第15話:過保護な休息と、五人の猛攻(アピール)
王都の一等地にそびえ立つ、PENTAGRAM専用劇場兼、超豪華邸宅。
ライブの熱狂から一夜明け、カズマはキッチンでエプロンを締め、超人的な手つきで包丁を動かしていた。
「リナリアには喉を潤す特製コンポート。シキには筋肉の疲労を瞬時に取る高タンパクジュース。メルティには魔力を回復させる薬草蒸し。ベルには……そうだな、竜族専用の超大盛りステーキ。そしてクロエには、肌のキメを整えるコラーゲンたっぷりスープだ」
5人のコンディションは、プロデューサーアイで常に監視済みだ。
だが、昨日のライブを終えてから、5人のステータスには「ある異常」が発生していた。
【リナリア:好感度:測定不能(限界突破)】
【シキ:好感度:測定不能(依存状態)】
【メルティ:好感度:測定不能(崇拝)】
……以下、全員「カズマ以外見えていない」状態。
「カズマ様、お早うございます!」
一番に現れたのは、洗い立ての髪をなびかせたリナリアだ。彼女はカズマの背中に、磁石のようにピタリと吸い付いた。
「おい、危ないぞ。火を使っている」
「いいんです。カズマ様の近くが、一番安心するから……。あの、昨日のライブ……私、カズマ様のために歌ったんですよ?」
「……知っている。お前の歌唱数値は、俺への信頼度に比例して跳ね上がっていたからな」
そこへ、シキが無音のステップで現れ、カズマの反対側の腕を確保した。
「……リナリア、ずるい。……カズマ、マッサージ。……昨日のダンス、腰にきた」
「ああ、後でやってやる。……だが、まずは飯だ」
リビングへ移動すると、そこはもはや「戦場」だった。
「カズマ様! このドレス、昨日のステージで少しだけ汚れてしまいましたの。……カズマ様に、脱がせて……いえ、脱がしていただかないと、私、夜も眠れませんわ!」
クロエが、あざとさ120%の視線で迫る。
「……カズマ、あいつら、うるさい。……私は、カズマと二人で、新しい咆哮の練習、したい」
ベルがカズマの服の裾をグイグイと引っ張る。
「……あの、皆様。……カズマ様は、私の光(魔法)が、一番落ち着くって、言ってくださいました……」
メルティが、いつの間にかカズマの膝の上に陣取ろうと画策している。
前世では「干された」プロデューサーだった俺が、今や世界最強のアイドルグループに、物理的に揉みくちゃにされていた。
「いいか、お前たち。俺はプロデューサーだ。お前たちの健康とメンタルを守るのが仕事であって、お前たちの愛玩動物になったつもりはない!」
カズマが毅然と言い放つが、その手は無意識に、ベルの頭を撫で、メルティの髪を整え、リナリアの飲み物を用意している。
「異常な過保護」は、もはや無意識の域に達していた。
「今日は一日オフだ。王都の最高級サロンを丸ごと買い切ってある。お前たちはそこで、泥のように眠るなり、宝石を選ぶなり好きにしろ。……もちろん、俺がマンツーマンでエスコートする」
「「「「「やったー!!」」」」」
5人の歓声が邸宅に響く。
彼女たちの「重すぎる愛」を受け止めながら、カズマはふと思う。
――守りすぎたかもしれない。
だが、この幸せそうな笑顔を曇らせる奴がいるなら、俺は何度でも世界を敵に回してやる。
そんなプロデューサーの決意をよそに、5人の「カズマ独占権」を巡る静かな戦争は、今日も続くのであった。




