六話 ラナンキュラス
いつも読んで頂きありがとうございます♪
ストレス発散目的と本格的に書き始めました。
それでも拙い文章力ですが最期までお付き合い下さい。
この作品は完結まで書く!
「親方ぁ〜、資材の納品確認終わりましたぁ〜。」
「おぅ、ご苦労さん。」
広いワールローの一角にある小さな鍛冶工房で納品された様々な素材を確認していた数人の弟子達の筆頭がそう言うと親方は労い、製作依頼のある品の作製に取り掛かる。
「やはり、ギョルド産の素材は質が良い。お前等、これらを扱う時は細心の注意を払うんだぞ。」
低い声質に白髪混じりの短髪で無骨な顔、職業柄盛り上がる大きな筋肉の鎧が特徴的な鍛冶親方は弟子達に促す。
弟子達は背筋を伸ばして一声の返事をすると、そこは金属素材をひたすら叩く音しかしない。
それから少し時が経過した頃、一人の中年淑女が工房の扉を開けて親方に近づく。
「貴方、お客様よ。」
丁度、一仕事終えたばかりの親方は道具の手入れ中だったがそう伝えてきた妻から客の名を聞かされると、それまでの機敏な動きをぴたりと止めて鈍重な動きに変わる。
それはまるで魔法で何層にも加重された様に、親方は口元を歪ませながら妻に振り向く。
「ヒュリッサ……俺は留守だと言わなかったのか?」
「無理だわ。だってあの人達、開店時からずっと待ってるんだもの。」
ヒュリッサからそう聞いて大きく溜息を溢すと親方はその場から、のそのそと動き続け、それを察してヒュリッサは上階の店内へと戻っていった。
店内では冒険者や民などが、武器や農具を求めて賑わう中に、一人の外套を纏う者が紛れていたが、彼の目的は店内に犇めく品物ではなく、旧友を探しに来ていた。
だが、一通り店の中を見渡すも旧友の姿はそこになく出直そうかと店の入り口戸に向かおうとした際、大柄な白銀鋼鎧を身に纏う男達とその間に如何にも貴族な風貌の壮年の男が目に付いた。
(貴族……か。)
すると傍らの若い一人の付き人がその視線に気付き束の間、互いに視線が合い、それを外す事なく外套を纏う者はその場はやり過ごすしたのだが、若き視線の圧は最後まで注がれる。
外套を纏う者が立ち去ると、視線の主はそれを見送った後、直ぐ様にもう一人の鎧男に問いかけていた。
「ポルクピッツ様、只今ブライトンは王宮依頼品の製作中につき手が離せないようです……ですが、キリが良い所で話し合いに応じますので、それまではお待ち下さい。」
「フンッ、王宮の依頼なら仕方あるまいな。今日という今日はここで、じっくりと待たせて貰おう。」
夫に気を利かせヒュリッサがそう言うと、如何にも贅の限りを尽くしてきた体躯にはどれほどの金が掛かったのか分からない体躯の貴族、シャウ・ポルクピッツは太々しい態度でそう答えた。
「ポルクピッツ様、今巷で話題の茶菓子は如何でしょうか?」
「おぉ、これはハムレット印の高級茶菓子か!これはこれは……うむうむ……美味!ヒュリッサ殿の御息女は大変気が利いて宜しいな。品良し、愛嬌良しでヒュリッサ殿も鼻が高いであろう!」
何処の国も貴族の殆どはポルクピッツの様に品格に拘る傾向が強い為に品を欠く相手には容赦しないのだが、品を重んじる相手にはとことん可愛がる性格。
こと、この【青天鍛冶工房】の店主だけは付き合いが長いだけにある程度寛容な事も幼子から店番の手伝いをしてきた彼女からするとポルクピッツの機嫌取りはあしらいやすく、ポルクピッツという男を熟知しているゆえに彼の機嫌変化には敏感である。
「ヒュリッサ殿よ。ミリーティア嬢は嫁の貰い手は居るのかい?居ないのであれば儂の息子に貰えんかな?」
「流石ポルクピッツ様、御冗談も御上手ですね。その点は御安心下さい。私にも想い人の一人くらい居ります。」
母の立場では下手に返せない言葉だけにミリーティアは即座に対応する。
「娘ももう直十八歳。成人から早三年経とうかという歳頃ですので、その辺は親が首を突っ込む訳にはいかないですから。」
笑顔でヒュリッサはポルクピッツに返しては、彼は残念そうな反応を示すも、ポルクピッツはその相手について興味が湧いたのか更なる質問を次々と投げかけるがミリーティアは隙一つ見せず丁寧にそれを捌いていると、奥から父がようやく姿を現しヒュリッサとミリーティアは入れ代わり立ちかわりつつポルクピッツに礼を添えて店内作業に戻っていく。
「ポルクピッツ様、此方へどうぞ。」
「おお、ようやくか。ブライトン。」
店主の鍛冶師ブライトンが店内の応接間にポルクピッツ達を連れてゆくと、再びヒュリッサとミリーティアは小声で互いを労うと愚痴を溢す。
「誰が、あんな放蕩息子の嫁に行くもんですか。」
「全くね、大事な娘を渡すわけないでしょ。金積まれても嫌だわ。」
そう呟き合うと、ミリーティアはそそくさと店内の客に目配せするが、ヒュリッサは実のところ娘の想い人について以前から気になっていたのも事実で密かにその点だけは確認したが、ミリーティアに軽くあしらわれると、ほんのり靄がかる。
「ねぇ、母さん。」
ミリーティアが問いかけると、ヒュリッサは反応する。
「私、これから〝職練〟に入り浸るからもういいよね?父さん来たし。」
「あら、もうそんな時間なのね。いってらっしゃいな。」
そう娘と母は言葉を交わしミリーティアは自室へと駆け上っては少しの間を置いて急いで目的へと向かう。
「本当、近頃ミリーティアちゃんは頼もしくなられましたね奥様。」
「えぇ、ポルクピッツじゃないけれども、本当鼻が高いわ。でも……。」
言葉尻を濁したヒュリッサに長年共に働くサーシャは訝しそうに問いかける。
「冒険者にでもなるつもりなのかしら……。」
ワールローには冒険職絡みの施設や補助制度が幾つも存在するのだが、中でも技能訓練所と呼ばれる施設は利用者が多く、そこで学べる技能は多岐にわたる。
ミリーティアが今日も入り浸るのは冒険者志願者が集まる戦闘学舎である。
「仕方ありませんよ。なんせ、ミリーティアちゃんは生産系は殆どが最優秀格での修了、もう生産学舎で学ぶ事はありませんし、自身でも仰られていましたが、将来を見透すと冒険者が生命を預ける武具を造るんだから造られる側の気持ちも知らなければならないと。大した度胸をお持ちじゃないですか。」
「ですが、最近噂を耳にしてからは気が気じゃないのよね。」
ヒュリッサとサーシャが話し合う間に別の店員が口を挟む。
「【黒曜《・》華金鳳花】ですよね。近頃巷の冒険者界隈では噂になっていますよ。何でもある実力派の中位冒険者が指導模擬戦とはいえコテンパンにのされてからミリーティアちゃんの容姿や立ち振舞いから付いた異名らしいです。それからというもの、毎日の様にミリーティアちゃん目当てで勧誘に来る冒険団が後を絶たないらしいですよ。」
「そうなのね、なら想い人もそこに居るのかしらね。」
サーシャがそう言うとヒュリッサは驚き自分の娘が癖の強い冒険者相手に手籠めにされぬかと心配しかない様子であるが、サーシャは言い切る。
「面倒な貴族相手にあれだけ堂々と頼もしくあるのですよ。心配ないわ。」
「そうですよ、奥様。それに、コテンパンにした相手は名の通った冒険者らしいですから、おいそれと下手打てないと思いますよ。そんな事したら永遠に自団に引き込めない上に最悪冒険者協会が黙っちゃいないでしょうし。既にその協会もミリーティアちゃんにはお熱らしいですから、味方は心強くも多いですからね。」
――【黒曜《・》華金鳳花】とは誰が言い出したか知らないが、ミリーティアの黒い瞳は一度集中すると魔素を滾らせ黒曜石を割った時の虹色に変化する様子に似ている特殊な瞳の持ち主なのだが、それがとても美しく輝く。そこに冒険者の資質や素質が花開したのも相まりその異名はついた。まさに異例。異名はこの世界において多大な戦果を上げた後に付けられる物だが……冒険業の卵である彼女の行く先に誰もが幸運を密かに祈る――
ここまで読んで頂きありがとうございました♪
極力サボらず毎日マイペースで少しずつ書き出してますが
一身上の都合により不定期更新となります。
また次話読んで下されば嬉しいです♪
書き溜め… …_φ(・_・




