十四話
翌日に目を覚ますと俺の上にはアドラはいなく、空中に漂いながら寝ているアドラを見つける。
……本当にあいつってどんな存在なんだろうな?
アドラが寝ている間に着替えを済ませ、朝食の用意をする。
朝食の用意が出来上がる頃には、アドラはテーブルの近くで食べる準備を済ましていた。
「今日は簡単なものだぞ」
「構わないわ!」
ハムエッグと食パンを食べ終わった後は、昨日のことはまるでなかったかのように俺の周りを飛び回って話しかけてくる。
だからと言って昨日のことを持ち出せばまた拗ねるだろうな。
通学路をいつも通りに通っていたのだが、いつものところで宗助とは会うことはなかった。
そのまま教室についてホームルームまで過ごしていたのだが、宗助が学校に来ることはなかった。
チャイムが鳴るのと同時に、うちの中年担任が出席簿を持ちながら入ってくる。
「よーし、お前ら全員揃ってるな?遅刻者がいないのはいいことだぞー」
「先生、宗助がまだ来てないのですが」
「あいつは連絡が来て欠席だとわかっているぞ」
「遅刻者以前に欠席者が出ているじゃないっすか」
「連絡来てればいいんだよ、連絡来ていれば」
「適当すぎじゃないのセンセー」
「適当で何が悪い、そんなことより今日は大事な用が一つあるぞー」
気怠そうに言葉を放ちながら、担任は手に持っている出席簿を教壇の上に置く。
「大事な話ってテストのことですか?」
「そんなもんお前らには大事なことじゃないだろ」
『大事なことだよ!学生も教師も!』
担任の問題発言に対してクラス一同が突っ込みを入れる。
学生たちとて自分から好んでテストを受け入れたいという訳ではないが、受けなければ自分の成績、引いては将来の自分に返ってくるのだ。
そして、教師のテストと言えば問題の作成など色々仕事があるはずなのだが、この教師に関してはそんなことすらどうでもいいという顔をしている。
「テストじゃないって言うなら一体何なんだよ?」
緑色の派手な髪をした男子が担任に問いかける。
その質問を答えてくれるだろう担任に視線が集中する。
「お前らの方がこういったことは好きだろ?事前に情報を集めてたりするやつだっているだろ?」
『いねぇよ!漫画じゃあるまいし!』
自分の受け持っているクラスの返答に、担任は夢を壊されたと言わんばかりの表情を隠しもせずにその肩を落とす。
担任のその表情にそこまで落ち込むかと思いをするものの、誰一人として慰める奴はいなく、テンションが低いまま担任は廊下に声をかける。
「そんじゃぁ……入ってきていいよ」
「失礼します」
担任の招き入れる声に、綺麗な声が答える。
クラスの連中はその声で担任から廊下に続くドアの方に視線が移る。
俺はと言えば、今の声はどこかで聞いたような気がすると考えていたのだが、すぐにその答えは分かった。
その長い黒髪は何もかもを吸い込みそうなほどに真っ黒で、普通に生活していればお目にかかることなどないほどの美しさを持った存在。
そう、教壇でクラスメイトに笑顔を振りまいているのは最上級悪魔のダンダリアンであった。
「初めまして、今日からこのクラスで一緒にさせていただく壇ノ浦莉愛といいます。以後、仲良くしていただければと思います」
「彼女、壇ノ浦さんはあの壇ノ浦財団の社長令嬢だから、問題起こすなよ」
『そんなお嬢様がどうしてうちみたいな一般校に来てるの!?』
「彼女の強い要望だそうだ。先生はそれ以上は知らん……と言うより知りたくもない、ということで彼女の席と案内役をーー」
担任の言葉が終わる前にダンダリアンは俺の席の近くまで歩いてきている。
俺の席は一番後ろの窓側から二列目と言う最高なポジションだ。
その席の近くまで来たと思えば、俺の方に微笑みを向けて窓側の席の子に話しかける。……めちゃくちゃ嫌な予感がする。
「すみませんそこの席がいいのですがーー」
「あ、はい!かしこまりました!」
窓の席の女子はダンダリアンが最後まで言い切る前に、荷物をまとめて空いている反対側の席に駆け出して行った。
待って!せめてもう少し抵抗して!そうすれば俺も目立たないでこの場から逃げれたというのに!
席を確保したダンダリアンは次に担任に振り返り、俺の方に手を向けてくる。まさかーー!?
「あと、案内役はここにいる誠さんにお願いしてもいいでしょうか?」
「ちょっーー!?」
「ええ!ええ!構いませんとも!そこの生徒はどうぞこき使ってくださいな!」
「せんせぇえええ!俺の意見!俺の意見は!?」
「新城、これは決定事項だ……先生の生活、もとい、彼女の学校案内を頼むぞ」
「もしかして俺を売りやがったな!」
「ハハハ!普通にいい生徒であるお前だったら問題ないだろ!ホームルームはここで終わりだ!じゃあな!」
「待て!生徒を売る教師がいるかぁああああ!」
結局、その後は一時間目の授業の教師が来てしまい、ダンダリアンこと壇ノ浦莉愛の案内役を押し付けられたまま、その日を始めることになった。




