安定リラックス』と『熱狂エキサイト』の同時発生】


「な、何これ……。私の声が、こんなに……綺麗に響いてる……?」

「メルティ。お前は無能なんかじゃない。このグループの『空気』を作る、唯一無二の演出家兼ボーカリストだ」

 

 俺は彼女の細い手を握った。

 だがその時、店の奥から、メルティを家畜のように扱っていた強欲な店主と、彼を支援する魔術師ギルドの使者が現れた。

 

「おいおい、勝手に俺の『道具』に触るな。そのエルフは、俺が一生ただ働きさせる契約になってるんだよ!」


「……契約、ね」


 俺は、冷笑を浮かべながら一歩前へ出た。

 リナリア、シキ、そして怯えるメルティを背中に庇う。


「カズマ様……」


「安心しろ、メルティ。お前はもう、こんな埃っぽい場所で壊れた道具を磨く必要はない。……俺がこの店ごと買い取って、お前を『光の女神』に変えてやる」


 俺は懐から金貨の袋ではなく、一枚の『営業停止命令書』を取り出した。

 

「司祭の次は、ギルドの不正か。……お前らがメルティに強いていた違法労働の証拠は、すでに騎士団に回してある。さあ、選べ。ここで俺に彼女の権利を譲渡するか、監獄の中で一生を終えるか」


【カズマの過保護レベル:Lv.3(三人同時守護・法的殲滅モード)】


 数分後。泣き喚く店主を尻目に、メルティは俺たちの仲間に加わった。


「……私、歌ってもいいんですね。……この光で、みんなを幸せに、してもいいんですね」

「ああ。お前が歌えば、世界は夢を見る。……三人揃ったな」

 

 ロック、ラップ、そして幻想。

 三人になった歌声は、もはや王都の誰にも無視できないほどの『うねり』になろうとしていた。


 「――よし。いよいよ四人目、竜族のパワフル・ボーカルを迎えに行くぞ!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ