七話
「……あれ?宗助?……と木原?二人そろってここで何してるんだ?」
まぁ曲がり角から出てきたのはいつもの格好して大きな袋を持った俺だけどな。
何も知らない顔で二人の前に出てきた俺を、二人は慌てながら返事を返してくれる。
「よ、よぉ誠!お前こそこんなところでどうしたんだ?」
「俺は裏道に入ったりするのが趣味みたいなもんだよ。そんなことよりさ、こんな人気のないところで二人っきりって……もしかしてデートか?」
「違う!」
「違うわよ!」
何でここにいるのかは分かっているのだが、ここで茶化しといたほうが普通のクラスメイトっぽいかなと思い二人を茶化すのだが、二人は照れることなく真っ向から否定。
なんか少し怒っているようにも見える。
少し茶化して怒らなくてもいいような気がするんだが。
「さ……木原とはそういう関係じゃない!そもそもこんな我が儘な女を好きになる奴がいると思っているのか!?」
「へー……あんた、そう思ってたのね?」
宗助は木原のことを名前で呼ぼうとしたのだが、俺がいることに気付いたのかすぐさま名字で呼びなおす。
木原はさっきの反応から、宗助を嫌っているような気がしていたのだが、照れ隠しだったようで、宗助の今の言葉で本気で怒っているようだ。
「あ、いや……言葉の綾っていうか」
宗助は先ほどの言葉が失言だったと感じたらしく、言い訳を捲し立てているのだが、時すでに遅し。
木原の導火線にはすでに火がついてしまった。
「宗助!あんた、今日という今日は許さないんだから!」
「待て桜!誠の前、前だから落ち着けぇえええええええ!」
「あの二人、見ている分には面白いわね」
「確かにそうだが、俺の前で暴露してよかったのかね?面白いからこっちはいいんだけど」
「二人の世界作って、吾輩たちのことは見えていないようだわ」
「その言葉は語弊があるというか、そもそもお前のことは元から見えていないだろ」
「そうね」
俺がアドラと話していても、宗助と木原は追いかけっこを続けたまま、こちらには気づいていない。
このまま目の前でいちゃつかれても困るので、俺は答えを分かっていても知らない振りして質問を再開する。
「そんで?二人がデートじゃないって言うのならこんなところで何してたんだよ?」
「え、えーと……なんて言うか」
「はぁ……このバカと出かけてたのは本当だけど、付き合ってるとかそういうのじゃないから」
「そうそう!全く!これっぽっちも!微塵も付き合っていないぞ!」
「ふん!」
「痛い!」
宗助が木原の救いの手に便乗したのだが、強調しすぎて木原が思い切り宗助の足を踏みつけた。
たとえ好意を持っていない女子でも、そこまで強調されれば怒るのは当然だと思うと内心で思い、そんな二人に追い打ちをかけることにする。
「出かけるのはまぁわかるんだが、恋人でもないのに人気が無い場所に二人と言うのはどうなんだ?」
「あっと、それはーー」
「道に迷ったのよ」
宗助があたふたとしている中、木原は迷いなく迷子になったという誰が聞いても嘘だろうという言い訳を出してくる。
しかも、本人は主張した後、とても誇らしそうにしている。
「誠、誠、あの子はバカなのかな?」
やめろ、二人には聞こえていないとはいえ、俺にはお前の声が聞こえているんだ。笑いを堪えている今、そんなこと言われると吹き出してしまいそうになるだろ。
宗助でさえその言い訳はどうなんだという顔をしている。
「あ、ああ、そうだったんだ。それじゃ……表通りまで……案内するよ」
「誠、違うから、俺はあのバカと違うから」
「宗助!バカとは何よ!今の私の完璧な言い訳のどこがバカだというの!?」
「この娘、自分で白状しちゃったわよ」
「ぶふっ!」
「違うから!俺はここまでバカじゃないから!」
「またバカって言ったわね!いい加減にしなさいよ宗助!」
俺たちはその後、騒がしくしながらも大通りに出るのであった。
翌日、いつも通りに通学路を歩いている時だった。
いつも通りの風景に、いつも通りの道の混雑具合、学生たちが仲のいい友人と登校したり、一人で登校したりするこの時に、俺はとてつもない幸福を噛み締めている。
「やっぱり誠はおかしい、吾輩が契約したというのに普通っていうのにこだわりすぎじゃないの?」
「生憎と、強力な力を手に入れたくて手に入れたわけじゃないんだ。生きているこの瞬間が素晴らしい瞬間なのだ。
力を手に入れたからと言って積極的に派手なことがしたいわけではないんだよ」
「……やっぱり誠はおかしいわ」
「そんな笑顔で言われても困るんだが、何?バカにしてるの?」
周りに人がいると言ってもこの人ゴミの中、俺だけを気にする人間などいるわけがない。
さすがに校門近くになったら返事をしてやれないが、通学路という学校と言う狭い世界とは違う場所でなら、返事をしても気にする者はいない。
だが、そんないつも通りの登校風景だったはずなのに、いつもと違う光景が校門の近くで出来上がっている。




