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六話

「それとその”鮮血”と言う名前はやめろと言ったろ」

「なら貴様の名前を教えろ!」

「友好的になったら教えてやってもいい」

「なら”鮮血”と呼ぶしかないだろ!」


 宗助は会話の途中で俺の気を逸らし、俺が掴んでいた刀を引き戻して再度斬りつけてくる。

 掴むのは力加減を間違えそうなので、宗助が繰り出す斬撃を全て避ける。

 前に刀を折った時、学校で大事なものが壊されたって凹んでたからな。


「避けるな!」

「避けなきゃ死ぬだろ」

「こっちは殺そうとしてるんだ!」

「こっちは死にたくないんだ」

「桜!」

「分かっているわよ!」


 宗助と一緒に来ていたもう一つの気配の正体は木原。

 物陰に隠れながら様子を窺っていたのは知っていたが、宗助の合図と共に俺の後ろに出てくる。


「世界を司る五行の灯よ、我が目の前にいる敵を燃やし尽くせ!《華炎》!」


 木原は俺に向かって複数の札を投げつけてくる。その札は投げられたと同時に火の玉となり、俺に向かってその距離を詰めていく。

 周りの確認をすると、避けられた後のことを考えていないのか、火の玉の射線上に俺以外に宗助までおり、宗助はお構いなしに俺に斬りかかる。


「はぁ……バカかこいつら」


 俺は声に出さなくていいとわかっていても、思わず声に出してしまう。

 幸い、二人とも俺に奇襲が成功すると高揚しているのか、俺が呟いた言葉が聞こえていないようだった。

 このまま避けるわけにはいかず、俺は少し力を出すことにする。

 火の玉に向かって右手を振るい、振るった後に火の玉よりも大きい炎の壁を形成し、火の玉を防ぐ。

 宗助が振るう刀は左手で軌道を逸らそうとするのだが、力を入れすぎてしまい、そのまま折ってしまう。

 折れてしまった切っ先は、俺が展開した炎の壁を通り過ぎて、木原に向かって飛んでいく。


「きゃあ!」


 彼女は悲鳴を上げるも、飛んできた刀の切っ先を避け、大事には至っていない。


「なん……だと!?今の奇襲は完璧ーー」

「完璧なものか、現に対応しただろ」

「このっ!」

「折れた刀でもまだ襲ってくるか」

「くっ……よくも!桜をーー」

「八つ当たりにもほどがあるだろ」


 俺は宗助の攻撃を避けながら木原の手前に、先ほど木原が出した火の玉を三個放つ。


「ひっ!?」


 自分に向かってくる火の玉に驚いて声を上げるが、体を後ろに下げていることから、頭は冷静なんだなと推測する。


「桜!すまん、平気か?」

「だ、大丈夫よ。少し油断しただけだもの」


 木原に攻撃が向かっていることに警戒したのか、俺への攻撃をやめ、木原の前に立って俺に刃を向ける宗助。

 その姿は素直にカッコいいと思うのだが、その優しさのほんの一部を俺に向けてもいいような気がする。


「これ以上やっても意味ないだろ、ここらで開放してほしいんだが」

「バカを言うな!お前が現れると碌なことが無い!今度はいったい何を企んでる!?」


 俺を警戒しながら、俺に向かって質問する宗助。

 ここで企んでいないと弁明したところで、聞く耳を持ってもらえないだろうなと思っている。

 まぁ、今はそんなことより木原だ。

 前から宗助と悪魔について話していたので、特魔に関わっていると思っていたが、不思議な力を扱えるなんて初めて知った。

 と言うのも、宗助とは遭遇したことはあっても、木原がついていることなどなかったからだ。

 札を使っているということは、陰陽術?みたいなものだろうか?

 木原の使う不思議な力について考察していると、その木原が太腿に着けているケースから札を何枚か取り出してこちらに警戒の色を示している。

 どうしてそこまで警戒するんだ?こっちは友好的に話したいというのに。


「はぁ……毎回言っているだろ。こっちは何も企んでいない」

「そこまでの力を持っているあんたをどうやって信用しろと言うのよ!」

「そもそも、こちらからは手を出した記憶は一切無い、そちらが一方的に襲ってきたんだろ」

「普通の人間が悪魔を倒せるわけはないし、仮に倒せる奴らは特魔に必ずやってくる!お前のように一人で行動するやつは何かを企んでいる奴しかいなかった!」


 どうやら俺の前にも単独行動していた奴がいた上に、そいつらのせいで俺が疑われることになっているということか?もし見つけたらぶちのめしてやる!


「そこまで言われたら警戒するのもわかるがーー」

「だが、そんなことよりお前の気配が、人間をはるかに超えていることが怪しい!」


 そこを言われたら何も言い返せない。

 今の俺、上級悪魔くらいの気配を出してるんだったわ。


「……人間が近づいているようだ。ここらで帰らせてもらおう」

「逃がすか!」


 宗助は逃げようとする俺に向かって一直線に向かってくるが、俺の手前で先ほどの火の玉を叩きつけ、煙を撒く。

 その隙に俺はその場から逃げ出す。

 先ほどまで俺がいた場所には宗助が振り下ろした刃が通り、空を切っているのがわかる。


「くそ!逃がした!」

「あんたから話は聞いてたけど、”鮮血”は恐ろしく強いわね」

「捕まえて何を企んでいるか聞きださないと」

「今はまだ難しいわ、人数を揃えないと奴を捕まえるどころか、攻撃を当てるのも無理よ」

「くっ……!」

「悔しいのは……宗助!誰か来るわよ!」

「そういえばここは迷宮じゃなかった!」


 二人は人が来るとわかった途端、手に持っているものをすぐさま隠す。

 隠したところで、曲がり角から人が現れた。


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