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十三話

 リアに連れまわされた俺は、あの後学校に戻ってきたのだが宗助は戻ってきていなかった。

 教師にどうして学校に来たのに授業に出なかったのかと問い詰められたのだが、家庭の事情で実家に戻ることになったと伝えた。

 実家には両親と妹がいるが、俺が悪魔退治をしているとか一切知らないでいるのだが、何かを察しているのか全部伝えなくても俺のアリバイ作りに協力してくれる。

 その時母親から、「理由もなくサボるとかしないって分かっているわ」と言われてこの人の息子に生まれてよかったと心底嬉しくなった。

 ちなみに父親に関しては、「俺の息子の性癖はあれだが、俺たちを裏切ることはしないと分かっている」と言われた……あのクソ親父、人の性癖を何処で知ったというんだ?それに俺の性癖はアブノーマルじゃねぇ!その一言さえなければいい父親だと思うのだが。

 妹に関しては仲がいいわけでも嫌われているわけではないと思う。

 顔を合わせれば挨拶はするし、話もしないわけではない。

 いたって普通だと思う……他の家庭なんかわからないけど。

 遅刻したとはいえ、登校した後はごく普通に過ごすことになり、悪魔も現れず大人しいものだった。

 帰りにアドラに「アイス買ってけ!」と言われ、大量のアイスを買わされた。

 アドラは誰にも見えず、声も聞こえないのだが、物に触れないという訳ではないらしい。

 俺も知らないというか、本人さえも分かっていないようだ。

 少し前に人の飯を勝手に食べていているところを見て初めて知ったことだ。

 それ以来、食事に興味が無かったはずのアドラが食事を要求するようになり、冷蔵庫に隠していた俺のアイスを食べて、


「吾輩に隠れてこんなうまいもの食べてたの!?ずるい!」


 と、事あるごとにアイスを要求するようになった。

 半年近くこいつと一緒にいるのだが、未だにこいつがどうなっているのかわからない。

 大量にアイスが入ったビニール袋を持ってようやく自宅に帰ると、俺の横からアドラが入り込むのと同時に俺の手にあったビニール袋を奪い去って俺のベットの上にダイブし、袋の中からアイスを取り出して不機嫌な顔のままバクバクと勢いよく食べていく。


「残りのアイスは冷蔵庫に入れろよ、溶けて布団に染み付いたら困るんだが」

「…………」

「まさかそのまま全部食べるつもりか?」

「………………」


 アドラは返事をしない代わりにすでに食べ終えたアイスの容器をゴミ箱に投げ入れ、袋から新しいアイスを取り出す。

 俺はアドラの説得を諦め、無言でアイスを食べ続けるアドラに夕飯を食べるのか聞いてみると、


「……食べる」


 そっけない態度だが、返事をしてくれるくらいには落ち着いてくれたらしい。

 アドラは夕飯を食べる前にビニール袋一杯に入っていたアイスを食べ終えており、そのうえで夕飯も全て平らげた。

 夕飯の後は特に話すこともなく、各々で適当に時間を潰し、十一時に布団に入って寝ることにした。

 目を瞑って少ししたところで眠気が襲って来たのと同時に、その眠気を吹き飛ばすように体に重さが乗った。


「うべっ!なんだ!?」


 俺は重さのせいで体を起こすことが出来ないのだが、首だけを動かして体の上に何が乗っているのか確認する。


「……まだ何かあるのか、アドラ?」

「………………」


 俺の上に乗っていたのはアドラだった。返事は無いが起きているのは分かっている。

 どうやらこの状態のまま動く気は一切ないらしい。

 首を上げ続けるのも辛いので、首を枕に預け、アドラを上に乗せた状態のまま起きていることにする。


「今日の事」

「ああ」

「あまり無茶をしないで」

「悪かった」

「心配した」

「すまん」

「それでも、誠はまだ無茶をするの?」

「必要であれば、お前にも心配をかける」

「やっぱりやめないんだ」

「お前がいてくれるからこそこんな無茶が出来る」


 俺はアドラの頭を優しくなでる。

 アドラは撫でている手を拒否することなく、そのまま撫でられるのを受け入れる。


「どこでこんなこと覚えたの?」

「は?」


 いきなり言われた言葉に反応できずに呆けた声を出してしまう。アドラはそんな俺に追撃をかけるように起き上がりながら言葉を強く放ってくる。


「こんな風に頭を撫でることなんかなかったじゃない!どこの女で覚えてきたのよ!」

「人聞きわりぃこと言ってんじゃねぇ!お前が初めてだっての!」

「そんなわけないじゃない!初めて吾輩を撫でるのに、こんなにうまいわけないでしょ!」

「もしそうだったとしても妹くらいだよ!」

「やっぱりいるじゃないの!」


 そこまで言って、満足したのか、疲れ切ったのかさっきと同じように俺の体に重さを預ける。


「でも悪くなかったわ」

「そうですか」


 その言葉を最後にお互い静かになり、そのまま意識を落としていく。


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