七話 〝ローラー〟
いつも読んで頂きありがとうございます♪
ストレス発散目的と本格的に書き始めました。
それでも拙い文章力ですが最期までお付き合い下さい。
この作品は完結まで書く!
「うぅ〜ん……。」
戦闘学舎の一角にある石階段で腰を落とす悩ましくも色艶やかな声色にとある女性の冒険者が背後から元気に声をかける。
「きゃっ!……ってなんだリュミーかぁ〜。びっくりするでしょ。」
「悩める子羊……というよりアンタは蓮鶴よね。今日もアンタの盛りに群がる冒険者が多い事、多い事。」
「盛ってないわよ。向こうが勝手に騒いでるだけでしょ。」
「あら、冷たい!」
〝職練〟と呼ばれるそこは現役冒険者や冒険者志願者達の謂わば技能習得や訓練所になるのだが、ミリーティアは壁にぶち当たっていて頭を悩ませており休憩がてら、そこに居た所を幼馴染のリュミー・ラ・ルナに捕まる。
「ねぇ、アンタさぁ前から気になってんだけど……魔法士か魔法剣士職なら間違いなく一級品、その他の冒険職でも教官達からもうお墨付き貰ってて冒険者登録出来るんでしょ?なんで唯一低評価の大剣ばっかり振り回してんのよ……てかよく振り回せるわね。」
訓練用の大剣を抱き寄せながらミリーティアは細々と弱々しく、切な気に口を開く。
「これじゃないと意味無いのよ……私の夢というか、家を継ぐと決めた頃から大剣だけは何としてでも最低限の理解と腕はつけたいの。父さんが言ってた『職人は永遠に未熟者だ。一流だなんだ言ってる内は大したことねぇ、職人やるなら一生半人前だと思い続けろ』って言葉の真意は理解と探究無しでは腕は上がらない。腕の良い職人というのはそこを常に意識して極めゆくからこそ、良い職人であれるのよ……私はそうなりたいの!どんな冒険者が相手でも堂々と自信持って腕を振るえる最高の鍛冶師になりたいの!判る!?」
全く理解出来ないといった表情を浮かべるリュミーはそもそも生産職向きの性分じゃないからこそここにいる。
むしろ自分の目指す最低限の領域に既に辿り着く目の前の親友に妬きもちすら覚える始末。
「アンタねぇどの道大人しく鍛冶師なんて出来ない事くらい自覚あるの?見た目も性格も文句無しで、貴族はともかく冒険者まで目の色を変えて狙ってんのよ?高名な父の背を越えたい気持ちは解るけど、アンタの言う冒険者の気持ちを知りたい欲求なんてのは即ち自身も冒険者登録して迷宮や野戦で経験積むしか無いってのに、一人じゃそれは無謀な目標よ。」
可憐な顔立ちが可愛らしくも睨みを利かせリュミーを向くが、リュミーはその仕草を見たら外野共がどんな反応を示すか想像に難くなく先行きが不安になった。
「あのねぇ……まず愛おしい表情辞めなさいよ。どう見ても絶世の美女が頬を膨らませて甘えてる顔にしか見えないのよ。そんなんじゃ粗野な冒険者は別の剣をおっ立ててアンタに迫るわよ?」
「あら、大剣なら歓迎よ?」
周囲に誰も居ない事を良いことに共に馬鹿げた笑いをし合い終えると、ミリーティアは淋しげとは違う表情でそっと呟く。
「粗野……ねぇ……。」
その横顔はリュミーに再び釘を刺させる事になるが、その感度といえば柔らかくも温もりに満ちる優しさであった。
「まっ、私はアンタと違ってここでは身に付けた技能を磨くのと技能開発が目的だから、腕を極めるって点では理解出来るわね。……とはいえ、私が思うにアンタの目的はそこじゃないんじゃないの〜?」
頬を微かに赤らめながら流石は幼馴染と感嘆するミリーティアは一呼吸つくと、リュミーを誘い再び訓練場に歩を歩め、仕方ないといった様子でリュミーもまたミリーティアについていき肩を並べる。
「あぁ、もう!なんで大剣技能がこうも巧妙く出来ないの!苛立つわ!やっぱり身体能力が未熟なのかなぁ〜。」
「おい、蓮鶴。既にアンタの身体能力は女性の枠通り抜けてるっつうの。」
「へっ?私なんてまだまだ未熟よ。あの人に比べたら……。」
「あのねぇ、何処の冒険者に魔力使わずに水面上走れる奴いると思ってんの?昔からそうだったけどある意味では人の領域越えてるわよ……それに比べる対象が違うじゃん。あれは人を辞めた魔物だもの。」
呆れ顔のリュミーは、とぼける親友にそう言うと再び剣を抜き訓練を再開しようとするが、ミリーティアは想い人を汚された様な気がして殺気だった。
「そうそう、良い気迫ね。それでこそ発破かけた意味があるっていうものよ。かかってこい!」
★★★
「断る。」
「まだ何も言うとらんだろ。」
ポルクピッツが顔を見せただけでテルギースは頑なに断りを申し出たのは、よりにも寄って大嫌いな豚貴族様が旧友の店で我が物顔で居座っていた段階で大方の察しがつき厄介事の匂いしかしないと確信していからだ。
「話というのはだな……。」
「だから断ると言っているだろう。貴様の性分だ、冒険者協会に依頼が出せない、もしくは出したくないのには相応の理由があるのだろう。ならば腕の立つことで高名な貴様の私兵にでも頼ればいい。」
「ブライトンといい、お主といい偉く嫌ってくれとるやないか……儂一応高位貴族よ?」
「そうだな、その権威に対して非礼と解っていても構わないと思える以上の迷惑ばかりかける厄介者に何を気遣う必要があると?」
御付きの私兵騎士達は不敬な振る舞いを続ける【八ツ星級】に対して物言いを流石に入れざる得なく一言割って入るが、それを制したのは意外にもポルクピッツであった。
「ブライトンはお主が受けるなら依頼として受けるの一点張りでな。支度金なら言い値でかまわん。儂の野望に手を貸してくれぬか?」
「フンッ、そこの新たな顔触れは相当腕が立つのだろう?俺じゃなくとも彼等に任せれば良い。特に左隣の大柄な金髪の君は相当な実力者だろう。」
テルギースは指を差しながらそう述べたが、ポルクピッツは一目見て件の私兵の力を推し量る力量を褒め称えると、それを出汁にめげずに交渉を続けようとして強引に事を語り始めた。
「どうだ、受けてくれぬか?」
「断る。どうせブライトンに俺を口説けるものなら口説いてみろと焚き付けられて意地になってるだけだろうし、話の内容からしてその彼でも簡単にこなせると俺は思うぞ。それに【八ツ星級】である俺が国王の勅命を放って一貴族の貴様なんぞに時間を割けるか。」
国王の勅命なんてものは無い。
ただ眼前の目障りな厄介者を追い払う方便。
それでもポルクピッツというのは、こと利益に関しては執着心が悍ましいほど強い。
中々引き下がらない。
何時もなら権威を盾に我を貫き通す言動に終始するがこの時ばかりは様子が違う。
先程の側近を咎めた行動もそうだが、何よりもテルギースの前に跪く姿は、かつての知る男のそれではない。
「……日頃を省みて、その歳になって漸く気付いたのか?」
テルギースの言葉は強烈にも静かに男の誇りに突き刺さるが、ポルクピッツは悔しそうな感情を露わにせず、側近の制止を振り切りながらも懇願し、そして語る。
「……儂はなテルギース、お前さんの言う通り今迄散々周囲を振り回してきた。汚い手も数知れず染めてきた……大勢に嫌われている事も理解しておるし、この地位も富も決して誉められたものではないのは百も承知!……それでも貴殿らを頼らせて欲しい……後生の頼みだ、テルギース殿。」
テルギースはポルクピッツの口から発せられた言葉に意表を突かれて絶句した。
「……何が貴様をそこまでさせる!」
テルギースの口から咄嗟に出た言葉は威圧に近いほどの声色であったが、ポルクピッツは怯まずその理由を語る。
「儂の不徳が招いてきた結果だな……。うちの馬鹿息子共では間違いなくポルクピッツ家は終わる。先祖に顔向けが出来ん処か、お前さんもよく知る通り名伯楽家としてこの国に多大な貢献をしてきた由緒正しき我が一族であったが……どうにも……このままでは儂の代で潰える。……だから頼む、報酬は儂の総ての財で手を打ってくれ無いだろうか。」
「……セダスは?」
「……昨年末にな。」
「そうか……。口だけの息子達だと噂は耳にしていたが、諦めろ。俺はセダスの様に子守には向かん。ましてや全員成人して久しいのだろう?」
床に視線を送りながらゆっくりと顔を上げた嫌悪の対象の御尊顔を拝むと思わずテルギースは視線を逸らし、手元にある道具の手入れ作業を止めると軽く声を漏らす。
「……ポルクピッツ、成人してるわけだから生命の保証は無しだ。それと、報酬はしかと払え。いつもの様にのらりくらりと躱すのならば……俺が終わらせてやる。」
そう聞いてポルクピッツは床に手と頭を擦り付けるように下げ、柄にもない声色を漏らしながらも震えては思いの丈を述べていた。
その先に待つは絶望か失望しか無いと知りながらそれでも一筋の希望を掴もうと、必死に失ってはいけない何かを護ろうとする心、想いの強さだけは、過去に知るどんな人間にも勝るとさえ感じてつい請けてしまう。
だが、この何十年間の付き合いでポルクピッツの本質、言い換えれば全力一心を初めて知ってしまったからにはテルギースはそれと同等に全力で応えるべく容赦しない事を誓った。
それだけ事は繊細で危うくさえ思えてしまうからだ。
「依頼の本筋は〝職練〟を経てからだ……泣き言は許さない、生命を落としたらそこまでだ。俺は冗談でその依頼を受けるつもりはない。だから誓約印を打つ。シャウ、君にも約束を果たしてもらう。でなければ誰もが後味の悪い地獄しか見ないだろうからな。」
もう何年も聞いていなかった久しい呼ばれ方にポルクピッツはただ一言だけしか返せなかった。
互いの身体のほんの一部に小さな誓約印を魔法行使して刻み終えると、テルギースはポルクピッツにある言葉を言い切る。
「鼻からその覚悟だ。テルギース……ありがとう。」
ここまで読んで頂きありがとうございました♪
極力サボらず毎日マイペースで少しずつ書き出してますが
一身上の都合により不定期更新となります。
また次話読んで下されば嬉しいです♪
書き溜め… …_φ(・_・




