十六話
今日からは一話更新です。
明日からの更新は十九時に更新します。
「どうしてお前がここにいるんだ……」
「会って早々に酷い言い草ですね」
「さっき女子の集団と食堂に言っていただろう」
「こう見えて思考誘導の魔法を少し使えるんですよ」
「……洗脳の間違いじゃないのか?」
狭間がいる前で堂々と魔法と口にしているのだが、狭間は気にする様子もなくダンダリアンに近づいていく。
「壇ノ浦さんお待たせ、言われていた購買のパンだよ」
「ありがとうございます。それではこれはパンの御代ですよ」
ダンダリアンは狭間にそう告げて、何時取り出したのか分からない自分の財布を取り出し、そこから一万円を手渡していた。
「壇之浦さん!?これはいくら何でも多すぎるよ!」
「気にしないでください、これを貰ったら教室に戻って大丈夫ですよ」
狭間はその場でお金を受け取り、まるで俺たちのことが見えていないのか様に屋上から去っていく。
この様子からして、自己紹介の時にはクラス全員に思考誘導かは分からないのだが、魔法を使ったのは確かのようだ。
気付かれない程度に警戒をしていると、それを見通しているかのように言葉を放つ。
「そこまで警戒しないでください、こんなことをするのは今日限りですから」
「……信用できないな」
「まったく、昨日のことから今までのことについて話させてもらおうかと思ったのですけど」
彼女は声音は真剣なのだが、ビニール袋からどれを食べようかと迷い、一つのパンを取り出す。
こちらに対する敵意が無いのは分かっているのだが、そこまであっていない者ーー否、悪魔を信用するのは難しいというものだった。
それに、先ほどの狭間にも使っていたという洗脳を使われたら魔法抵抗できるか分からない。
「安心してください。私が使う思考誘導は私たちの中でも最弱なもので、魔力が少ない人間、もしくは無抵抗で受け入れるものでもない限りには効きません。
試しに、あなたに今使いますよ」
その言葉の後に、額に小粒でも当てられたような感覚が走る。
「もしかして……今のが?」
「貴方達でいう、下級の悪魔に抵抗してもらった際は頭痛がしたようですが……その様子では痛みすらないのですか?」
「痛みは無いが……消しゴムのカスを額に当てられたというべきか?」
「……初めから効かないとは思いましたが、痛みすら与えられないほどとは思いませんでしたよ。
それだけあなたの魔法抵抗力は強いみたいですね」
「本当に全力だったのか?」
「失礼なことは言わないでください。私は攻撃魔法関係が得意なのですから、こう言った小細工は苦手なのです……このパン美味しいですね」
話している最中だというのにパンを食べ始めた。
まともに警戒するのが馬鹿らしくなってきたので、ダンダリアンの近くまで行く。
その際、彼女は食べるのに夢中なのだが自分の影を伸ばして椅子を用意してくれる。
「それで?一体何を話してくれるって言うんだ?」
「んぐんぐ……そうですね、昨日やってきた五人は私の部下であることはお気づきですよね?んぐんぐ」
「それはなんとなく、けれど人間に味方するとは思っていなかったがな」
「それは私が作った派閥が人間に対して友好的であるからです。んぐんぐ」
彼女は俺と話している時も食べるのを辞めないが、話してくる際には口の中のものを飲み込んで話してくれるので、聞き取りにくい箇所はない。
指摘したところでやめる気は無いのだろうからその場は無視する。
「んぐんぐ、私が持っている部下は少ないですが、私たちの中ではそれぞれ人間に対して友好的な派閥、無関心な派閥、そしてーー」
「人間を食い物にする派閥」
「そうですね、けれどそれは一部だけです」
「……何が違うと?」
それまで食べながら話していた彼女は、食べかけのパンを手に持ったままこちらを真剣に見つめてくる。
「力を手に入れるためにどんなものでも喰らう派閥、それが例え同類であっても」
「………………」
その言葉は静かに伝えられるというのに、言葉を発している彼女からはとてつもない迫力を感じ、言葉を出せずにいた。
「人間界で人間を食べているのは、その生存競争で生き残れない力のない下級たち……こちらでも始末しているのですが数体はこちらに来てしまう」
「それで?私たちはあなた方のために頑張っているので信頼してくださいってことか?」
「いいえ、違います」
「……何が言いたいんだ」
俺は目の前のこいつが何を言いたいか分からずに少し苛立ち、語気が強くなるのを抑える。
「半年前」
「ーーっ!?」
どうしてこの時、半年前と言う言葉が出たのかは分かっている。つまりはこいつは俺が食われてたところを見ていたのだろう。
けれど、俺はすぐに冷静さを取り繕おうとして言葉を放つ。
「その言葉が出るのはどうしてだ?いい加減、こちらも冷静でいられないぞ」
「私たちに協力しない、新城誠、さもなくばあの宗助というのにーー」
その瞬間、俺は無意識に動いている体をギリギリで止める。
無意識に少し強めの炎の剣を作り出し、首元を狙っていた動きを止めて話しかける。
「言ったはずだ……冷静でいられないと、止めなければ殺すところだぞ」
「そうですね、火力も下げてもらっていたようですが……協力してもらわないと困りますから」
彼女の瞳は俺を捉えたまま揺らぐことはなかった。
俺が殺そうとする直前まで。
その瞳と今の言葉を受けて俺は無意識に動いた体を止めたのだ。
「……放課後、詳しい話を聞く。協力するかどうかはその時に決める」
「それで大丈夫です」
俺は話はここで終わりと伝えるように屋上を後にした。




