表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/18

第3話:契約解除(ざまぁ)は計画的に

リナリアが高級宿のベッドで安らかな眠りについている頃。

 俺――カズマは、深夜の『王都大教会』の門を叩いていた。


 大理石で作られた豪奢な聖堂。だが、俺の『プロデューサーアイ』には、そこに流れる魔力カネと、中にいる連中の腐った根性が透けて見えている。


「何の用だ、レアルート家の放蕩息子。ここは迷い込んだガキが来る場所ではないぞ」


 奥から現れたのは、でっぷりと太った男――リナリアを捨てた張本人、バルド司祭だ。彼の頭上には、今日も安定の『適正:三流悪役』という文字が浮かんでいる。


「いやあ、バルド司祭。今日は折り入って『商談』に来ましてね」

 俺はわざとらしく、貴族らしい愛想笑いを浮かべた。


「商談だと?」

「ええ。先ほど路地裏で見つけた、あの『呪われた少女』……リナリアでしたっけ? 彼女の身分証と、聖歌隊としての雇用契約書。それから彼女の『今後の所有権』を、俺に譲っていただきたい」


 バルドは一瞬呆気にとられた後、下品な笑い声を上げた。


「ハハハ! あの欠陥品をか? 物好きだな。いいぞ、あんなゴミ、十万ゴルドも払えば今すぐ引き渡してやる。むしろ処分費用が浮くというものだ」


「十万……。なるほど、教会の相場では、彼女の価値はその程度ですか」

 俺はわざと深く溜息をつき、懐から一通の書類を取り出した。


「ですが司祭。それは無理というものです。むしろ、あなたが俺に『一千万ゴルド』払うことになるんですから」

「……はあ? 何を馬鹿なことを――」


「これを見てください。王国の『聖歌隊保護法』、第十二条八項です」

 俺は書類を司祭の鼻先に突きつけた。

 前世でも契約書の裏を読むのは得意だったが、この国の法律も穴だらけだ。


「『聖歌隊に所属する者は、教会の資材として適切に管理され、健康を維持されなければならない』。……さて、リナリアの今のコンディションを私自身確認したところ、重度の栄養不足に喉の炎症、そして不当な虐待の痕跡が多数。これ、王国騎士団に報告すれば、教会の補助金、全額停止ですよ?」

 

 バルドの顔が、見る間に土気色に変わっていく。

「そ、そんなものは言いがかりだ! 彼女は呪われていたから――」


「呪い? 法廷でそんなオカルトが通じると思っているんですか? 俺から見れば、彼女は『管理者の怠慢で壊れかけた、国宝級の楽器』だ。あなたは管理責任を放棄しただけでなく、彼女の歌手としての未来を奪おうとした」


 俺は一歩踏み込み、左目のプロデューサーアイをわざと鋭く光らせた。

 

「慰謝料、治療費、そして彼女の才能を一時的に封じ込めていた機会損失。……合計で一千万ゴルド。今すぐ払いますか? それとも、明日、王都の広場で『教会がいかに少女を虐待していたか』を、俺の伝手を使って大々的に広めましょうか?」

 

「ま、待て! 待ってくれ! 払えるわけがないだろう、そんな大金!」

 バルドは膝を震わせ、今にも泣き出しそうだ。

 

「でしょうね。ですから、示談案を持ってきました」

 

 俺は、あらかじめ用意していた『譲渡契約書』をテーブルに広げた。


「一、リナリアの身分権・所有権を無償で俺に移転すること。

 二、今後一切、彼女および俺の活動に干渉しないこと。

 三、彼女を『呪われている』と呼んだことを撤回し、公式な謝罪文を書くこと。

 ――これを飲むなら、慰謝料は一ゴルドまでまけてあげましょう」

 

「そ、そんな条件……飲むしかないじゃないか……っ!」

 バルドは震える手で羽根ペンを握り、契約書にサインした。

 

 ――チェックメイトだ。


「ありがとうございます。あ、ついでにこれ、預かっておきますね」

 俺は司祭の背後にあった、リナリアが大切にしていたという『古びた竪琴』をひょいと持ち上げた。

「ゴミだと言ったでしょう? なら、俺が有効活用してあげますよ」

 

 教会を出た俺は、夜風に吹かれながら王都の道を歩く。

 手元の契約書には、リナリアが完全に『自由』になった証が刻まれている。


【ミッション完了:リナリアの法的な保護に成功】

【カズマの悪評:+10(教会の敵として) / プロデューサーとしてのランク:UP!】

 

「ふう。さて、ゴミ掃除は終わりだ。明日からは、いよいよ彼女を『本物の歌姫』にするための、楽しい楽しいレッスンの始まりだな」

 

 俺は夜空に浮かぶ月を見上げ、不敵に笑った。

 前世では守れなかった。だが、この世界では違う。

 俺のアイドルに手を出す奴は、法で、金で、そして実力で、徹底的に『分からせて』やる。

 

 翌朝、目を覚ましたリナリアに「お前の自由を勝ち取ってきたぞ」と伝えた時の彼女の顔を想像するだけで、プロデューサーとしての血が騒いで仕方がなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ