十五話
今日はここまで。
また明日投稿します。
昼休みまでの間は授業は問題なく進んでいた。
転校初日ということで、ダンダリアンの教科書が間に合っていないという訳で机をくっつけ、一つの教科書を二人で覗き込みながら授業を受けた。
ダンダリアンとここまで近い距離で一緒にいれば、何かしらのちょっかいをかけてくると考えたのだが、ダンダリアンは意外なことに真面目に授業を受けていた。
悪魔なのだから人間の知識など幼稚な児戯と考えているのだろうと決めつけていたが、この真剣さを前にその思いはどこかに飛んで消えてしまった。
昼休みまでの授業態度を見て、俺は問題ないと判断したのだが、問題は授業以外のことだった。
そうは言っても、ダンダリアン本人には何も問題起こっていないのだが、クラスメイトが問題なのだ。
男子からは嫉妬の視線、女子たちはありもしない恋愛話を繰り広げ、挙句の果てには俺を無視してダンダリアンと話し込んでいる。
押し付けられたとはいえ案内役の職務を全うしようと、移動教室の際に案内をしようとすれば、女子たちが先回りして案内していく。
俺としてはありがたいのだが、先ほどまでの気後れ感が無くなっているのと、朝のホームルームで担任が俺を指名する時に名乗り出てほしかったという思いが残る。
昼休みもダンダリアンが俺に食堂を案内してほしいという申し出があったのだが、いつも食堂に行く女子たちが連れて行ってしまって教室に残る羽目になった。
とはいえ、俺は弁当を用意しているので教室で食べようと考えていたのだが、
「……あれ?」
鞄の中を何回も確認するのだが、今朝作ったはずの弁当は見つからず、アドラの姿が見当たらないことに気付く。
「あいつ……普段は離れないくせに、弁当二つ持ってどこかに消えやがった」
過ぎてしまったことはしょうがないとはいえ、用意していた弁当を楽しみにしていたのもあって、そんなことわざなど知ったことかと投げ捨てて叫びだしたくなる。
しかし、叫びそうになる衝動を抑え込み、渋々と言った感じに財布を開いて中身を確認する。
一人暮らししている為、数日は銀行によらなくてもいいように財布の中に入れているのは分かっている。
「よかった小銭も千円札も残っている」
財布の中身は三万千七百二十三円入っており、高校生が普段から入れておく金額ではない。
多く入れておくとしても一万と数千円くらいで使う時くらいに引き落としすると言った感じだろう。
今日の帰りに食材の買い出しをしたいと思って引き落としたのは覚えてる。
けれど、小銭などは入っていたが覚えていないかったので確認していた。
「これなら今日は購買部でいいだろうな……食堂はあいつもいるしーー」
「しーんぎ!」
「ぬおっ!」
俺が食堂ではなく購買部に行こうと決めた時に、誰かが俺の肩に手を回す。
いきなりのことに変な声を出してしまう。
いきなり手を回してくる人物が誰なのかと視線を向けると、目が痛くなるような緑色が目を襲う。
「ぐっ……!この目に痛い色は狭間か」
「目に痛いとか言うなよ……それより購買行くんだろ?俺も一緒に行くぜ!」
「別に構わないけど」
この髪の色が緑の男は狭間京谷、俺と宗助とたまに遊びに行く珍しい男である。
宗助に近づくので何かしらの組織のものかと思ったのだが、調べてみても何も出てこないので一般人であると決めつけた。
この男の特徴は元気で友好的なところだろうか。
「それにしても新城は弁当組だろ?今日は早弁でもしたのか?」
狭間は腕を回したまま不思議そうに質問してくる。
俺は毎日弁当を食べているのでそれが不思議でしょうがないらしい。
「早弁なんかするかよ、作ってきたのは覚えているから家に忘れたんだ」
「ハハハ!それはご愁傷さん、そんじゃ急ごうぜ!早くいかなきゃ何かしら買えないぜ!」
「焼きそばパンやコロッケパンは諦めてるよ」
俺はゆっくり行きたかったのだが、狭間が急かしてくるので少し足早にして購買部に向かった。
購買部ではそこらのスーパーで売っているような総菜・菓子パンが売られているのみで、近くのパン屋のオリジナルの焼きそばパンとコロッケパンがあるだけだ。
俺はホットドックを二つ購入した後、自販機で飲み物を買う。
「いやー悪い、待たせたな」
「待って……なんだ?そんなに食うのか?」
丁度、俺が自販機から飲み物を取り出して視線を向けたら、いろんな種類のパンが入ったビニール袋を持つ狭間が立っていた。
「俺もそこそこ食うけどここまでは食わねぇな」
「じゃあ、なんでそんなに……飲み物持つの手伝うぞ」
「お、ありがとな!」
ただでさえ持ちにくそうだというのに、狭間は飲み物を四本買っていた。
自分の飲み物をホットドックが入ったビニール袋に入れて二本持ってやる。
「そこまで食うなら飲み物もいるだろうけど多めに買うな」
「まぁな……そうだ!屋上で食おうぜ」
「……いいけど」
先ほどから狭間の返答はどこか曖昧な感じがするが、場所を指定する時は思いついたというより決まっていたように感じ取り、自分の中に疑心が生まれていくのがわかる。
疑心が生まれてくるのと同時に、何か確信が持てないが嫌な予感がしてきた。
自分の中の疑心に確信が持てないまま別れることもせず、狭間の提案通りに屋上に向かっていく。
狭間が先行して屋上の扉を開いた後に、俺が屋上に足を踏み入れた。
最初に目に入ったのはパラソルだった。
「なんだ……あれ?」
俺が思わず声に出してしまったのだが、そのパラソルはよく見てみると色が黒色だった為、その場に誰がいるのかすぐに気付き、屋上から逃げ出そうと振り返る。
しかし、振り返った先には、扉を閉めて行く手を阻む狭間の姿が見えた。
周りを確認するのだが、冷静さを欠いていたのは間違いなく、この屋上に今いるのは俺、狭間、そしてーー
「ようやく来てくれましたか、お待ちしてましたよ新城さん」
黒いパラソルの下でゆったりしているダンダリアンのみだった。




