十一話
俺が生み出した火球は普段放つ速さよりかなり抑え、動けずにいる宗助と木原を飲み込もうとするのだが、その二人と火球の間に割り込むように人影が現れる。
「させんわ!《黒鱗》ぉおおおおおお!」
その人影は叫ぶとともに自分の前に半透明な黒い壁を召喚する。火球はその壁に当たるとその場で消えることはなく、壁を壊そうとそのままの勢いで進もうとし、半透明な黒い壁にヒビを入れる。
「ぬぅうううううう……ハッ!」
ヒビが入ってもそのまま耐えていたのだが、火球を受け止めた人物はそのまま壁の向きを少し逸らし、火球の進行方向を後方の上空に逸らした。
「へぇ、逸らすことが出来るのか」
「感心するとは」
「舐めすぎだゴラァ!」
火球を放つタイミングで乱入してきた四人組のうち一人は宗助と木原を守り、残りの二人は分かりやすいように蹴りと斬撃を前後から放ってくる。
荒っぽい口調の男が俺の後頭部を蹴りぬこうとし、眼鏡の男は刀を使って俺の腹を両断しようと振り抜く。
「舐めているのは貴様らだろ」
俺はその一言を言い放つと、俺の周り中心にし、炎の竜巻を発生させる。
「なっーー!」
「ッ!」
二人は攻撃を即座にやめ、宗助たちのところまで後退する。そして、分かりやすく俺の上だけに作った炎の空白地帯から残りの一人がナイフを突き刺そうとする。
「先ほども言ったが、舐めているのか?」
俺はナイフを右手で掴み、炎の竜巻を消す。俺に向かってナイフをつこうとしたのはどう見ても少女の姿をしていた。
「嘘……?なんで?」
「貴様ら四人が来ていることは初めからわかっていた。そちらは不意打ちのつもりだろうが、初めからわかっている攻撃は不意打ちではない」
少女に一言伝えた後に先ほど二人を守った老人に向かって少女を投げる。
「うわぁあああああああ!」
「スー!?」
老人はその見た目とは裏腹に、少女をしっかりと受け止める。
「おいおい、あいつ片手の重症だろ?」
「見ればわかるだろ、それでもこれほどの力を残しているのは化け物だな」
「スー無事か!?」
「トル爺、あの人……まだ本気じゃない」
「「「「!?」」」」
少女の一言に駆け付けた三人と宗助が驚きの表情を浮かべる。
「《紅時雨・破城》!」
この場に来ていなかったもう一人が俺の上空に大きな魔法陣を描き、炎の破城杭を叩き落としてくる。
「アカの野郎!まだ合図送ってねぇだろうが!」
「全員人間の周りに集まれ!トル爺!」
「分かっておる!《黒玉・三鱗重ね》!」
老人は自分たちの周りに先程の半透明な黒い壁を包むように三重に掛ける。
その間にも破城杭は俺に向かって落ちてくる。
「アドラ、流石に辛くなってきた。俺があれを喰うから回復を頼む」
「あれだけじゃ全回復するほどじゃないから誠の力も少し使うよ」
「頼むぞ」
アドラに指示を出した後、俺は右手を落ちてくる破城杭に向けて掲げ、触れた瞬間に吸収を開始する。
アドラは吸収に集中している俺に変わって、俺の体の回復を優先してくれる。失ったはずの左手の切断面から炎が吹き上がり、そのまま左手の形を形作っていく。
「……嘘だろ?アカの最大火力を喰ってるのか?」
「それを使って失った左手を再生?ありえない!なんなんだあいつは!?」
「トル爺」
「スー?どうしたのじゃ?」
「あの人ーー」
「悪いがそこの少女は黙ってもらおうか」
「!?させぬぞ!《黒玉・虚空》!」
少女は俺の何かを探り当てたのだろう。これ以上彼女の口から話をさせるわけにはいかず、アドラに回復してもらった左手を少女に向けて火球を放つのだが、老人が作った黒い球体。
先ほどまでの半透明な黒い壁とは違い、何も通さないような黒い球体は俺の放った火球を吸い込んでその場から消え去った。
「なんだ?」
いくら力を押さえているとはいえ消されるとは思っていなかった。先ほどの技に何かあるのは分かっているのだが、その構造はまだ理解できない。
放たれた魔法の吸収を終え、傷を回復させた俺は目の前にいる上級悪魔たちを見て目的を変更させ、この場から撤退しようと考える。
「ダメ、逃げようとしてる」
しかし、その考えは先ほどの少女によって見破られる。
「精神透視系の能力か?」
「逃がすか!」
「ここで斬る!」
「馬鹿の一つ覚えか?力を押さえた状態で俺に勝てると思うなよ」
俺に向かって二体の上級悪魔が向かってくるのだが、今度はこちらから近づき気を失わせるほどの一撃を腹に与える。
「がはっーー!」
「ごはっーー」
「《紅時雨・刺千》!」
気絶したのを確認した後に、適当な距離に放る。
迫ってくる複数の魔力反応に対して俺は黒炎を生成し、複数の魔力反応に向けて迎撃する。
「凍れ」
黒炎は炎の針に触れると、その針を凍らせて黒い炎で溶かす。
術者の位置を正確に特定した俺は、そこに向けて火球を複数放つ。
気付いて逃げようとするのがわかったが、逃げるのが遅れたのか火球の余波を受けていた。
「さて、すまないが今日はここで帰らせてもらう。どうやら君たち上級悪魔は俺が探しているものではないようだからな」
「……毎回思うけどよくそんなにそれっぽい言葉が出てくるよね」
アドラが俺のセリフにいちゃもんを付けてくるのだが、気にせず言葉を続ける。
「これから先、俺の邪魔をすればどうなるかを知っただろうし、このまま付きまとわないようにしてもらおうか」
俺は意識を残している者たちにそう言い残し、この結界から離脱した。




